謎は全て解けた!! 犯人はこの中に居ない!!
そもそも不自然だったんよね。この街に着いた直後だったってのに、俺達の泊まる宿を既に捕捉して居たり、同行している者の身分までもを把握して居たり。
その割には、俺達の事や家の領地に関しては分かっていない様な発言を繰り返す。
確かに、彼等はここの領主家だ。例えば最初から俺達が来る事を把握していて、それで網を張っていたってんのなら理解は出来る。
ただ、その割には、あまりに俺達の事を知らなさ過ぎるんよね。
そもそもか不自然過ぎなんだわ。この時点でも“何か有る”と確信するには十分だとは思うが、決定的だったのは第二夫人が食前酒以降、食事に手を付け無かった事。
今でこそ公爵家の第二夫人だけれども、元々は隣国の王女だったんだ。毒を含む薬物関係には敏感だし、そう言った事を仕出かす様な輩にも敏感だ。
だからこそ、あの公爵も、毒を呷らせる事が出来ずに、幽閉してたんたろうしな。
俺も料理に若干の苦味の様なものを感じてたし、王女二人も、自身の体調的に違和感を感じたのか、食べ控えてたし。
まぁ王族ってのは、多少の毒物なら平気な様に、耐性を付けてるらしいし、問題無い程度の摂取量なんだろう。多分。
それにもし、効果が見えたとしても、ヘンリエッタ王女が【毒治療】が使えるし、俺が【プラーナ】で対毒耐性を強化しても良かったしな。どうでも良いけど、キュアポイズンって、プリキュ(以下略)
俺? 俺に毒は効かないでいス。
恐らく、そもそも俺達に注目してたってぇ訳じゃなく、かなり突発的に、俺のってか、公爵夫人や王女様達の話を聞いて計画を立てた……もっと端的に言うのなら、唆されたんだろう。
唆した犯人については心当たりは無いけど、そんな事を企てる様な輩になら思い至る相手は居る。確定じゃ無いけど。
カンツァレラ子爵がどんなお薬を使ったのかは、俺だと良く分からんが、薬効卿辺りなら、どんな種類の薬か看破出来たんじゃねぇかね? とは言え、ここからヴィヴィアンに薬送っても、それを解析とかして貰ってる様な暇はないが。
ただ、毒殺するにはメリットも無いしリスクも高いから……酩酊状態して前後不覚にするか、もしかしたらだけど、媚薬の類だったのかもしれない。
それはそれで許されざる愚行だな。……てか、屋敷ごと潰しちまって良い様な気がしてきたわ。
第二夫人に看破されたカンツァレラ子爵は、暫く顔を引きつらせて居たが、ツンツンと、夫人に袖を引かれハッとした表情に成る。
そして、何か覚悟を決めたかの様に表情を引き締めた。
来るか? 本人がか、それとも屋敷の人間を呼ぶのか。確実なのは騎士か兵士を呼ぶ事だろうけれど……
「申し訳!! 御座いませんでしたぁ!!!!」
ビタンッ!! て音が聞こえて来る程の勢いでの五体投地礼。両手も挙げての謝罪で、受け身すら取れない状態。
こっちも唖然としてるけど、カンツァレラ子爵家の面々も、鳩が豆鉄砲喰らったかの様な表情。
いや、弱過ぎだろう! 意思も態度も!!
これ、あれか? 失敗するとか考えてなかったってぇ感じのあれか!?
「全ては執事が!! 執事のアザゼルが計画した事なのです!!」
うん、謎は全て解けた。




