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学園生活その1

学園での暮らしが始まった。


どうにも過去のいじめられっ子時代を思い出して学校にはなじみにくいものがあったが、心機一転、新しい生活を楽しもうと思っていた。


初日、登校するとまず教員室へ。

ドアをノックし、

「本日よりお世話になるユージ・ミカヅチです。あの・・担任の先生は・・」


するとすぐそばから女性の声があがり、

「おう!お前が『英雄の村』からきたユージ・ミカヅチか!あたしはブリッツ・アルテ。皆からブリッツと呼ばれている。よろしくな!」

と声をかけてくれた。


「あ・・あのよろしくお願いします。転移者なのでご迷惑をかけることがあるかもしれませんが・・」


「おう!聞いてるぜ!他の星から来たんだってな!まぁはじめは珍しがられるかもしれないがそのうちなれるだろ。あたしは元ギルドランクBのランカーだ。困ったことがあったら言ってこい」

と中々男前なセリフが飛んできた。


あまりこの世界の女性については知らないけど、みなこんな感じなのかな?あの俺を助けてくれた子も凛々しい感じだったし・・まあ、おいおいわかるだろう。


授業までなんとなしにブリッツ先生と話をして授業開始時刻になったので、連れ立ってクラスに向かうことにした。


――――――――


2年次生のフロアは丁度校舎の2階にあった。

端からS、A、B、C、D、E、と続いて最後にF。


こんなところでも明確に区別されているだなぁ・・などと考えつつ


F組の教室の前で立ち止まる。


「よう、みな静かにしろ!」

ブリッツ先生の掛け声でざわざわしていた教室が静かになる。

先生はうまくクラスをまとめているみたいだな。きっぷのいい姉御肌って感じだからまとめ役には適してるのかもしれない。


「今日は転入生を紹介する。ユージ・ミカヅチだ。ユージ、入れ!」


俺は好機の視線の中おどおどと教室の前、黒板の前に立つ。

「あ・・あの・・ユージ・ミカヅチです・・みなさん・・よろしくお願いします・・・」


何らかの期待をしていたのだろう。教室に軽い失望感が広がる。

まぁ、イケメンでも美少女でもないしね・・おまけに挙動不審。仕方ないところだ。


そこでブリッツ先生が

「ユージは異星からの転移者で、『英雄の村』の出身だ。皆学べることも多いと思うので仲良くするように!」


と、ここでざわめきが広がる。さすがに異星からの入学者は珍しいらしく、好奇の目が俺に注がれた。


しかし、こういうのって内緒にするとか、そういう気づかいがあってもいいんじゃないのか?それともさほど珍しくないからばらしても問題ないってことなんだろうか。


そんなことを考えていると、

「ユージ、お前の席はそこの空いてる席だ。さっさと座れ」

とブリッツ先生に言われたので、指定された席に着く。


となりは茶髪のチャラ男くんっぽい男だ。

「よう!俺はキース!キース・リカルドだ!よろしくなユージ!」

と気さくに話しかけてきた。


見た目より感じがいい男だな。


「こちらこそ、よろしくキース君」

「おいおい、同級生に君付けはいらねーぜ!キースでいいよ」

とニャハハと笑う。


「じゃあ、よろしくキース。色々教えてくれると助かる」

「おう、まぁ学園のことでわからないことがあったら俺に聞きな!」

と頼もしいことを言ってくれる。


頼りにさせてもらおう。


学校では通常の一般教養や、魔術の授業を午前中。午後はほ魔術や武術の実践授業にあてられていた。


午前午後の授業の間にはお昼休憩があり、みな食堂やお弁当など思い思いにご飯を食べるらしい。


昼になると俺はキースに誘われ食堂へ向かった。


――――――――


食堂はほどほどに混雑していた。

国費で経営されているので食費はただらしい。金のない身には大変助かる。


キースとメニューをみつつ列に並んでいると、


「あれ?君はあのとき絡まれてた・・根性なし君じゃない?この学園だったんだ!」

と声を掛けられる。


そこには俺を路地裏で助けてくれた美少女と友人らしき少女が立っていた。


こ・・根性なし・・いや日本での俺を思い起こせば反論できないけど・・


「あ・・あのときはありがとう。おかげで助かったよ」

と答えると


「まぁ私、あーゆうの我慢できないクチだからね。幸運だったのよ君」

と美しい顔を少し自慢げにほころばせる。


「そういや、名乗っていなかったわね。私はアカネ。アカネ・ローゼンデールよ。こっちの友達はアイリス。」

アカネ?なんか日本っぽい名前だな?


