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学園へ

英雄の村にきてから1年ほどがたとうとしていた。

この世界での時間の流れはほぼ地球と同じらしい。混乱せずに助かる。


ルースの授業では政略・戦略・戦術まで教えてくれるようになり、歴ヲタの自分としては興味深く取り組んでいけるようになった。このあたりは学園でも教えてくれるそうなので予習といったところだ。


ベルフェの修業にもなんとかついていけるようになり、体ができてきたのと時を同じくしてコール時間も3分ほどまで伸びてきた。コールする時間が長くなるにつれ、ベルフェも俺の相手をすることがきつそうだったので模擬戦のときは意識して力を抑えるようにしている。俺も偉くなったもんだが、師匠を切るわけにはいかないからな・・。


ついでに毎日動き回っているせいか、いつの間にか体調も良くなっていた。

まぁ異世界で生きていくことに精いっぱいで自分のことをかえりみる余裕がなかったってのが実のところだ。


ルースの授業とベルフェの修業で戦国武将も短時間だが呼び出せるようになった。すぐに使えるというわけではないだろうが、国の軍隊などで戦う場合は役に立つかもしれない。自分自身が指揮官になるなどはまだ当分先の話だろうけど。


さてそんな日々を過ごしていたある日、ベルフェがルースの家まで話にやってきた。


――――――――


「というわけでな、もう坊主の修業はそろそろ終わりにしてもいいと思うんだが。今なら士官学校だろうが魔術学園だろうがついていけるだろう?」

「ふむ、そうじゃのう。読み書きの部分もだいぶ覚えてきておるし・・そろそろ学校にいかせてもよいかもしれんのう。」

と、ベルフェ、ルースが言う。


「お主はどうじゃ?ユージよ」


「はい。今の自分のレベルがどれほどかはわかりませんが、次の段階にいけるのならいってみたいです。」


今まで鍛えてきたものを試したいというのもあるし。新しい世界で何がおこるのか少し楽しみだ。


「ふむ。以前申したようにここには王立の士官学校と魔術学園がある。より早くおぬしの故郷への帰還を目指すならば魔術学園がよかろう。魔術学園で研鑽ののち、ギルドに所属しSクラスを目指すのが最も早いじゃろう。Sクラスになれば爵位ももらえる。国の主要人物に触れる機会も増えるじゃろう。その中で次元ホールを使える機会もあるかもしれん。」


ギルド!やはりあったのか・・しかしSクラスってどのくらい難しいんだ?


俺の顔を見てとったのかルースが補足する。

「Sクラスパーティーはここ数年出ておらんのう。まぁまずはFクラスからになるじゃろうが・・少なくとも士官学校を出て出世の道を目指すよりは早いはずじゃ。」


「なるほど、わかりました。では私は魔術学園を目指します。」


「魔術学園には試験があるが、まぁ半分も取れればワシとベルフェの推薦状で合格できるじゃろう。国立ゆえ、学費もかからんしの」


「それはありがたいです。」

これ以上迷惑をかけるわけにもいかないからな。


ルース、ベルフェと話し合った末、俺は魔術学園の2年次生に編入することにした。


――――――――


魔術学園がある場所はローム王国王都になる。この国にもある馬車で1,2日というところだ。今の自分なら走っていけそうな距離だがルースとベルファに止められた。


「よいか、ユージよ。これからお主には様々な困難がふりかかるじゃろうが、負けずに乗り越えるのじゃぞ」

「ガハハハッ!俺の鍛錬についてこれたんだ!自信もっていいぜ!何かあったら俺様に言ってきな!」

とルース、ベルフェから激励を受け。


「ありがとうございます。本当にお世話になりました」


「何、礼には及ばん。剣に選ばれものは弱きものを救い正義を行う、という伝説があるからの。」

なんか重要なことらしきことをあっさり言われた。そんな期待があったのか。果たして自分にできるかどうかはわからないけど、心にとどめておこう。


「覚えておきます。では!」


村人から借りた馬に荷物を置き、乗り込む。馬車よりも自分で乗っていきたかったのでこういう形にしたのだ。


さあ出発しよう!


――――――――


道中は平和だった。英雄の村と王都との間には主な街道が整備され、定期的に国による魔物の駆除なども行われているらしい。ちょっと尻が痛くなったが、馬を疲れさせないよう、適度に休息を挟みながら進んでいく。なお、馬の返却は、村の行商人が王都での商売のついでにピックアップしてくれることになっている。


――――――――


遠くに大きな都市が見えてきた。円形の城壁に囲まれた大きな都市だ。ところどころ崩れた壁が見えるが戦争か何かのあとだろうか?


