女傑揃ってるやね
無力化したカンツァレラ一家をそれぞれの服で縛っている間、メイドさん達は腰を抜かすか脅えるかで俺達の方には近づきもせんかったわ。
まぁ、その方が色々とやり易いから構わんのだけども。
問題はやらかしたコイツ等をどうするかって事。今まで通りに過ごさせるってぇ訳にも行かんが、俺達が捕えてって王都まで護送ってのも面倒臭い。
出来ればこの領地に縛り付けたままでおいて、後で沙汰だけ言い渡せればベストなんだがね。
そんな事を考えてたら、食堂の扉がバンッ!! と開く。
「ご無事ですか! ヘンリエッタ様ぁ!!!!」
「あら、マール、無事だったのね。良かったわ」
まぁ、一家を捕縛したら向かう心算では居たんだが、来てくれたのなら手間が省けるやね。てか実際、無事で良かった。
「いえ、向こうの騎士団長が、私達を捕らえに来た時は不覚を取りそうになったのですが、ジョアンナ女子が……」
「いえ、わたくしは大した事などなどしていません」
「え? ですがフライパンで……」
「いえ!! わたくしは大した事などなどしていませんのでっ!!!!」
マリエルの言葉に、後から静かに入って来たジョアンナさんがそう言った後、キッと、マリエルを睨んだ。
「あ、はい、何とか騎士団長を打ち負かしてきました」
いや、何が有ったんよ。フライパンって何の事さ。いや、何となく想像は付くんだが、え? もしかして、騎士団長を? 俺の中でジョアンナさん、非戦闘人枠だったんだが、もしかしてBlingしてBangしてBangしてBronしちゃった?
そう思って、彼女を見ると、口の前に人差し指を立てて、じっと俺の事を見て来た。察しても黙っててくれって事ね。
まぁ、俺の予想通りだとしたら、おおよそ淑女らしいってぇ行為じゃぁ無いしな。ジョアンナさんからして見れば、相当恥ずべき行為だったってぇ事だろうさ。
護身術的な何かをしたんだって事にしておこう。多分、恐らく、きっと、そう。
それは兎も角、騎士団も子爵に協力してるっってのがなんだかなぁ。
いや、騎士団の最終意思決定は領主様なんだから、可笑しくは無いんだが、他領の領主を捕まえるなんて事を了承してる辺りがなぁ。領主を諫めるとかせんかったんじゃろか? 道徳心とか正義感とかって何処にあるんだろう。
普通であれば、失敗すれば戦争だよ? チミィ。
まぁ、『勝てばよかろうなのだァァァァッ!!!!』ってぇ事なのかもしれんが。
まかり間違っても『早く戦争になぁれ』とか『ボク達が望んだ戦争だ』ってぇ方じゃ無い事を祈ろう。
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「まことに、申し訳ございませんでした」
捕まった後、冷静に成ってから、再びカンツァレラ子爵が深々と頭を下げた。
いやまぁ、ご当主は、失敗したと思った直後から謝罪一辺倒だったけど、後ろ手に縛られて胡座をかきながらにもかかわらず、あの時の五体投地礼なんかよりも、よっぽど、真摯さと誠意が伝わって来る謝罪だわ。
見れば、あたかも憑き物が落ちたかの様なスッキリした表情に成っている。
もしかしたら、アザゼルの権能にあてられてたんかね?




