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ボトムライフ100

 薙ぎ払うように振られた腕に、俺は少し顔を顰めた。

 初撃はまぁ、俺を見下してたって事で良いが、ここに来て、宝物庫の武器を使わないってのは、どう言う了見なんだかね。

 せっかく半人半蛇の姿なんだから、武器を使わないってのは可笑しかないか?


 そう思って、ガーディアンの様子を見る。


 …………

 ………

 ……


 あ!!


 宝物庫に巻き付けるほどの巨体。コイツもしかして、普通の人間用の武器、装備できないんじゃ?


 あまりの衝撃に、ウッカリ、パンチをパンチで返しちまったわ!! ちょうど中指が潰される形となっちまって、苦悶の声を上げるガーディアン。正直スマン。


 いやいや、きっと、中に収納されてる武器がこう、室内だと適さない係の兵器で、だから使わないだけだって!!


 でなければ……ねぇ……


 いくら何でも間抜けすぎるだろう。宝物庫内の武器を運用する前提のガーディアンが武器を使えないって。

 いや、巨大ってだけで十分強くはあるよ? あるんだけどさ、こう、武器的ロマンを期待してた身としてはさ……

 いや、何か聖武器シリーズをしまってた宝物庫とは別のコンセプトのガーディアンなのかもしれないしな。


 うん、例えば、ここの研究所の研究員の指針として、仕舞い込んだ武器は希少な物質で作られていて、早々使って良いものじゃなかったりとかさ。


 いや、それはそれで兵器としてどうなんだ?

 あー、もう良いか、ちょっとやる気が削がれたわ。


 殴りかかって来たガーディアンの拳をいなし、その腕を捻りながら変形背負い投げを決める。肩が外れたらしく。悲鳴が響き渡った。


 斬られる、殴られる、叩き付けられるって痛みは受ける事は有っても、関節を外されるってぇ痛みは初めてか?

 思わず肩を押さえて蹲るガーディアンの顔を蹴り飛ばし、強引に上を向かせる。


「さて、ちったあ言葉を交わそうってぇ気になったか?」

『グッ、侵略者め』


 ああ、成程、そっちの認識だとそうなるんか。


「残念だが、侵略者って訳じゃねえんだわ、そもそもこの研究所がどこの所属かって事も分からんのでな」

『なん……だとっ』

「多分、オマエ等が作られた時代から数百年は経ってるんだ。そんだけあれば、時代なんざ、いくらでも変わる」

『……』


 恐らくコイツも、それだけの時間が経ってるってぇ事は分かってるんだ。だが『命令(オーダー)』があるんで、それを優先させているんだろう。

 ファティマ達もそうだったが、作られたという自意識があるんで、その立場を守るって事に固執するきらいがあるんだよなぁ。


「本来なら、ここの通行許可を受けれりゃ良いんだがな、もはや、その判断を行える者は存在しないんだよ」

『!!』

「なぁ、使われない道具を守ってどうする? この宝物庫の中にある品々は使われる為に生まれて来た筈だ」


 ガーディアンの表情が険しくなる。ここを守るって事が存在意義(レゾンデートル)のガーディアンに、それを捨てろと言ってる訳だからな。

 それでも、宝物庫の中に眠っている兵器達……ってぇ言い方も可笑しいんだが、どうも、古代文明、品物側に立った様な考え方するんだよな。擬人化させてると言うか。まぁ、その兵器の気持ちを慮って、葛藤してるっぽいな。


「お前が、ここを守るって命令をされてるのは理解している。だが、それと同じくらいそこに眠っている兵器を守るって命令もされてるはずだ。だから……」

『違う!!』

「何?」


 確かに、ファティマ達が居たって言う宝物庫のガーディアンに比べると、コンセプト自体が随分違うなとは思っては居たんじゃが、やっぱり、場所場所でガーディアンの目的は違うのか?


「なら、お前は、どう言った理由でここに居るんだ?」

『封印だ……』


 えー何それ、ちょっと前にあった封印された邪竜と被ってるんですけどー。


「……何故と聞いても良いか?」

『ここに()()のは暴走寸前で封印せざるを得なかった兵器だ』


 そう言えば、侵略者とか言ってたな。つまりは侵略戦争かなんか有って、その中で様々な兵器を作ったんだけど、その中の一つが暴走しかけて、封印せざるを得なかったと。

 で、このガーディアンは、その封印を守る為にここに居たって事か……


 結果論だが、やっぱり壊さんで良かったじゃんね。そうすると、このガーディアンが兵器の運用をしなかった理由も納得できる。

 要は、使()()()()()()()()()()ってぇことだな。

 リティシアの話じゃ、戦ったが撤退するしかなかったって事だが、これは、見逃したって事だろうな。


 俺に対し、『侵略者』ってぇ言葉を使ってたんだ。敵対してる相手だと思ったって事だよな? にも拘らず、()()()()()()()ってねぇ……


 随分とお優しい事だな。


 俺は思わずニヤリと笑う。


「成程、で、お前としてはどうしたい?」

『な……に?』


 まさか、俺がそんな事を言うとは思わなかったのか、ガーディアンは俺を凝視する。

 多分リティシアは、事情を言えば分かってくれるだろう。研究者の方がどう思うか分からんが。まぁ、文句がある様ならOHANASHIかねぇ?

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