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13.洞窟を再調査する②(5月2日)

発見した二人の回復を待つ時間が惜しい。


「アリシア。自分達の周りに先程の結界防壁を張ることはできるか?光魔法との併用になるが」


「大丈夫です。もともと私は支援魔法の方が得意ですから!」


「では結界防壁を張ってくれ。俺はもう少し先に行く」


「分かりました!お気をつけて!」


アリシアが自分達の周囲にドーム状の結界防壁を展開させたのを確認して、俺は単独行動に移る。

水糸の長さは残り100メートルほど。この長さが行動限界だ。


地下牢エリアの突き当たりに、また幅1メートルほどの通路があった。

アリシアの光魔法の灯りも届かず、真っ暗な通路をヘッドライトとフラッシュライトを頼りに進む。


3メートルほどで通路が終わり、また部屋に出た。

高さ2メートルほど、一辺の長さが5メートルほどのほぼ正方形の部屋の中心部に、武器やら防具やらが無造作に積まれているのがヘッドライトの光に照らされる。

とりあえず壁に沿ってぐるっと一周するが、どうやらここが行き止まりのようだ。


あとは、中心部に積まれた武器などの調査だが……恐らく価値のある武器や防具もあるのだろうが、俺にはさっぱりわからない。それになにせ暗い。


全部収納するか。


背負っていたミリタリーリュックを下ろし、リュックの口を開けて次々と放り込んでいく。

途中から手に触れるだけで収納されていくことに気づき、思いのほか捗る。


ものの数分で雑多な山の収納を終え、改めて室内をチェックする。

前室にあったような真っ黒な魔石などは見当たらない。


よし、戻ろう。


また狭い通路を抜けて、アリシア達が待つ地下牢エリアに戻る。


まだ二人の意識は戻らないようだ。


「おかえりなさいカズヤさん!奥はどうでしたか?」

アリシアが尋ねてくる。


「ああ。手前の部屋と同じような部屋があって、武器や防具が積まれていた。全て回収したから、後で検分してくれ」


「了解です!でも収納魔法ってほんとに便利ですよね……その魔法が使えることは、あまり大っぴらにしないほうがいいですよ?」


「わかった。その二人はどうだ?」


「はい……呼吸は安定したんですが、まだ目を覚ます気配はないです」


「そうか。それなら一旦洞窟を出よう。いつまでもここで回復を待つわけにはいかないし、洞窟の入口を閉じてしまいたいからな」


「え……閉じてしまうんですか?先ほどの遺体の身元確認とか埋葬とか……まだやらなければならないことがたくさんありますが……」


「そうだな。だが、助かりそうな二人の命のほうが大事なんじゃないか?埋まった入口はまた掘り出せばいいし、身元の確認ならさっき回収してきた武器や防具なんかではダメだろうか」


「わかりました。でも必ずきちんと埋葬しましょうね!戻りもまたカズヤさんの転移魔法ですか?」


「そうだな……なあ、魔法って一日の回数制限とか無いのか?」


「それは大丈夫だと思います!あまり大規模な魔法を行使すると、一回で魔力が枯渇するなんてこともありますが、普通は魔力が続く限り何度でも魔法は使えるものです。ただ、特定の魔法が使えなかったり、効果が薄くなる場所があるので気を付けないといけません」


そういうものか。

とりあえず転移魔法を使ってみる。


特に支障なく扉は開いた。


先に扉を抜け、周囲の安全を確認する。

一旦洞窟に戻り、まだ意識の戻らない二人を一人ずつ抱きかかえて洞窟から連れ出した。

洞窟の入口に埋めたペグを抜き、水糸を全力でリールに巻き取る。

特に引っかかることもなく、無事に回収できた。


「じゃあ洞窟の入口を塞ぐぞ」


「はい。でもどうやって??」

アリシアの疑問ももっともだ。


俺は洞窟の入口がある大岩の前に立ち、念じる。


“よっこいしょ”


次の瞬間、大岩が崩れ落ち、洞窟の入口を埋め尽くした。


その光景をアリシアが呆然と見ていた。


「さて……じゃあ家に帰ろうか」


「はい!」



意識を失ったままの2人を抱きかかえて扉を通り、自宅の敷地内へと戻る。

結界防壁の内側にも直接入れてしまうようだ。確かにこの魔法は便利だが、使い方を間違えれば脅威だ。


玄関先でアリシアが深刻そうな顔で話しかけてきた。

「あの!カズヤさん、申し訳ないのですが、お庭で野宿させていただいてもよろしいですか?」


「ん?野宿?この雨の中をなぜ??」


「はい…実は……」


アリシアの語るところによれば、洞窟などの魔物の支配領域の中で意識を失ったまま発見された者は、使役魔法の影響下にある危険性があるらしい。


確かに、人間に使役魔法が発現しにくい理由は意思があるからと説明されていた。


意思が破壊されるような状況下では、その危険を考慮しなければならないというのは事実だったか。



「野宿は構わないが……ガレージを使うか」


「ガレージ?って何です?」


とりあえずガレージの後方のドアを開け、中に入る。

ガレージは車2台を収容するスペースがあるが、今停車しているのは俺の車のみ。

女の子3人が寝るには十分だろう。


アリシアにも手伝ってもらい、エアマットを3つ膨らませ、その上に毛布を敷いてからアイダとイザベルを寝かせる。


アリシアが2人の泥に汚れた頬を交互に撫でている。


「よかった……もう会えないと思ってた……」


俺はガレージをそっと出て、湯を張った洗面器とタオルを持って来た。


ガレージに戻った俺の持ち物を見て、何をしようとしているかアリシアは理解してくれた。


2人の間に洗面器を置き、濡らしたタオルで顔を拭いていく。


「カズヤさん……この2人にまた会えたのは、カズヤさんのおかげです。このご恩は一生忘れません」


「いや、アリシアがすぐにでも再調査に行きたいと言わなければ、この子達も生きては見つからなかったかもしれない。助け出せてよかったな」


「でも私は魔法勝負なんて挑んでしまって……あの時間がなかったら、もっと早く2人を助け出せたかもしれないのに……」


「それを悔やんでも仕方ないだろう?今は2人を救えたことに胸を張れ」


「そうですね……」


「そういえば、俺ばっかり質問していたけど、アリシアから俺に聞きたいことはないのか?」


俺の疑問を聞いて、アリシアが泣き笑いのような笑顔でこちらを見る。


「聞きたいこと……ですか……。たくさんありすぎて頭がおかしくなりそうです……この見た事もない素材のマットは何ですか?この鉄の塊は?この石の家は?どうしてお湯が雨のように降るんですか?寝室にある見た事もない文字の本は何ですか?この服は?この靴は?あの光る魔道具は?あの小鬼を一瞬で倒した武器は?どうして魔力も魔法も知らなかったのに、私の魔力を回復できたんですか?どうして黒の魔石に触れて平気なんですか?どうしてたくさんの魔法が使えるんですか……これは何?あれは何?……どうして……どうして……聞きたいことばかりです。カズヤさん。あなたは何者なんですか?」


「そうか。そうだよな……俺が聞きたいことばかり聞いてすまなかった。アリシア。俺の話を聞いてくれるか?実はな……」


そうして俺は、アリシアと出会う前に起きたことを全てアリシアに語った。

アリシアはアイダとイザベルの頬を撫でながら、時には頷き、俺の話を聞いてくれた。


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