新屋敷
やがて、王宮より連絡があり、屋敷の準備ができたとの通知があった。
俺は早速張白亮を誘ってその屋敷を見に行った。
今度は学園から見て反対側、どちらかと言えばアカネの家に近い立地だ。以前とりつぶしになった貴族の屋敷らしい。
屋敷は広く、一人では切り盛りしていくのは困難なように見えたが、王宮から使用人も何人か派遣してくれるらしい。それなら安心だな。
今後は張白亮やハリーらと一緒に住むことになる。新しい生活の始まりだな。念のため、精神結界なんかも張っておかなくてはならないな。そのあたりは張白亮にまかせることにした。
後日、俺はアイズの助けを借りて寮から引っ越しをした。引っ越しと言っても俺の荷物は微々たるものなのであっさりしたものだ。
俺達は引っ越しをおえると新しい家に落ち着き、生活を始めた。料理などは王宮から派遣された使用人が作ってくれる。いきなり貴族になった気分だ。
ハリーも準備ができ次第、ライン・ビーチからこちらに越してくることになっている。これで一応の準備は整った。
俺は学園に登校すると早速新しい家の住み心地を聞かれた。
「よう、どーだ?ユージ。伯爵にふさわしい家に住んだ気分は?」
ダースがにやにやしながら聞いてきた。
「ああ、まだしっくりこないな。元の世界でもあんなに広い家に住んだことはないからな。」
「前の世界ではお屋敷に住む方はいらっしゃいませんでしたの?」
レインが聞いてきた。
「どうなんだろう?いたとは思うが、レインの家のように大金持ちか政治家みたいな人じゃないかな?俺の周りにはいなかったからよくわからない。」
「私は羨ましいぞ。うちは狭い家に道場があって、残りの居住スペースに父上、母上と押し込められて暮らしているからな。」
フレンダがそう言って苦笑する。
「ああ、俺の元の世界の家もそんなもんだ。広い屋敷に住む方が珍しい。」
「でもいきなりそんなお屋敷に住んじゃったらお掃除とか大変じゃないの?」
大貴族のアイリスが聞いてきた。
「ああ、そのあたりは王宮から派遣されてきた使用人がやってくれることになっている。まぁ気楽なもんさ。」
「そうなんだね。なら良かったね?あ、そうだ!引っ越しパーティーとかはやるの?」
「引っ越しパーティー?」
「うん。大体、貴族階級や大商人が引っ越しした時にはやるんだけど、やらないの?」
引っ越しパーティーか・・考えてもなかったなぁ・・
「それも面白いかもしれないな。」
「うん!関係者を集めてやったら盛り上がるよきっと。」
そうだな・・ライン・ビーチからクリスも呼び寄せて・・あとは王宮にも連絡したほうがいいか?学校関係者もいるしなぁ・・あとはライム道場とか・・結構な数になりそうだな。
「そうだな。ちょっと考えてみる。」
俺達はそこでマーティン先生が来たので雑談を終えた。
・・・
ランチ時。
「あら、それいい考えじゃない。」
アカネが言った。
「貴族は何かイベントがあるたびに交流を深めるためもあってパーティーを開くのよ。ユージももう立派な貴族なんだからそれくらいやってもいいんじゃない?」
「そんなもんか。」
「ええ。今後の政治的なやりとりにも便利だしね。」
「そうか・・」
じゃあやってみるか。
「ああ、そうそうウルヴァンは来ているか?」
「?来てるわよ。何か用なの?」
「ちょっと話があるんだ。」
・・・
俺は休み時間、Sクラスを覗いてみた。ウルヴァンが窓の外を見て何か考え事をしている。
「よう、ウルヴァン。」
「ああ?てめぇか。何のようだ?金になる話か?」
「いや、実はウルヴァンの意見を聞きたくてな。ウルヴァンは今回の事件をどう思った?」
「・・てめぇの周りの奴の記憶が消された話か。」
「ああ、そうだ。精神汚染についてはウルヴァンに聞くのが一番だと思ってな。」
「今回の術者は俺とは全く方向性の違う術を使った。俺は相手の精神をぶっ壊すのが基本だが、そいつは記憶を操る術だな。以前てめぇにも話したが人を操る術てぇのは簡単じゃねぇんだ。ましてや殺意や自殺など人の死が関わるものについてはな。今回の術者はそういった意味では俺様以上の術者ってことだなぁ・・悔しいがよ。」
「今後もそういった奴が出てくると思うか?」
