ヤツが来る!!
大盛況だった大会とプレオープンから数日が経った。大盛況、だったよ? プレオープンの方も。やっぱり、昼と夜では足の伸びる場所が違うと言うか……
この街に来たばかりの商人やら旅人だと、夜に店が開いてるってぇ状況が、先ず珍しいらしい。まぁ、王都位に成るなら兎も角、普通の領地の街なんざ、日が暮れて1、2時間ほどで店じまいってぇ所の方が多いしな。
何せ、家の街だと、魔力が各建物に通っていて、それをエネルギー源として、明かりと熱源は確保できるからなぁ。他の街に比べれば、夜更かしは多いだろうさね。
もっとも、色町はオールナイトの方が多いけど。って言うか真夜中だと帰るに帰れないから、結果朝までって事に成るって言うか。やっぱり、街灯とか必要かなぁ? 現状の生活サイクルだと必要ない気もするけど……どうだろう?
まぁ、それは今は置いておいて良いか。あれだね、その内、あの歓楽街辺りは不夜城的な名前が付けられるかもしれんよね。それが良い事なのか悪い事なのかはさておいて。
「ワシの居らぬ間に、随分と楽しそうな事をして居った様であるのじゃ」
「だから、正式に訪問しろと何度も言ってるだろうがよ魔人族国女王」
「エリス、様、お茶」
「うぬ、励め、なのじゃ」
イブがお茶を出すと、それを静かに受け取る。ちゃんと礼儀とかやればできるのに、何で俺のとこ来る時は、それらを投げ出すのか。
まぁ~た飛んできやがったんよ、この女王様はさぁ。確かに、家の街の兵士だと、顔知ってる奴も多いから顔パスに成るのも分からんでもないが、一応なりとも隣国なんだがね?
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まぁ、コレが真昼間だったからってのも有るだろう。夜だったら、問答無用で矢か魔法を打ち掛けて居たかもしれんわ。
もっとも、エリスもその辺りの事を考慮して、この時間なんだろうけど。
「って、言うか、別にお前ん所の領地ってぇ訳じゃぁ無いんだから、居ようが居まいが、こっちはやれる事をやってるんだよ」
「つれないのじゃ! オヌシ様とワシの仲じゃと言うのになのじゃ」
「隣国の女王と辺境伯ってぇだけだろうがよ。ちゃんと手紙でのやり取りはしてるんだから、それで良いやん!!」
「ぬう、何度も結婚を打診しとると言うのに。何の為の名誉伯爵か!!」
「結婚云々に関しちゃ断っただろうがよ。俺は俺で、やる事もやりたい事もあるんだよ!!」
てか、コイツ、未だに婚約者候補すら居ないってどうなの? 女王様よ? 王配とか必要じゃ無いんか? 出会った頃なら兎も角、今は立派な適齢期じゃんね?
「フッ、ソレに関しては、ちゃんと事は進めてるのじゃ!!」
「はい?」
何を進めてるって? 何かろくでもない事を企んでる様にしか思えんのだが。てか、未だに俺との結婚について諦めてないってのがさ。
立場的に……いや、その為の名誉伯爵だったか。それでも。俺としちゃ、この領地に愛着も湧いて来てるし、ある程度責任を果たせば自由にできる立場も気に入ってるから、魔人族国に行きたいとも思えんのよね。まして王配。これ、何処か行く度に護衛とか引き連れんといかん立場じゃんか。面倒臭過ぎて、成りたいとか思わん。
いや、まぁ、エリスはか~な~り、自由に動いてるがさ。でも多分これ、後で聖弓からの説教コースだよね?




