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古代文明に浪漫の嵐

『ここを封鎖して関わるな』


 ある意味、予想できた回答。お優しいこのガーディアンなら、自身を犠牲にすることを厭わんだろうさね。


 だがね、面白くないだろう。それじゃあ。


「お前自身は、その宝物庫の中身についてどう思ってるんだ?」

『なに?』


 厭わしいとか、煩わしいとか、その暴走兵器のせいで数百年間身動きが取れないんだ。思う所も有るだろうさね。

 まあ、そんな感情は持ってないだろうがね。このガーディアン(コイツ)は。


『どうもこうも無い。我はただ宝物庫(ここ)を守る為に生み出されたのだ。それ以外の感情など……』

「そう言う優等生な返事は良いから、第一、守るって、何から何をだ? 今、お前が守るべき者が、ここに居るのか?」

『そ、それは……』


 答えは『否』だ。もしかしたら、子孫くらいは居るかも知れないが、確認のしようがない。

 つまり、コイツが守護するべき相手なんざ、すでに過去のものなんだ。

 その上で“守る”なんて相手が居るとすれば……


「闘ったお前なら分かるかもしれんが、俺はまだ本気で闘って無い」

『……』

「それに、俺の切り札は、()()()()()()

『!!』


 ダメ押しとばかりに、俺はそう言った。

 ガーディアンの目が、これでもかと見開かれる。

 そして顔を伏せたかと思うと、ポツリと零した。


『……もう、安らかに眠らせてやりたい。これ以上、暴走する自分自身の為に、嘆き苦しまないで欲しい』

「分かった、()()()


 ******


 今度はガーディアンも避難させてのテイク3。


 リティシアはすんなり納得してくれた。まぁ、相手は制御できない兵器だ。近場に地雷が埋まってる様なもんだからな。


 「貴族として大きな力には興味が有りますが、領民の安全と秤にかける訳には行きませんから」そう言って、全てを俺に任せてくれた。良い女だぁね。


 俺としては研究者連中がもう少し文句を言って来るとか思ったんだが、『青い顔して頷くだけマシーン』に成って居たんで、話は早かったわ。


『それでは、良いか?』

「バッチコーイ!」


 本当は、ファティマ達を待ったほうが良いのは分かるんだが、だとしても、おそらくは後3週間は掛かるだろう彼女達を待って、と言う訳にもいかないだろうさね。

 何やらリティシアの方も、あまり時間をかけたくは無い様だし、持っている手札の中で何とかするしかないよなぁ。


 戦いやら狩りやらが、常に万全の状態で、なんて、有りえないんだしな。


『では、開放する!!』


 ガーディアンの言葉で、宝物庫が上方に()()()()

 そして残ったのは、どこかで見た様な、空間に穿たれた()

 成程、こう言う事か。

 そして聞こえてきた()に、俺は自分の耳を疑った。


「いや、そんな、まさか……」


 ぬうっと、穴から這い出してきた物に、俺は言葉を失った。


 ガショウン!! ガショウン!!


 音にすればそんな感じだろうか? “宝物庫の扉”の前で、それが停止する。


 多脚多砲塔戦車来たあああぁぁぁぁぁぁ!!!!


 何という圧倒的浪漫の塊!!


 戦車の前面にある銃塔がこちらを向き、一瞬の閃光!!

 咄嗟に腕をクロスさせ、それをガードしたが、実際、それは悪手だった。

 左腕を貫通し、右腕にも半ば穴が穿たれる。

 マジか!! レーザーだと!!


 プラーナを活性化させ、焼き潰された傷口がそのまま固定化されない様に即座に塞ぐ。

 そして転がる様に離脱。

 起き上がり、戦車を中心に、円を描くように走ると、その直後、次々に俺の後方に着弾した。

 え? あの一瞬で俺との正確な距離を見切ったのか!?


 だがな、俺だって、早々には(あた)らんよ!! 流石に音速とまでは行かないが、それなりのスピードを出す事は出来るんだ。(まと)を絞らせない様にステップを踏みながらも走りつつ次第に近づいて行く。


「な!!」


 思わず声が零れた。戦車の多砲塔が回転し、砲弾を連射する。

 狙い撃ちだと当たらないと見るや、砲弾をバラ撒くだとっ!! いつからこの世界は弾幕シューティングになった!!!!

 てか、リティシア達!! 避難じゃなく撤退させとくべきだった!!


 慌てて横目で見ると、ガーディアンが結界を多重展開していた。それも受け止める形ではなく受け流す形で。

 それでも、かなり厳しいのか、厳つい顔をさらに険しくして、だ。

 ナイス!! お前のそう言う所、大好きだ!!!!


 だがこっちも、そんなに余裕がある訳じゃない。体内循環を加速させ、エクステンドも発動する。それも、攻撃の為じゃなく、さらに防御を固める為に、だ。

 装甲の上に外装を纏い、俺は戦車に特攻を仕掛ける。正直、この弾幕を避け続けるってのは無理な話だ。

 向こうに“扉”の技術があるってんなら、弾切れを狙うなんてのも無意味だろう。実質無限装填だろうからな! 被弾覚悟で懐に飛び込まなきゃ攻撃ができん!!

 ここに来て、遠距離攻撃手段が無いってのが悔やまれる。

 ミカやバラキ、ウリ達のフォローが無いのも、だ。


 どれだけ、俺があいつらを頼りにしていたのかをまざまざと見せつけられた気分だわ。


 直撃する弾だけを避け、掠る程度の物は強引に突っ切る。威力で吹き飛ばされそうになるが、それは空を蹴り、相殺する。


「こん!!! ちくしょおおおおおおおお!!!!」


 瞬間、魔力庫を解放し、疑似的なプラーナ増幅でさらに加速。

 目の前に来た砲弾を叩き落とし、砲塔の仰角の内側へと潜り込む。


 戦車がその多脚を振り回し、俺を踏みつぶそうと動くが、流石に砲弾程のスピードは無い。それにな、足元に潜り込むのは初めてじゃ無いんだよ!!


 防御にまわしていた外装を右手に集める。開いているスリットから、更にプラーナが放出され、ギュオンギュオンと外装が音を立てて回転する。


「喰らっとけやあぁ!!!!」


 踏み付けようとした脚をカウンター気味に吹き飛ばす。そのまま回転して、その隣の脚も削り潰した。

 バランスを崩し、つんのめる様にして地に体を擦り付ける戦車。そして()()は俺の距離で、戦車にとっては絶対の死角となる超近距離。

 銃塔の死角にして砲塔がどれ程回転しようが、弾を当てられない場所。


 これで、チェックメイト、だ。


 俺は、魔力外装をさらに加速させる。拳を構え、足元からの威力を連動させ、伝える。拳を振り上げ……


「!!」


 放たれた砲弾を叩き落とす。と、転がる様に()()()()()砲弾を避ける。


 そして、思わず呟いた。


「マジか……」


 宝物庫から()()()()()()()多脚多砲塔戦車を唖然として見ながら。

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