とにかくも入り口らしき大きな門を目指す。


――――――――


入り口ではたくさんの人が城兵によるチェックを受けていた。

行商人、旅人、冒険者風と様々な風体の人がいちいち質問に答えている。


ようやく俺の番が来た。


「お前は・・学生か?王都に何をしに来た?」

門衛に聞かれる。大柄な門衛だ。1年たっても自分の性格は変わらずビビってしまう。

今の自分の体格は160cmちょいといったところで丁度日本の中学生くらい。

門衛は180cmはあるだろうか。


「は・・はい。王国立魔術学園の編入試験を受けに来ました。」

「おう、魔術学園の生徒か。推薦状は持っているか?」

俺はここでルースとベルフェの推薦状を出す。


「!なんと!賢者様と前騎士長様の推薦状か!お前は『英雄の村』からきたのか?」

「は、はい。」

「ふむ。では問題なかろう。通れ」

あっさりと通してくれた。ルースとベルフェの名前は想像していた以上に大きいようだ。


――――――――


ローム王国の王都は写真でみるヨーロッパのような建造物が立ち並び、人が忙しく行き来していた。

様々なものをうる出店が立ち並び、街並みも噴水があったり、公園があったりとなかなかに美しい。


しばらく田舎暮らしが続いていたのでこれからこの場所で暮らせると思うと否応なくワクワクしてくる。


これからこの場所で暮らしていくのだ!


――――――――


まずは学生用に準備された寮へと向かう。

魔術学園では寮が解放されており、学生や受験者、その他イベントなどさまざまの目的に使われている。

貴族の子弟などで王都に家があるものは実家から通う。夢の実家通いだな・・


寮に着きいったん荷物を置くと早速町に繰り出してみた。試験は明日だ。念のため、ホーンテッドも持っていく。町を歩いた限り、武器を持っている人もちらほらみかけたので問題にはなるまい。


町をぶらぶらしているとおいしそうな串焼きなどが売っていた。何の肉かはわからないが手に取って食べてみると意外とうまい。聞いてみると猪の肉のようだ。ほかにも武器を売る店や、防具を売る店、薬草やポーションを売る店など、さすが王都、一通りの店はそろっているようだ。また店にも格というものがあるらしく、客層が各店で異なるのが見て取れた。


店をひやかしながら歩いていくうちふと気が付くと路地裏に入り込んでいた。


いかにもな不良風のお兄さんたちが道端でだべっている。

本能が避けよ、というのに従って、目を合わさぬよう、恐る恐るそばを通り過ぎる。


「カツンッ」


やばい!剣の柄があたってしまった!剣を持って歩くなんて慣れてないからなぁ・・


不良のお兄さんたちは瞬間的にこちらに気づき、周りを囲んできた・・・。

大柄で、みな180cm以上はある。それぞれ思い思いに手斧やショートソード、ナイフなどを持っているのが見えた。


ああ・・こっちの世界でもこうなるのか・・


「す・・すいません!」

といって通り過ぎようとしたのだが、逃げ道をふさがれる。


「おいおい、にいちゃん。中等部かぁ?人に柄あてといてそのままゴメンナサイってことはねえよなぁ?」


「す・・すいません・・気を付けます・・」


「すいませんじゃねぇだろが!とりあえず持ってるもんだせや!!」


・・・怖い。この瞬間、修業の日々などがふっとんでただ恐怖だけが心を占める。


「あ・・あのお金は持ってないんで・・」

わずかなお金はルースが持たせてくれた数少ない生活費だ。ここで渡すわけにはいかない。


「ドカッ」

瞬間的に沸騰した男のこぶしが顔面にささる。

・・ああ・・久しぶりだなこの感じ・・


しかし、いくらなんでもホーンテッドを抜いて戦うわけにもいかない。下手したら殺してしまう。


周りの人も見て見ぬふりだ。

俺はあきらめてわずかばかりの有り金を出そうとすると・・・


「ちょっと待ちなさいよ!」

と女性の怒鳴る声が聞こえてきた。


思わずそちらを見ると・・・


緋色の髪、緋色の瞳、そして美しい柳眉を逆立てて怒る女の子が見えた。


(な・・なんて綺麗な子なんだろう・・?)

と俺は現在の状況も考えず思わず見とれてしまっていた。


年のころは俺と同じくらいか?


