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お姫様は王子様の腕の中

エピローグ

エリオットはアイザックの宣言に慌てた。


「ええぇ?そんな、帰りの道案内は?俺達、どうするの?」


ケインも

「困ったなぁ。うちの国も、遠いんだよな。」


シュトリは、上機嫌で

「問題ない。魔法で送る。」


そうして、帰り道は本当に一瞬で帰った。

森の入り口で待っていたランディは、いきなり現れたエリオット達にびっくりする。

「え?!ぇぇぇぇ?エ、エリオット様?どうやって帰ってきたんですか?」


エリオットは頭を、抱えた。

「これには、色々あってだな……。」

とにかく、エリオットには魔族とアイザックについて理解が出来ず、説明が難しかった………。




ダイアナは、寝ぼけながらモゾモゾしていた。

凄く暖かい。柔らかい感触に頬ずりする。


(気持ちいい。)


誰かが顔にかかった髪の毛を避けてくれる。

(その髪の毛がくすぐったいのよね。)


フフフ。


微笑んで、あれ?と気付く。

ダイアナは、薄目を開けた。


目の前には、誰かの鎖骨が見える。

女性ではない。胸がない。


ダイアナは上をそっと見上げた。

そこには、ふんわり笑ったジュリオの顔があった。

「ジュ、ジュリオ様!」


「おはよう。ダイアナ。気分はどう?」


そう云えば、少し頭が痛い。

でも、この状況の方が、よく分からない。

ダイアナはジュリオに抱えられるように、同じ寝台に横になっている。

ダイアナは恥ずかしくて、真っ赤になる。


ジュリオはダイアナの頭にキスを落とす。

「まだ、もう少し、寝てた方がいいよ。」


そして一人で起きようとする。

ダイアナの胸がチクリと痛んだ。


「ジュリオ様」

ダイアナはジュリオの上着の裾を掴むと、

「もう少し、一緒にいてください。」


もっと一緒に居たかった。抱きしめて欲しかった。

ユリア嬢ではなく、自分を。


ジュリオはもう一度、寝台に横になる。

「どうしたの?お姫様?」


「……ユリア様は……。」


「ああ、あれはユリアがダイアナを騙したんだ。」


「え!?」


「俺は、あの夜、ユリアに睡眠薬で眠らされた。そこにユリアが勝手に潜り込んだんだ。

 ユリアとは何も無いよ。」


そう言うと、ジュリオはダイアナにキスをする。

ダイアナの瞳に涙が溢れた。


「安心してお休み、ダイアナ。」


二人は抱き合って、また眠った。




エリオットは事の顛末、アイザックの決断を、寝所のネルソン男爵に伝えた。

気の毒だが、ちゃんと話すしか無い。

ネルソン男爵は、また気を失いかけるが、

「時々、帰るって。」

とのエリオットの言葉に涙する。


(親って、大変だなー。)

エリオットは苦笑した。


ジュリオは、魔族とヘレナの顛末については驚いていたが、シュトリがアイザックを望み、アイザックもシュトリを選んだことに、直ぐに納得したようだ。

「彼は……どうも、マイノリティみたいだから。」


ジュリオはアイザックの性癖を薄々勘付いていたのだ。

エリオットには思いもつかなかった。

おまけに、受容している。

兄貴には叶わない。エリオットはそう思った。




その後。

ケインは、

「面白いもん、見せてもらった。」

と笑いながら、国に帰っていった。

また、時間があれば来るだろう。


キールは、王都に帰った後、セシルに交際を申し込んだ。

セシルはキールより二つ上だが、まんざらでも無いようだ。


ランディは、キールの下で毎日、ランニング10km、スクワット500回、腕立て伏せ500回、素振り2時間等を行っている。

お陰で筋肉ムキムキになりつつある。………何処を目指すんだろう。


リックスは、相変わらずジュリオの侍従である。


ユリアを騎士団に引き渡した後、国と騎士団はユリアを持て余し、宰相ゴードンはリックスに相談した。ユリアが、すっかりリックスに開発されてしまったからだ。

ジュリオの意向で死刑は避けるよう言われているし、牢屋に繋いで置くのも嫌だし、何処かに放り出して、そこで問題を起こしても寝覚めが悪い。

(誰一人、ユリアが野垂れ死ぬとは考えていない。)

仕方なく、リックスは、ある大人の施設にユリアを預けた。

ユリアは喜々として、そこで働いている。

大人の階段を数歩、一気に登ったようだ。


ジュリオがリックスに

「いい下僕が出来たんじゃないのか?」

と聞いたら

「ジュリオ様の面倒を見るので、精一杯。他の者に手をかける余裕はありません。」

と答えられた。

ジュリオは(俺って、そんなに手がかかるかな。)と思った。



調査隊が帰って来てから、パッタリと魔物の報告が減った。

一月度に、ゴードンがジュリオとエリオットに報告している。

シュトリが結界を張った様だ。


その一方、山菜取りに行って道に迷い、奥に行ってしまった者から、

「悩ましい声が、木霊して聞こえる。」

との報告が。


一体、何処で何をしているやら。

これについては、ジュリオとエリオットは苦笑いしかなかった。




そして、更に一年後。

ジュリオとダイアナは結婚する。

まだ王が健在なので、王位継承は無いが、皇太子夫妻として公務を務める事になる。


ジュリオはダイアナを抱きしめて、

「良かった。長年の夢が叶った……。」


「ジュリオ様?」


「ダイアナ、もう、離さないからね。離れないでね?」


困ったように笑いながら、ダイアナはジュリオにキスをした。

今までより、深いキスを。


奥手な王子が耳まで真っ赤になったのは、ご愛嬌。


二人の未来に幸あれ。




終わり。

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