「アイリスです。アイリス・ローム・ヴァレンティ。よろしくお願いしますね?」

こっちは凛々しい系のアカネと違い優し気な金髪美少女だ。アカネが凛々しい美人系だとしたらアイリスはかわいい癒し系といったところだろうか。胸も大きい。制服の上からじゃわかりにくいがアカネはささやかに見える。


男が胸に目が行くのは自然のことだよな・・

って俺は何を考えてるんだ?


隣でキースが俺の脇腹をつつく。

『おい!この学園の2大美神がなんでお前に挨拶してるんだ??』

『いや、俺もアイリスさんのことは知らないよ。アカネさんには昨日チンピラにからまれてたところ助けてもらったけど』


とそんな話をボソボソしていると、


「せっかくだからお昼一緒に食べましょ!丁度4人分空いてる席もあるみたいだし。」

とアカネは取り終えた食事をのせたトレーを持って窓際に向かって歩いていく。


俺とキースもメニューを決めるとトレーをかかえて窓際に向かう。


――――――――


「へぇーユージは異星出身で『英雄の村』で鍛えられたんだ」

とアカネは興味深そうに聞いてくる。


「うん。まぁもともとが何もわからない状態からだから、多分やっと授業についていけるくらいだと思う。」


「んで、故郷に帰りたいと。でもそれって簡単じゃないわよ?」

「うん。そのあたりのことは少し聞いてる。ローム王国、カーティス皇国、ホーリー聖教皇国の同意が必要なんだよね?」


「そうよ。それには並大抵の努力じゃ無理よ。ここにいるアイリスならローム王国への融通は多少効くかもだけど?」


え?どういうことだ?


話を振られたアイリスは、

「いや、私貴族といってもヴァレンティ家のことにはタッチできる立場じゃないし・・七女だから後を継ぐなんてこともないし。」


なるほど。貴族と言ってっも家の相続権とか色々あるだろうしな。


「でもヴァレンティ家くらい大きな貴族だったら、王様に会える機会もあるんじゃない?」


「無理だよ。せいぜいお父様や一番上の兄さまくらいじゃないかな・・抜群の功績なんかあげられたら別だけど。

それにそんなこと言ったらアカネの家だって貴族じゃない」


「うちはそんな立派なものじゃないわよ。ただの没落貴族。国名の名乗りまで許されてるアイリスとは違うわ。」


なるほど。アイリスのロームというミドルネームは王から下賜された家名か。

日本でも戦国武将が自分の名前の名乗りを配下に許すことがあったしな。つまりそれだけアイリスの家は王家の信も厚いってことなんだろう。


ここでアカネが決意に満ちた顔で言う。

「でも私だってこのままにはしておかないわ!お父様の失敗で没落した家名は私が再興して見せるんだから!」


なるほど。目的地は違うがアカネも俺と同じく出世を目指しているんだな。


「アカネならできるよ!炎を使わせたら学園一だし、他の魔術も主なものは全部使えるじゃない」

「アイリスだってヒールに関しては学園一でしょ?」

「あはは・・私はヒールだけだから・・・」


二人は仲良さそうだがどういう関係なんだろうか?


