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5.森を探索する(5月1日)

翌日の5月1日も快晴だった。

この3日間は快晴続きだ。そろそろ雨が降らないと、畑や田の水が心配だ。


昨夜はドローンで空撮した画像をパソコンに取り込んで、拡大したり繋げてみたりしたが、結局撮影した範囲では昨日見つけた村以外の人の気配はなかった。


今日は東の森で見つけたミステリーサークル状の場所に行って見る。

最初の目的地としてはそんなに遠くないし、適当なところだろう。


同じような光景を写真で見た事がある。同心円状に木がなぎ倒された森。

ロシアのツングースカだったか。

確かあれは隕石の空中爆発だと結論が出ていた。

東の森のミステリーサークルもそのようなものだろうか。


とにもかくにも、装備である。

森に入るのだから、BDUはフレック迷彩一択だ。

武装は取り回しの良さを優先してG36Cを選択。マガジンはジャングルスタイルで2個装着し、予備マガジンを2つ携行する。

腰のヒップホルスターにはUSP、右腿には剣鉈、左腰にはサバイバルキットを装着した。

向かう先には洞窟のような穴が開いていた。一応ヘルメットにヘッドライトを付け、G36Cにはフラッシュライトを装着。

背負うミリタリーリュックにはザイル代わりのパラシュートコードを30ヤード巻いたものをぶら下げる。だいたい30メートル弱だ。


ミリタリーリュックには非常用食料カロリーメイトと水のペットボトル、予備バッテリーと3000発のBB弾の袋、小型のドローンと送信機、双眼鏡、折り畳み式のスコップとテントを張るときのペグ、それに測量で使う300メートルの蛍光ピンクの水糸をリールのまま放り込んだ。


黒いミリタリーブーツを履き、シューティンググラスを掛ける。

ナックルガード付きグローブをはめれば準備は完了。


玄関の鍵を掛けてから、慎重にトラップを乗り越える。



あとはミステリーサークルに向かうだけだ。

車で向かうことも考えたか、結局歩く。

安全通路もわからない状態では、迂闊に車は出せない。


まっすぐ西に向かうのも芸がないので、一旦北に向かい、森の縁に沿って歩くことにした。


くるぶしほどの草を踏みながら、北の森へと向かう。

時々目の前に飛び出してくるバッタがいるくらいで、特に危険そうな生き物はいない。

平べったい石の上で緑色の蛇が日光浴をしている。アオダイショウのようにも見えるが緑色が鮮やかだ。

蛇耐性はあるが、毒蛇だと厄介だ。血清など当然無い。触らぬ神に祟りなしってやつだ。


北の森の端、ゴブリン達を狙撃した場所に到着する。

槍や弓矢、ボロボロの服や布袋は転がっているが、亡骸は残っていない。やはり森には掃除屋スカベンジャーがいるらしい。


とりあえず布袋と首飾りだけ回収する。一昨日集めたのと合わせて、そろそろ検分しなくては。



時折小鳥のさえずりが聞こえるが、不快な鳴き声ではない。ゴブリンの気配も感じない。

いや、ゴブリンの亡骸を喰うような生き物がどこかに潜んでいるはずなのだ。気を引き締めて歩き続ける。


時折双眼鏡を取り出して辺りを見渡す。

南側の森の端に何かがいる……シカのようだ。南の森の外縁部でのんびりと草をんでいる。

草むらを揺らしながら地面に沿って動く影はウサギかイタチか、あるいは異形の生き物か。


森の木々はやはり広葉樹が中心のいわゆる照葉樹林。

緑の葉っぱらしい硬い葉にブナ科独特の鮮やかな花穂を出し、少々生臭い匂いを出している。クリの花の匂いというやつだ。

花穂の周りではたくさんの昆虫が飛び回っている。ミツバチというよりハエのように見えるが……


ツツジやクルミ、ヤツデのような低木とヤブガラシのようなツタ植物が、森の外縁部で藪を形成している。



15分ほどゆっくりと歩いて、西の森に到着した。

振り返ると自宅が確認できる。森に進入するポイントは自宅から真西の位置に生えている一本の大木。

幹が一抱えほどもある大きなクスノキだ。


目印代わりに水糸を幹の目線の高さにぐるりと巻き付け、森に進入する。



森の中はところどころにシダ植物やドクダミが群生している他は、センリョウやマンリョウといった小低木がちらほらと生えている程度で、落ち葉が剥き出しになっている。日光があまり当たらないためだろう。