女の子はその気の強そうな瞳を輝かせて怖い男たちに食って掛かる


「今時、柄が当たったくらいでなによ。そんな小さな子からお金脅し取って楽しいわけ?」


「ああ?」

男たちは瞬間的に獲物を変更し、女の子を振り返る。

「おいおい、えれぇ別嬪の嬢ちゃんじゃねえの。お兄さんたちになんか用か?」


「おおありよ!その子を放してあげなさいっていってんのよ!」

その言葉に男たちが青筋を立てる。


「おいおい、嬢ちゃんよ、こっちは遊び相手が嬢ちゃんだっていいんだぜ??」


あ、やばい。このパターンは俺がいじめられてた時、助けてくれた子が新たにいじめられるパターンだ。


もうこんな子に迷惑はかけられないよな。俺はホーンテッドを掴んで男たちに向き合おうとすると・・

「ふん、あんた達みたいなのって本当にいなくならないわね!私が相手になってあげるからかかってきなさいよ」


というやいなや左手を開き男たちに向ける。


男の一人がハッと気づいたように・・

「お・・おい。やべえよ。こいつ・・『緋色(スカーレット)の姫(プリンセス)』じゃねぇか?」


別の男が

「あ?マジか?あの爆炎の・・?」


男たちがざわざわし始める。

有名な子なんだろうか?


女の子は

「何ぶつくさ言ってんのよ。あんたたちはいつもそう。強いものには媚びて弱いものから奪う。私そういうの嫌いなの。さっさとかかってきないよ!」


男たちはしばしざわざわと話し合った結果、

「ち、こんなガキになめられてたまっか!お嬢ちゃん覚悟しな!」

と一斉に武器を取り襲い掛かる!


やばい!と俺も慌てて助けに入ろうとするが・・・


『ズバン!』


女の子の手のひらから放たれた火の玉で男たちは吹き飛ばされていた。


「殺傷能力を抑えてあるから死ぬことはないわ。まぁ数日やけどで苦しみなさい」

と男たちを見つつ言い放った。


(か・・格好いい・・)

と俺はまたも場違いな感想を感じていると、


「ほら、立てる?」

と女の子が手を差し出してきた。

「あ、ああ・・ありがとう」

俺はなんとか声を振り絞った。


「どういたしまして。こんな路地裏にのこのこ来ちゃダメよ。それにあなたも男なら一発くらいかましてやりなさい!」


「そ・・そうだね・・アハハ・・」

思わず見惚れてしまいながらなんとか返答する。

そもそも女の子に手を取られるなんて日本でも激レアなケースだ。


思わず手汗をかいてないかドキドキしてしまう。


「じゃあ私は行くから。気を付けてね!」

と颯爽と去っていった。


あ・・名前くらい聞いとけばよかったかなぁ・・そんな勇気はないけど。


とりあえずは明日の試験に備えて早く帰ろう。


――――――――


翌日。


試験は滞りなく終わった。

午前中は筆記試験、午後は実技試験。そして面接。


筆記は50点以上取れればまぁ大丈夫と言われていたのだが、おそらく平均60点ほどは取れたのではないかと思う。


午後の実技は魔法と武術の選択式だったので武術を選び試験官と手合わせをする。

真剣ではなく、竹刀のようなもので剣、刃の部分にカバーをつけた槍、そして弓の試験を行った。いずれも村で鍛錬していたものだったのでまぁ何とか合格ラインに達したかなとは思う。面接はなぜ学園に入りたいか、入って何をしたいか、などを聞かれる。ルースとベルフェの推薦状も効いたのか試験後すぐに合格の旨を知らされた。


試験後、学園長に呼ばれ、色々と話をする羽目になった。


学園長はロイド・カースといった。

「やぁユージ・ミカヅチ君。合格おめでとう!僕はロイド。この学園で学園長をやっておる。」


初老の人の好さそうな人物だ。


「は・・はじめまして。ユージです。」

相変わらず初対面の人にはドギマギしてしまう。


「君は英雄の村から来たんだね?そこで賢者ルースと前騎士長ベルフェ氏のてほどきをうけたんだとか?」


「あ、はい。そうです。お二人には色々教えていただきました。」


「君には期待しているよ!試験の成績は武術はよかったが筆記が今一つだったからまずはFクラスからになると思うが、頑張ってSクラスを目指してほしいね!頑張りなさい」


「は・・はい頑張ります」


学園でも実力主義でSクラスからFクラスまであるようだ。このあたりはギルドの制度と同じだ。

俺はまずは2年次生Fクラスからスタートということになった。


「えーと、それに君は異星からきたんだったね。この世界ではまれにあることだから、多少珍しがられるかもしれないが、くじけずやんなさい」


「は・・はい」

学園ではあまり目立つことをするなと言われていたので、試験でもホーンテッドを使わず乗り切った。


ホーンテッドを使えば武術では突出した成績を残せたかもしれないが、まずは自分の現在の力を試してみたかったのだ。


いよいよ学園での生活が始まる。

読んでいただいてありがとうございます!ヒゲオヤジです。


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創作の励みになりますので、よろしくお願いいたします。


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