そんな訳で新年式に参加する為に王都へGo
「こうやって、普通に王都を目指すのなんざ、久しぶりやね」
「普つ、う?」
「普通……普通って一般的なと言う事でしょうか? でも、自分達の“日常的な”と言う意味も普通ですから……」
首を傾げんでくれんかね? イブさんや。ティネッツエちゃんも何か普通の定義について考え込んでるし……少なくとも今日は、多脚で森を走破も、フロートで水上を走りも、ジェットで宙を飛んでも居ないじゃんか。
いや、あからさま巨大な箱馬車っぽい決して箱馬車では無いナニカで、引いてるのも御者をしてるのもゴーレム的ナニカでは有るがさ。
「そうねぇ、あまり一般的ではないわね。こんなに……馬車の中で寛げるなんて。あ、ワンドローして【兵隊アリの蟻仗兵】を攻撃表示で、ジョアンナの【ゴブリンデザイア】に攻撃を」
「そうですね、車内がここまで安定してる……馬車は早々お目に掛れません。このタイミングでマジックを使います【魔力障壁】で、ダメージ3000軽減です」
「……ターンエンドです」
第二夫人と侍女さんがTCGで遊びながら、そんな風にコロコロと笑って話す。馬車の所だけちょっと疑問形だけんども。
まぁ、サスペンションに関してはドワーフ共と散々頭捻ったからなぁ。タイヤにしたって、態々、ゴムの木っぽいもの探して来て、ヴィヴィアンが。
そんな風に考えてると、イブがフルフルと首を振る。
「大、行列、だ、よ?」
「あ、引っ掛かったのそっち?」
そう言えば、イブ達と旅してる時って、キャンピングカーが一台ってのが基本だったか。精々牽引する事が有る位?
俺達が旅する時って、基本、護衛も侍女も付けないから、今回見たく、長々と馬車が連なるってぇ事なんざ無いからなぁ。いや、イブとかファティマが護衛で侍女でもあるとも言えるけど、俺の中では家族枠なんよね。
それは兎も角、今回は俺達の何時ものメンバーと第二夫人、それに王女二人も一緒に王都へと向かうから、結構な大所帯に成っちまってるんよね。
まぁ、乗用の馬車4台に荷物用の馬車二台。それに護衛騎士と兵士を合わせて30人。うん。かなりの大所帯だよな。
乗用の馬車は、俺達のソレと、第二夫人用のソレ。それと王女達に各一台ずつな訳だが、第二夫人、俺んとこに同乗しちまってるから、第二夫人用の馬車は連れて来たメイドさん達専用に成っちまってるがね。
各馬車は、家の領地で作った特別製。オイルダンパーとバネを併用したサスペンションにゴムタイヤを装着済みだし、その上、王都までの街道も整備してあるから、至極快適な旅に成っている訳だ。
ここまで大所帯だと、野盗やら山賊も、大規模な輩でないと襲って来るような馬鹿な事はしないし、魔物が一番多いのって家の領地の辺りだし、魔物のレベルも段違いで高いのも、やっぱり家の領地辺りな訳だから、そこで毎日の任務をこなしてる家の騎士団も兵士も、大型の魔物も殆ど出ない王都付近で襲って来る小物なんざ、相手に成らんのよね。
そんな訳で、王都までの旅路は今の所、何の問題も無く進んでる訳だ。
……何かフラグっぽいな? いや、そんな心算は無いんだけども。