落ち葉とその下の腐葉土のおかげか、足音も立たず歩きやすい。ただ木の根元は少々滑りやすくなっている。


足元には何か動物の糞がちらほらと落ちている。

丸い粒状のものはウサギかシカ。一か所にかたまっている道端で見かける形のものはタヌキかキツネなどのイヌ科の動物だろう。


とすると……この手のひら大のドロっとしたのは何だ……あまり臭いはないが……


しゃがみ込んでそんな観察ばかりしていると、右のほうから何やら大きな音が近づいてくる。

木を叩くような、鈍い音だ。


とりあえず近くのシダの群落に潜り込んで様子を伺う。

音の発生源が近づいてくる。


シルエットはゴブリンに似ているが、色と大きさが違う。

盛り上がった筋肉を纏った体は赤黒く、身長はゴブリンの3倍弱。こめかみあたりから角が生えている。

でっかいゴブリン……ではない。オーガと呼ぶべきか。


オーガは手に持った棍棒を振り回し、木を打ち叩きながら進んでくる。

腰に巻いた布はゴブリンと同じだ。


さて……どうする。このままやり過ごすか。それともこちらから仕掛けるか。


やり過ごしてしまっていいのか。

ゴブリンでも自宅の柵を軽々と乗り越えてきた。流石にシャッターをこじ開けたり、金属サイディングを変形させることはなかったが、オーガに掛かればどうなるか分からない。

襲撃される前に倒すべきではないのか……


専守防衛を通念とする国で育った身としては、先制攻撃にためらってしまう。

例えば自宅に向かって突進しているなど、明らかに脅威が迫っているなら話は早いのだが……


そうこうしているうちに、オーガは目の前を通過して東に向かい出した。

おいおい、そっちは俺の家の方だぞ……


よし、やろう。

倒せないまでも、BB弾がゴブリン以外にも効果があるのか試さなくてはいけない。

効果がないなら、ゴブリン以外の魔物への備えを別の方法で考えなければならなくなる。


潜り込んでいたシダの群落からゆっくりと這い出して、オーガの後を追う。

オーガの真後ろに回り込み、木の陰から広い背中を狙う。


ああ。この感じ、サバイバルゲームの裏取りに似ている。

G36Cのドットサイト越しに無防備な背中に狙いを付け、オーガが木を叩く瞬間に発砲する。


タタタッツ!


セミオートによる三連射は、僅かな時間差でオーガの背中に吸い込まれた。


オーガの動きが止まる。

しまった……効果なしか……ドットサイトから目を放し、目視で確認しながら逃げ出す態勢に入る。


次の瞬間、オーガの膝が崩れ、前のめりに倒れた。


よかった。どうやらオーガにもBB弾は効くらしい。


G36Cをフルオートにして構えたまま、倒れたオーガに慎重に近づく。

うつ伏せに倒れたオーガの胸の辺りから、血が流れだしている。

背中に開いた射入口は3つ。だいたい5ミリ弱の穴で逆三角形を構成している。だが血が流れ出しているのはこの穴ではない。

とすると貫通したのか。胸の方に射出口がなければ、胸の辺りから血が流れるわけがない。


慎重にオーガの身体をひっくり返す。身長はゴブリンの3倍弱、人間でいうと180㎝強といったところか。俺より少し大きい。ただし体重はもっと重そうだ。


オーガの胸の辺りには、逆三角形の形に大きな穴が開いていた。


まるで体内でBB弾が爆発したかのようだ。吹き飛ばしたのはちょうど脊椎と心臓の辺り。

これでは流石のオーガも即死だろう。


このオーガも腰に袋をぶら下げている。他にも腕輪やら首輪やら付けているが、ちょっと回収は大変そうだ。袋だけ回収する。袋の中身は硬貨と何かの骨、それに色とりどりの石だった。


オーガの亡骸はそのままにする。どうやら生き返ったりアンデッドになることはないようだ。

腐敗する前にゴブリンの亡骸のように野生動物が始末してくれるだろう。


とりあえずミステリーサークルに向けて移動を再開する。


しばらくして、右手方向から視界が開けて、木が生えていない空間に出た。

半径50メートルほどの円径に木が何も生えておらず、丈が短い草が辺りを覆っている。

自宅からまっすぐ西に向かって歩いているつもりだったが、知らず知らずのうちに左方向にずれていたようだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「この3日間は快晴続きだ。そろそろ雨が降らないと、畑や田の水が心配だ」 魔法では、十分な量の水を出せないのかな。
[一言] もっと先まで読めば出てくるかもしれませんが、BB弾の 補充はどうするのでしょうか?疑問です。
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