歓楽街始動に向けて
区画の整理自体は出来て居ても、そこに入っている店の全ての準備が完了したと言う訳じゃぁ無い。引っ越しやら取り寄せるもの如何によっては、数か月の開きが出来る。
これは、この世界の交通事情を顧みればどうしようもない事なんだがね。道路整備がそれぞれの領主の仕事である限り、その領主が何に力を入れているかによって、その辺の事情は変わっちまうものだし。
どれ程、俺が流通とインフラの整備に力を入れたとしても、その範囲は結局自分の手の届く反に限られる。近隣の、俺と“同盟”を結んでいる領主の所は兎も角、それ以外の領主にも便宜を払ってやる必要性なんて感じんし、『どうか交通網を整備させて下さい』なんてお願いするのなんざ、見下される要因にしかならない。
この辺面倒臭いが、一度下に見た相手を、どれだけ侮ろうが踏みにじろうが構わないとかって勘違いをする輩ってのはやっぱり居るんよね。そうなるとつけあがるし、些細な事で逆恨みしたりする。本当に、面倒臭い。
なんで、その辺りの輩には態々絡まんのが吉なんよ。確かに流通ってぇ意味じゃ、もどかしい部分はあるが、こっちが被害を被るのを分かってて、手は出せませんて。
それはそれとして、その区画整理も、取り敢えず箱と言うか、何処にそんな店を配置するかってぇ辺りも決まり、公共事業としての建物の建築も大体終わってる。
いや、本当に何度見てもこの領地のドワーフ共の建築作業って、1/1レ〇ブロックにしか見えんわ。これが、他の領地だとまた普通に柱建てて壁造ってぇとかやってる訳だし、家の領地のドワーフ共が変態だってぇだけの話なんだろうがさ。
それでも、下手すりゃ数日で建物が立つさまを見てると、文句も言えんのよね。こう見えて、建物の耐久度的にも余所の建築物より上だと言うのがもはや……
これも当然と言って良いのかは分からんけど、建物を建てる事自体は冒険者がやってる辺りもさ、確かに監督はドワーフがやってるけど、いや、素人でも手順踏めば出来るって位にシステム化した手腕が凄いんだろうけど、何と言うか、言葉が無い。
『【嘆息】ソレの基礎的な部分をドワーフに吹き込んだのはマイマスターですが?』
いや、だとしても、こんな魔進化するとか思わんじゃん。
それは兎も角、個々人での理由がある店は有れども殆どの店の準備も大体整ったんで、一度どんな風に稼働する感じに成るのかってぇ事をテストする為に、歓楽街のプレオープンが決まった。
これで状況を見て、さらにどうするかってぇ改良をする為の物な訳だが、この時に闘技場も動かしてみる事に成る。
うん、この時に行う訳だ。あの二人の異種格闘技試合を。
二人共々、やる気はあるみたいだから、後は世紀の名勝負になるのか、それとも逆か。一応にもお互い鍛錬するための自由は与えている。
もっとも、アレゴロウの方は“鍛錬の”だけだが。それでも食事に関しては、不足なく取れるように指示はしているがね。
この闘技大会について、エクスシーアも張り切って宣伝をしているらしいが……
さて、どう成るかねぇ。