「私たちは初等部のころから一緒で幼馴染なの。子供のころから良く一緒に遊んだり勉強したりしてきたの」


「なるほどね。ところで二人のクラスはどこなんだ?」

少なくとも俺よりは上だと思うんだけど。


「私はSよ。まだまだ満足していないわ。Sクラスの中でもNo1になってみせるんだから!」

と、アカネは言う。この子ならやりそうな雰囲気があるな・・しかしクラス内でも順位があるのか?Sクラスは中々に厳しそうだ。


「私はBかな。ヒーラースペルだけだから、あとは勉強で評価されてる感じかな?」

とアイリスは謙虚にいうが、Bクラスだって今の俺にとっては雲の上だ。


ここで美少女二人に見とれていたキースが口をはさむ。

「アイリスちゃんのヒーリングスペルは有名なんだぜ?学校の先生も負けるかもしれねぇってレベルだ。」

なるほど。そんなに優秀なヒーラーならパーティーなどを組む戦いなら引く手あまただろうなぁ・・


「ちなみに俺は全部平均値だ!」

とキースがドヤ顔で言う。なんでドヤ顔なんだよ・・。


「そんでユージ?あなたは何ができるの?」

おっとこっちに矛先がきた。


「まぁ・・武術かな・・まだまだ修行中だけど・・」


「ハァ?あなたチンピラにやられてたじゃない?そんなレベルで武術?」

いや・・あれは突然でパニクってしまったというか・・ビビってしまったというか・・


「魔術にしたほうがいいんじゃない?どっちかというと性格的にそっちむきのような気がするんだけど。」


痛いところつくな・・多分俺もホーンテッドがなければそちらにシフトしたいところだが、魔術の才能はないとルースに言われたしな・・


「いや・・実は賢者って言われてるルースから主な魔術の才能はないって言われてて・・」


「え!ルースって賢者ルース・アインハルト?私の目標なんだけど!!ああ、あなた『英雄の村』出身だったわね!」


「うん・・そこでルースやベルフェって人に教えてもらってたんだ。」


「ベルフェって元騎士長のベルフェ・グール?あなた、どれだけ恵まれてるよ!」

やっぱり恵まれてたのか。


地獄のような修業の日々だったけど、向上心のある人には最高の環境なんだろうなぁ・・


さて、お昼時間も終わりそうだし、そろそろ教室に戻るか。


――――――――


教室に戻るとさっそくキースが食いついてきた。

「おい、ユージ。俺たちは友達だよな?」

いや、会ったばかりなんだけど・・まぁ友達でもいいか。


ただ、日本で、俺が心を病み、まともな生活ができなくなっていくにつれ、友人たちは俺と距離を取るようになり、それぞれ家庭を築き、俺も付き合いを遠慮するようになっていった。それがいい年して引きこもりメンヘラへの道だったのかもしれないが・・そういった経験があったので今一つ友人という言葉に身構えてしまう。所詮一時の交わりに過ぎないと考えてしまうのだ・・


「おい、ユージ、聞いてるのか?」

「あ、ごめん。聞いてなかった・・」


「だから、アイリスちゃんの趣味とか好きなものが知りたいんだよ!お前、アカネちゃんと繋がりがあるんだったら何とか聞き出せないか?」


いや、繋がりといっても俺は助けられただけなんだが・・これが男がかっこよく女の子を助けたとかなら、脈があるかもしれないけど。


「まぁ努力はしてみるよ」

「頼むぜ!この学園じゃクラス順位がそのままカースト制になってるからな。Fクラスの俺がBクラスのアイリスちゃんに声かけるなんてできねぇからさ!」


まぁこういうのも青春の1ページなんだろう。自分がその立場にいることを忘れてすっかりおっさん思考で考えていた。


――――――――


午後からは魔術・武術の授業だ。


クラスごとに行う場合もあるが学年一斉に行うこともあるらしい。

今日はクラス別なのでF組のみ校庭に移動した。


今日は雷魔法とのことで各生徒が校庭に建てられた的に向けて思い思いに魔法弾を発射している。

さすがというべきかなんというか、Fクラスだけなあり、まともに的にあたるのはごくたまに。むしろ的にかすらない生徒のほうが多いくらいだ。


俺もなんとかルースの教えを思い出しつつ、体で念を練って雷属性の魔力弾として発射してみる・・・が的まで届かず消えてしまった。


うーん、やっぱり適正なしか・・・


しかし、この時俺の中にはある考えがあった。


どうせ適正がないなら他属性魔法を捨てて一つに集中するというもの。

その中でも武術にいかせそうなのは風だ。

風魔法であればホーンテッドを使った戦いにおいて、真空を剣にまとわせ、剣の射程範囲を伸ばしたり、大きな敵が現れた場合、空中に飛んで攻撃を届かせる、といったことが可能では?

と考えたためだ。

恐らく他の魔法に費やしている余裕はない。今後はこの方針でいこう。


『ズバァン!』

そんな授業上の空で考えていると見事な炸裂音が聞こえてきた。


「あれ?当たっちった!やるな~俺!ニャハハ!」

キースだった。


的の中心に当てるどころか的全体が消滅していた。

自分では全部平均っていってたのに・・やるな・・


――――――――


寮に戻ると寮に付属している食堂で手短に食事を済ませ、ランニング、筋トレをして教科書を開く。ここ1年でトレーニングの習慣がついたせいか体を動かさないとなんだか気持ちが悪いためだ。それに何より、メンタル的に症状が軽くなることを発見した。それでも週に2度は疲れ切ってベッドに倒れこんでいたが、この世界で生きるために・・故郷へ帰るために・・・と言い聞かせて体を動かし、教科書を開いた。


良い思い出などほとんどない故郷だが、ここまで自分のモチベーションになるとは驚きだ。

読んでいただいてありがとうございます!ヒゲオヤジです。


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創作の励みになりますので、よろしくお願いいたします。


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