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11.この世界について② 魔法(5月2日)

ではいよいよ魔法についての解説だ。


「さっきのカサドールと魔素の説明で魔法の種類や名称がちらっと出てきたが、詳細を教えてくれ」


「はい!その辺りは私の専門分野ですから張り切って教えちゃいます!」


アリシアが張り切って教えてくれた魔法の種類と発現は次のようなものだった。


1.攻撃魔法

その名の通り敵を攻撃するために用いる魔法。

四大元素に基づいており、大別すると次の四つ。

・火系

文字通り火炎や高熱を発現する。


・水系

水流や氷の礫を発現する。


・風系

強風や真空の刃を発現する。


・土系

石礫や岩石を発現する。


この四大元素による魔法の発現は、自然現象に準じている。

火系の魔法発現時に水系の魔法をぶつければ、火系の魔法によって発現した炎は消すことができる。

同様に、火系の魔法に風系の魔法を伴わせると発現範囲を増大させることができるし、水系や土系の魔法で発現させた氷や石の礫を、風系の魔法でより遠くに移動させることもできる。


2.防御魔法

魔法を防御的に発現させる場合の名称。

・火系

炎の壁で敵の侵入や逃走を阻止する。


・水系

水や氷の壁を形成する。


・風系

強風による防壁を形成したり、物理的な壁に囲まれた室内の大気組成を変更し、窒息させるような使い方も可能。

索敵魔法も広義の意味で風魔法に分類される。


・土系

土壁や岩の壁を形成する。


防御魔法はとにかく壁だな。

この防御魔法を盾のように展開するだけでなく、例えば籠手や通常素材の盾に付与することで耐魔法性を向上させるような使い方も可能らしい。


3.特殊魔法

四大元素に基づかない発現をする魔法。

・光魔法

四大元素ではなく五大元素に数えられるため、特殊魔法に分類される。


簡易な提灯のような灯りを灯すものから、不死者アンデッドを浄化する光まで様々な効果が一括(ひとくく)りに光魔法と呼ばれる。


・治癒魔法

人間やその他の生物の自然治癒力を活性化させることで、治療を行う。


あくまでも治癒であり、完全に死亡した場合の復活は不可能。


初心者による治癒魔法では外傷を塞ぐ程度の効果しか望めないが、熟練者の治癒魔法は疾患の治療も可能。

この違いは習得レベルの違いではなく、どれだけ具体的に発現効果を指定できるかにかかっている。


つまり、外傷を塞ぐだけなら傷口だけを見ればいいが、傷口の下の例えば複雑骨折を治癒するには骨格構造を知り、その正しい位置を指定しなければならない。


・自己暗示系魔法

鎮静魔法や能力強化魔法が該当する。

自分や他者の脳内リミッターを強制的に解除し、苦痛を感じにくくしたり、普段以上の能力を発揮させる。


この“普段以上の能力を発揮”というのがクセモノで、発現後は異常に疲れやすくなる副作用が出るらしい。


・使役魔法

これは自己暗示系魔法を他者、特に家畜や使役動物に掛けた場合を指す。

一般に人間には使役魔法は効果が無いとされているが、理由は“人間は自らの意思があるから”というものだ。


とすると、例えば自分の意思を破壊されるような状況に追い込まれると使役魔法が効いてしまいそうな気がする。

気を付けよう。


・感知魔法

行使された魔法の種類や強度を調べる魔法。

戦闘中よりも戦闘終結後や魔法の影響力を解除する際に用いられる。


・収納魔法

俗にいうマジックバックのような収納力を付与する魔法。

商人や軍の兵站担当者に重宝がられる魔法だが、行使できるのはかなり限られた術者だけらしい。


ちなみにレベルの高い収納魔法は、一度付与した容器やバックそのものを魔道具にしてしまうため、その効果は半永久的になるようだ。


・移動魔法

狭義には単にA地点からB地点に高速で移動する魔法だが、広義にはA地点とB地点の間の転移系の魔法も含まれる。


この魔法も商人や兵站担当者に重宝がられそうだが、現在確認されている使い手は皆無とのことだ。

記録に残っている事と発現できれば極めて有益なため、教育課程では必ずこの項目に触れることになっている。


要するに某ネコ型ロボットが取り出す“どこでもドア”だ。


・復活魔法

これも今となっては記録に残っているのみ。


