先ずは一当て
色々と思案していて遅くなりました。
申し訳無い。
アレゴロウが、動く。
フェイントにすら引っかからず、“待ち”に徹してるスターリンに埒が明かないと思ったんだろう。
スイッチしてのサウスポーからの右拳でのジャブ。掴み取る事が困難だと思ったのだろう、それをスターリンが、手首のスナップで打ち払いする。が、アレゴロウの戻しが早い。そのままのサウスポーでジャブをばら撒く。
それもパリィしようとするスターリン。だが、それは罠だ。わざとクリーンヒットを外したジャブによって、打ち払いの軌道が大振りになる。その隙に、再びアレゴロウがスイッチ。
今度は左ジャブの連打。右からの軌道に目が慣れた所からの正反対の軌道で、ジャブを喰らうスターリン。
しかし、以前のソレ以上に速度重視のジャブは、軽い。ダメージは、ほぼ無きに等しいだろう。
だが、それで間合いを掴んだのか、アレゴロウが半歩バックステップしてからの踏み込んでのストレートを放つ。しかし、それはスターリンがスウェイバックで避けた。だが、アレゴロウはそのまま踏み込んでのスイッチで、今度は左ストレート。
スウェイで体が伸び切って居た所での追撃に、スターリンがたたらを踏む。よく、スリップダウンをしなかったな。
スターリンの反応速度に少し感心する。
追撃のアレゴロウのワン・ツー。スターリンに掻い潜られた所で、腕が伸び切る前にバックステップで避難。
恐らくは、腕を取られる事を嫌ったのだろう。間合いを開け、お互いに一呼吸。
会場がワッと鳴った。一連の攻防のレベルの高さを感じ取ったんだろう。
そんなざわめきを聞いてか聞かずか、お互いに前のめりにダッシュ。
さっきは“待ち”に徹したスターリンも、アレゴロウのヒットアンドアウェイの速度に、防御一辺倒では捉える事が出来ないと思ったのだろう。
自から動く事での被弾率の上昇のリスクよりも、積極的に捉えられる事の実利を取った様だな。
敢えて踏み込み、間合いを潰せば、被弾したとしても、ダメージ的には低くは成る。だが、それが分かって居たとしても、踏み込めるかどうかは本人の覚悟次第だ。スターリンは、それでも踏み込んだ。
やや低姿勢で、的を絞らせない様に頭を左右に振る。
アレゴロウの方も、自身の得意距離に成る様に、ステップを使い小まかく動く。
ジャブを散打し、しかし腕を取られない様、深追いはしない。
スターリンも、緩急を付けつつ、どうにか懐に潜り込もうとフットワークを使う。
先程とは違い、分かり易く動きを見せる両選手に、会場の声も、一際大きく響いた。




