ぶちまける
「ま、魔法と言うのは、才能がっ、た、大切なんです! そのっ、それは、生まれつきの物で、さ、才能が無ければっ、どんなに努力したとしても、それは無駄で……ツマリ、何の事かと言えば、生まれつきの、さ、才能がっ、魔法には必要だって事で、その点で言えば、ぼ、僕は、そのっ、家庭教師にも褒められる位、才能が、あっ、有って、だ、だから……」
「そうなのですね」
「優秀なんですね」
うん、トール知ってるぅ!! 魔法って、才能必要だよねっ! 畜生……
……末っ子君との会話は、何だろう? この、空回り具合。まぁ、相変わらず、俺の方なんざチラリとも見ちゃいないがね。
俺に対する態度にも思う所が有るようで、ネフェル王女もヘンリエッタ王女も、最早、当たり障りの無い受け答えしてるだけだし。食事にもあまり手を付けなく成ってるし。
それでも末っ子君、ひとしきり話した事に、反応が有った事で満足したのか、満足気にフンスと鼻息を荒くしてる。
第二夫人とカンツァレラ子爵夫妻との会話は、まぁ、子息達とのソレよりは会話に成ってるけど、領地自慢と、それに相槌うってるだけってぇ感じ。
第二夫人が、夫妻の話題を掘り下げる様に質問をするから、成立してるってぇ感じか。
てか、もう少し、第二夫人から出された王都の話題にも食い付こうぜ、と。
と言うか、第二夫人が最初の食前酒以外に手を付けてない事に、気が付かんもんなんかね?
ホストとして、その辺りにも気を配らんといかんと思うんだが……まぁ第二夫人が、上手く誤魔化してるってぇ感じなんだろうけれど。
流石に晩餐に招待されといて、出された食事に全く手を付けないのも、マナー的にアレなんだろうからなぁ。
食事は、まぁ普通。話を聞いてる限り、この領地の産業は綿花と縫製らしいからなぁ。まぁ、特別農産に力を入れてるってぇ訳じゃ無いっぽいし。とびきり野菜が旨いとかって事も無く。ただまぁ、これに関してはなぁなぁ……
てか、奇遇だよね、家の領地もウールと織物をやってるんだ。ゴールデンウールってぇブランドに成ってるんだわ。
縫製やってるってんなら、生地関係での取引の話題とか出るかなぁとか、チラッと思ったんだけど、別にそんな事も無く。ただただ、自分所の自慢話に終始してる……そう言や、社交性の有るであろう長男が、新年祭の為に王都の方に行ってるんだっけか。
何だろう、酷く納得しちまったわ。
てか、何だ? この一家の落ち着きの無さ具合。
人見知りだからとか、高位貴族やら王族を相手にしてるから緊張してるってぇ感じでもなく、何と言うか、ソワソワと浮き足立ってる感じ。
あれだ。何かを待っていると言うか、タイミングをを見計らってると言うか。う~ん。俺もそろそろアップしておこうかね。
「そ、それで、どうでしょうか?」
「?」
唐突なカンツァレラ子爵の話題転換に、第二夫人が首を傾げる。いやまぁ、分かってはいるんだが、だとしても、こらえ性の無ぇ事で。
夫妻が顔を寄せ合ってごにょごにょと言い合いをするが、まぁ、答えなんざ出ないさね。
そんな夫妻の様子を見ていた第二夫人が、大きく溜め息を吐き、『もしかして』と、口を開いた。
「料理の中に入っていた、お薬の効果の話でしょうか?」
「!!」
第二夫人の言葉に、目を見張るカンツァレラ一家。
……本当に、気付かれないと思ってたんかね?