その他にも固有魔法と呼ばれる、各個人特有の発現の仕方をする魔法があるらしい。

しかし誰がどんな魔法を使えるか詮索するのは重要なマナー違反とのことだ。

まあ、いざというときの自分の手の内を明かすようなものだから、仕方ないのだろう。


ここまでつらつらと魔法の種類について解説を受けたが、要は魔法の行使による効果の発現とは、術者がどれだけ具体的にイメージできたかによって左右される。

より具体的にイメージするために、初心者や不慣れな系統の魔法を使う場合は詠唱を行う。

イメージ出来さえすればいいのだから、詠唱には決まった文言があるわけではなく、人それぞれらしい。


「例えばです!ちょっと炎の魔法を行使してみますね!」

アリシアが実演するというので、2階のベランダに移動した。


「炎の神ヘファイストスよ!我が求めに応じて炎を顕現させよ!我が指先から迸るは炎の奔流!Lanza de fuego!」


アリシアが勢いよく人差し指を突き出すと、指先から炎がスルスルと5メートルほども勢いよく伸びて消えた。

なるほど。炎の槍か。奔流と言うには少々細すぎるような気もするが。

というか詠唱が恥ずかしすぎる。これでもアリシアは抑え気味な詠唱を心掛けているらしい。

抑えていない詠唱を使うヤツってどんな顔で詠唱するのか見てみたい……。


「どうですか!?すごいでしょう!」


アリシアがそれなりに豊かな胸を揺らしながら偉そうに胸を張る。

お前ノーブラTシャツなの忘れないでな。


「カズヤさんもやってみてください!ちゃんと教えますから!治癒魔法ではびっくりしましたけど、それ以外の魔法では負けませんよ!」


ではお言葉に甘えてやってみよう。もちろん恥ずかしいから詠唱は無しだ。


指先を伸ばしイメージするのはゴブリンの亡骸を火葬した時と同じ高温の青い炎。直径5㎝、到達距離5メートル。燃焼時間3秒。


“ふぁいや”


次の瞬間、指先から5メートル先までの空間を青白い炎の棒が貫いた。


アリシアが呆気にとられた顔で見ている。


「え……え……ええええええ!何ですか今の!今の青い光が炎ですか!!」


「まあ……ゴブリンの亡骸を焼き尽くしたのと同じだから、炎だと思うぞ?」


「そんな……よし!わかりました!こうなったら私も意地があります!四大元素を使った魔法勝負です!」


こうして、魔法の実演がなぜか魔法勝負になった。


結論だけを言うと、アリシアの惨敗だった。


「はあ……はあ……魔力切れよ…………カズヤさん何で平気な顔していられるの。どんな魔力量なのよ……」


魔力量ね……ゴブリン達を葬った日は恐らく魔力切れと思われる症状を起こしたのだが、今日は元気いっぱいだ。


「それに四大魔法全てを攻撃から防御までやってのけるなんて……カズヤさん収納魔法や転移魔法まで使えるなんて言わないですよね……」


それな……使えれば極めて便利だ。


収納魔法か。要は某ネコ型ロボットの“四次元ポケット”だろう。


とりあえず手ごろなバックが無いので、一階に降りてミリタリーリュックを手に取る。


リュックの口を開き、四次元ポケットをイメージしながらG36Vをリュックの中に投入する。

リュックの長さは60㎝、一方でG36Vの長さは1メートル弱。絶対に先端が飛び出す……はずが、そのまますっぽりと入ってしまう。


慌てて取り出そうとすると、普通に出てくる。

リュックに戻すと、すっぽりと入ってしまう。


他のエアガンやBB弾の袋を放り込んでいくが、何の支障もなく収納されてしまう。

そして収納された物の重量も感じない。


「これは……収納魔法です……」


そうか……これが収納魔法か。なかなか便利だ。

そう言えば洞窟に向かう時に妙にリュックが軽かったが、その時には既に発動していたか。


次は転移魔法だな。これも某ネコ型ロボットの“どこでもドア”をイメージしながら、何もない空間のドアノブを回す。

見えない扉を引いて開けたその先は……2階のベランダだった。


アリシアの手を引いて扉を通り、2階のベランダに出る。

扉を通った先で、アリシアが崩れ落ちた。


「ちょっと待ってください……混乱して……え?今のは転移魔法?まさかそんな……伝説でしかないと思っていたのに……!!」


どうやら転移魔法の発現に成功したらしい

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