秘密をうちあけられる人
「誰にも言ってはいけないよ」
「誰にも言っちゃだめだからね」
「誰かに言ったら怒るよ」
私はよく誰かから秘密を打ち明けられる。
それらのほとんどは日常生活のちょっとした事だったり、
ちょっとした失敗だったりの話だ。
時々はサプライズ企画の事なんかも聞かされたりする。
そういうのは、口が堅い人じゃないとだめだから、聞かせる人を選ぶから、打ち明けられる身としては誇らしい。
でも、ほほえましい秘密ばかりが打ち明けられるわけじゃない。
時には誰かを傷つけたり、貶めたりした話も聞かされてしまう。
どんなに大人しい人でも、真面目な人でもなぜか皆私を前にすると、饒舌になってしまう。
私は、そんなにも口が堅いように見えるのだろうか。
そんなにも信用できるような人間に見えるのだろうか。
重大事を打ち明けられるにふさわしい人間に見えるのだろうか。
いや、きっとそうなのだろう。
なぜなら私は、
「は~い、〇〇さん、今日もお薬の時間ですよ~、具合が悪いるいところはありませんか~。ん~、怪我なし、異変ナシ、普段通りっと。食事を持ってきますね~、何か訴えたい事があったら視線を動かしてかしてみてください。あ~、いつも通りなんですね。健康健康」
喋ることができないのだから。