「ちっと考えにくいが・・『蒼狼の会』なら術者を抱えてるかもしれねぇなぁ。また方向性の違う精神汚染を使う奴がいるかもしれねぇぜ?」
「やっぱりそうか・・」
「まぁせいぜい気を付けるんだな。」
ウルヴァンはそう言うと窓の向こうに目を向けた。
「ああ、そうだ。今回ウルヴァンは術にかかったのか?」
「ちっ聞かれたくないことを聞いてきやがって。ああ、俺も術にかかってたさ。ここ数日のてめぇの記憶がねぇ。ただ、今後はこんなことはさせねぇ。いささか骨が折れるが精神結界を自分の周りに張る算段をしているからな。」
「そうか・・」
「ほら、もう行け。邪魔だ。」
ウルヴァンはそう言うと話を打ち切った。
俺は致し方なくSクラスを後にした。
・・・
その後、俺は風魔法研究部や体育館のライム道場に顔を出し、一汗かいた後、新しい自宅に戻った。
「「「お帰りなさいませユージ様」」」
使用人たちが挨拶をしてくれる。どうも慣れるまで時間がかかりそうだな。
「お疲れ様。張白亮は移ってきたか?」
「はい、もういらっしゃってお待ちですよ。」
「そうか。ありがとう。」
俺は屋敷内に入ると張白亮を探した。張白亮は自室で何やら書き物をしていた。
「張白亮、早かったな。」
「ユージ様。他人の家も悪くないですが、アカネ殿のご家族に気を使わせては悪いと思い早々に退散してまいりました。」
張白亮はそう言って笑った。
「何か書き物をしているようだったが・・」
「ああ、これは知人、友人にあてた手紙ですよ。今後私はこちらにいることを伝えたものです。」
「張白亮の友人か。優秀なものがいそうだな。」
「中にはおりますよ。そのうち紹介することもあるでしょう。」
「ハリーはまだ到着していないか?」
「ライン・ビーチからですからな。多少時間はかかるでしょう。私は特に荷物もないものですぐに参りましたが。あ、そうそうユージ様にお願いがあるのですが。」
「俺に?」
「ええ。ユージ様のいた世界や歴史などについて知りたいのです。どうかお時間をいただけませんか?」
「それは構わないが・・俺の知識は偏ったものだぞ。自分で言うのもなんだけれど。」
「それでも構いません。是非お願いいたします。」
「わかった。それじゃ時間を取って話をすることにしよう。」
「是非お願いいたします。」
「ああ、そうそう、この家で引っ越しパーティーをしたらどうかという話があるんだが、張白亮の紹介も兼ねてどうだろう。」
「私は構いませんよ。・・ハリー殿が来てからの方がよろしいかもしれませんな。その方が紹介が一気に済みますでしょう。」
「それもそうだな。」
それから俺達は毎日日本や地球のことについて話し合った。張白亮はさすがに吸収が早く、時に鋭い質問をぶつけてきて俺を慌てさせた。最も俺の知識が大したことがないものだからどう張白亮が役に立てるのかはわからない。
やがてハリーが到着した。
「ハリー、良く来たな。こちらが張白亮だ。今後色々教えてもらうことも多いだろう。是非色々と吸収してくれ。」
俺が言うと、
「はい!ユージ様共々よろしくお願いいたします!」
と元気よくハリーが答えた。
「張白亮、そういえばこの家の結界はどうなってる?」
「ユージ様が学園にいってらっしゃる間に王都の者が来て設置していきましたよ。最も私もあらかじめ結界を張ったので今は何重にも結界が張られている状態です。」
さすがだな。それで一安心だな。これで帰る場所がなくなることはなさそうだ。
「ですがご油断めされてはいけませんよ。『蒼狼の会』はどんな手を使ってくるかわかりませんから。」
「ああ、心しておく。ところで張白亮は魔法の方はどうなんだ?今回の件で結界術や解呪の腕は見せてもらったが。」
「ははは!今それをお聞きになるのがユージ様らしいですな。この国では普通は初めに魔法について聞かれるものですよ」
「そうなのか?俺は張白亮の政略・軍略の才を見込んだから惚れ込んだんだが。」
「見込んでいただいてありがとうございます。そうですな・・魔法につきましてはひととおり修めております。何か戦闘があった場合にもそうそう遅れをとることはございません。特に精神系魔法については自信がございます。」
