祭りが始まる
プレ闘技大会に成る、異種格闘技戦の会場でもある闘技場は、朝から結構な賑わいに成ったんよね。
まぁ、エクスシーアが商会通じて宣伝とかしてたってのも有るし、家の街の歓楽街のプレオープンだって言うのも、事前に拡散してたからなぁ。主に商人と冒険者から。
異種格闘戦は兎も角、歓楽街のプレオープンは、もう少し小規模でやる心算では居たんよね。まだお店も揃い切って無かったし。
とは言え、闘技場前にも臨時で屋台とか出てるし、状況を見た旅商人とかも突発的な露店とか始めてるし……
「露店をするなら申請してくださいねぇ。申請受付はこちらですよぉ」
マァム、受付申請て。って、事はエクスシーア、この状況読んでたってぇ事か!? いや、ここの仕切りは商業ギルドとかに任せてたけどさぁ……
……まぁ、盛況なのは良い事だって事にしよう。そうしよう。うん。
そもそもなぁ。娯楽って意味じゃ、この世界、その種類がそれ程多くも無いから、こう言った催しは、人が集まり易いんだろう。まぁ、今は農業とかが、あまり忙しい時期じゃ無いからってのも有るんだろうけどもさ。
それは兎も角、メインイベントに成るファルトヘルト王国’Sによる異種格闘技戦の前に行う試合が5試合。まぁ何時ものプロレス戦な訳だが、これ、刃を潰した武器での模擬戦とか有った方が良かったんじゃね? とか思ったんよ。
ただ、エクスシーアからは、『他との差別化が図れんのでな』ってな事を言われたんで、そう言うモノっぽいんだわ。
まぁ、商売に関しては、俺よりもよっぽどエクスシーアの方が熟知してるだろうし、素人はあまり口出ししない様にしておきますさね。
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試合そのものは、エンターテイメントを意識しているだけあって結構な盛り上がりを見せている。そもそもプロレス自体が割と“見て理解できる”技が多いしな。それに相手の両肩をマットに付けてスリーカウントでの決着ってのも分かり易いからなぁ。
今まで興行を行ってたってぇ成果もあるのか、各選手に固有のファンとかも居るっぽいわ。
見ていると傾向的に誓狼騎士団の方に空中殺法使いが多くて、ファルトヘルト兵士の方にリフト系の技を使う選手が多いって感じか。これ、単純にいつも試合してる場所的な違いからかもしれないな。
試合自体は、誓狼騎士団とファルトヘルト兵士達との一進一退って感じで進んで。5試合目で両者乱入で没収試合。結果、引き分けってぇ感じ。流石に没収試合にはブーイングが飛んだけど、それまでの試合に関しては観客も満足してるっぽかった。
って訳で、最終試合で、二人がマットの中央で睨み合ってる。
アレゴロウがストライカー系でスターリンがグラップル系で、相性的にはストライカーの方がやや有利か?
ただ、一度でも組み付かれてしまえばグラップルの方が厄介なのは確かなんよね。
つまりはアレゴロウがどれだけ自分の間合いを保てるか、スターリンが組み付けるかが勝敗の鍵って事だとは思うんだが、ただ、アレゴロウの方は純粋なストライカーって訳でも無いだろうなぁ。何せ、『馬から降りた後の組み討ち』だとか言ってたから、“投げ技”や“寝技”を習得してるってぇ可能性も高いからな。
とは言え、スターリンの方も、日々の鍛錬をキッチリこなしてるしアルフレドと言うライバルの存在も有ってメキメキと熟練度を上げていたからな。
何はともあれ、もうすぐ、運命のゴングは鳴る。
結果が出るのも、後少しで、だ。




