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酒は飲んでも飲まれるな

作者: 鳥柄ささみ

「お前今年も独り身かよ!」

「しょうがねーじゃん、最近別れたんだからよ!」


 何が楽しくて、自宅で誕生日に友人相手に酒を交わさなくてはいけないのか。本当なら、可愛い彼女と一緒にラブラブしながら宅飲みかどこかディナーでオシャレに決めるはずだったのに!


 そんなことを思うものの、彼女であるカヨとは先週別れたばかりだ。しかもその原因は、何を隠そう俺自身にある。


 というのも先週、まさかの酔った勢いで、こともあろうに彼女のクローゼットに催してしまったのである。


 それはもう、彼女はカンカンに怒った。それなのに、酔った俺は気が大きくなっていたせいか、「断捨離できて良かったじゃん!」などと彼女に口走ったという。


 最早、自分でもドン引くほどの言い草である。しかも、それを自身がほとんど覚えていないというのが情けない。覚えているのは、彼女の怒りと悲しみでぐちゃぐちゃになった顔だ。


 そんなこんなで、俺はカヨに振られて今に至る。


「なぁなぁ、彼女いないんなら、家にデリとか呼んじゃえば?」

「は!?嫌だよ。自宅に呼ぶのなんか。こえーじゃん、なんか」

「何ビビってんだよ。いいじゃん、誰にも気兼ねすることねーんだしよ!彼女いないんだし、な?」

「ふつーに嫌だわ。てか、俺明日早いんだったわ。帰れ」

「何だよー!せっかく集まってやったのに!」

「勝手に押しかけて来ただけだろ?いいから帰れ!じゃあなー」

「薄情者ー!!」


 友人をとりあえず部屋から追い出すと、散らかった酒やつまみを片付ける。


(なんか悲しいな……)


 カヨがいたときは、文句を言いながらも一緒に手伝ってくれて、とても気が利く子だった。しかもめちゃくちゃ可愛いし、胸も大きくて、それから……。


「あーーーー!考えてもダメだ!そもそも俺の自業自得だしな」


 そうグチグチ言いながら、頭を掻き毟っていると、ピンポーンとチャイムが鳴る。


(あいつ、忘れ物でもしたのか?)


「何だよ、何しに……カヨ!」


 うんざりした顔で相手も見ずに玄関を開ければ、先週別れたはずのカヨがいた。


「どうして……」

「キヨくん、誕生日だし、なんかユウくんが寂しそうにしてるぞって言ってたから、……来ちゃった」


 ユウというのはさっきとは別の友人だが、まさかのお膳立てに内心でユウに感謝する。


「カヨ!この前は悪かった!本当、もう酒に飲まれないから!」

「そんなこと言って。さっきまで飲んでたんじゃないの?」

「いや、飲んでたけどさ。明日早いからちゃんと切り上げたんだぜ?」

「ふーん。てか、家入ってもいい?」

「も、もちろん!入ってくれ!」


 バタバタと慌ただしく片付ける。すると、カヨもただ座ってるのもなんだから、と手伝ってくれる。


(やっぱり優しいなぁ、俺にはカヨしかいない!)


 改めて、カヨの良さを再認識する。


「ふーん、ちゃんとそれなりには片付けてるじゃん」

「あれから、反省して、もう酒で失敗しないように戒めとしてカヨから言われたことは守ってる!」

「そうなの。ユウくんが言ってたのは本当だったんだね」

「そうなんだよ!もう酒には失敗しないし、この前は本っ当に悪かった!申し訳ない!この通りだ!」

「もういーよ。キヨくんがあんなになったのってあの時だけだったし。もう、二度とあーいうことはしないでよ?」

「も、もちろんだよ!絶対にしない!!」

「そか、ならいい。じゃあ、仲直りのキスしようか?」

「カヨ〜!!!」


 ガバッとカヨに抱きつく。そして、キスしようとした時だった。


 ピンポーン


 再び鳴るチャイム。


「誰か呼んだの?」

「いや、誰も……」

「本当に?ちょっと出てくる」

「あ、カヨ!」


 カヨがドアを開けると、ちょっとふっくらしたギャルっぽい女の子がそこにいた。


「あの、どちらさまでしょうか?」

「え、ちょ……3P?聞いてないんだけど……」

「は?」

「え、ここって金塚清士さんの家ですよね?」

「キヨくん……どういうこと……?」

「は?!俺も何が何だか……はっ!」


 そこで俺は思い出した。先程ヤツがデリへルを呼ぼうと言っていたことを。


「その顔、何か見覚えがあるんでしょう?」

「いや、誤解だ!まず話を聞いてくれ!!!」

「最っっっっっっっっ低ーーーーーーー!!」


 バシーンと左頬に打たれた平手。それで俺の身体はまるでスローモーションのように、宙を舞った。


 ドターン、バタン!


 自分が倒れるのと彼女が出て行くのは同時だった。


「え、やば、修羅場?」




 終わり

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