なるほどな。張白亮の事だ。各魔法に精通していると思っていいだろう。精神系魔法について精通しているというのもありがたい。それで今回の事件の解呪などができたわけか。今まで気まぐれなウルヴァンくらいしか頼れなかったからな。
「それはありがたいな。是非魔法の才も存分に使ってくれ。」
「は。かしこまりました。」
「ところでハリーのことなんだが・・」
「ええ、内政の才があるとか。」
「どうぞよろしくお願いいたします!張白亮様の事は噂で聞いておりました!」
ハリーが元気よく答える。
「内政だけでなく、もっと広く政略・軍略についても教えてやってほしい。ハリー、これからは張白亮を師として学ぶんだ。」
「はい!かしこまりました!」
「私が師ですか・・ふふ、面白いものですな。少し前まで隠遁者として暮らしていたものが。」
「その間に蓄積したものがあると思っている。今後は俺のため、ライン郡のためにその知識を使って欲しい。」
「微力を尽くしましょう。」
張白亮はそう言ってうけおってくれた。
「さて、それじゃ、パーティーの準備をするとしようか。張白亮、ハリー、中心になってまとめてくれ。後で俺の知り合いのリストを渡す。」
「「はい。かしこまりました。」」
・・・
俺は学園にいくと皆にパーティーの事を告げた。
「・・というわけで引っ越しのパーティーをすることになった。みな気楽に来てほしい。土産なんかはいらないからな。」
「あら、そうですの?コルトン家のお宝をお渡ししようと思っておりましたのに。」
レインが言う。
「それはちょっと興味あるけど・・今回は身分差もあるからな。皆コルトン家のような金持ちじゃない。今回はみなに気楽に楽しんでほしいんだ。」
「ふふ、わかりましたわ。ではプレゼントはまたの機会に。」
「私は助かるな。プレゼント代も馬鹿にならない。」
フレンダが安心したように言う。ライム道場も家計が豊かではないからな。
「でも楽しみだね?ユージ君の新しい家にも興味あるし・・どんな人が来るのかなぁ?」
アイリスが言う。アイリスは大貴族だ。こういったパーティーには慣れているだろうが・・
「でもよぉ、もうユージは伯爵様だろう?偉い人がくるんじゃねぇのか?」
ダースがちょっと緊張したように言う。まぁダースは平民だからな。緊張するのも無理ないだろう。
「そのあたりは気にしてないでくれ。偉い人もくるかもしれないがそんなに大多数じゃないから。」
俺がフォローを入れる。
「私はたのしみですわ!また人脈が広がりますもの!」
「お料理美味しいの出る?」
竜人コンビは平常運転だ。
俺達はそんな話し合いをしながら雑談した。
こんな雑談も記憶を奪われていた間はできなかったんだよな・・感無量だ。
やがてマーティン先生が来て授業が始まった。
・・・
昼食時。
「ねぇそれって王家の人も呼ぶの?」
アカネが聞いてきた。
「うーん。呼ばない訳にはいかないだろうな。一応何度も世話になってるし。」
「だとしたら今のユージの家の体制じゃ手に余るかもね。」
そうか。そんなこともあるかもしれないな。
「ど・・どうしよう・・」
「仕方ないわね。当日はローゼンデール家からも助けを出すわよ。」
「あ、ありがとう。」
「今回の件ではユージに迷惑かけちゃったしね。これぐらいはしないと。」
もう気にしてないんだが。アカネはまだ気に病んでるらしい。
「ああ、それならヴァレンティ家からも人を出すよ。少しでも人手はあったほうがいいよね?」
アイリスが同調する。正直助かるが、いいのだろうか。
「そりゃ助かるけど、いいのか?」
「いいのいいの!ユージ君にはお世話になってるしね!私もユージ君の事忘れちゃってたし。」
そんな世話した覚えもないんだけどな。まぁ助けてくれるというのならいいか。
・・・
俺はそれから風魔法研究部、ライム道場の皆にも伝えておいた。帰宅してからは張白亮と相談してライン・ビーチと王宮にも手紙を出しておいた。英雄の村も考えたが少し遠いので来てもらうのは大変だろうと思いやめておいた。
そしてパーティー当日が来た。
読んでいただいてありがとうございます!ヒゲオヤジです。
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