90 部隊編成
あれからリベアムールとの話が終わり、急いで宿屋へと帰るころにはもう夕方になっていた。
竜人のバザーは夕方で閉まるため、門をくぐった先の屋台のキャンプが閉まっており、竜人たちが後片付けをしている様子があった。
俺は竜人たちに軽く挨拶を交わすといつも通り明るく返してくれる。
因みに竜人たちの寝床はキャンプの中らしく、止めてやりたい気持ちはあるものの如何せんお客がいるため宿泊部屋を人数分提供するのは難しいらしい。
ただし、ノイだけは部屋を用意できたので竜人たちもそれに感謝していた。
今度はしっかり人数分宿泊できる場所を作りたいとか考えながら馬を馬小屋においてから宿屋に入って行く。
宿屋に戻るとエルマさんが受付で出迎えてくれる。
「おかえりなさいケルトちゃん♪ どうだったお城では?」
「ただいまです! ちゃんとお礼を言ってきました! あと、新しいお仕事も同時に出ちゃいました……」
「あら~~今度はどこに行くのかしら?」
「セカン地方のハイエロストンと言うところです」
「ハイエロストン!? そんな遠くまで?」
エルマさんはハイエロストンの名を聞くと口に手を当てるほど驚いた様子だった。
「なんか、また重大な仕事を任されちゃって……あはは……」
俺は愛想笑いをしながら頭を掻く。我ながらおっさんみたいな行動だ。
「出発はいつかしら?」
「準備ができたらその翌日にでも出発します。今回は全員ではなく人数制限があるのでみんなで誰が行くか話し合いたいと思います」
「そう、なら出発までに私の腕によりをかけたお料理をみんなに振るわなきゃね♪ それと、久しぶりにまた占ってあげるから夜、私のところに来てね♪」
「ありがとうございます。助かります!」
エルマはウィンクしてから軽い足取りで厨房へと入っていた。俺はそれを見届けた後、自分の部屋へと荷物を置きに向かう最中、階段の踊り場でアマと出会う。
「あ、ケルト」
「ただいま!」
「どうだった?」
「うん、また仕事の話来ちゃった。今回は結構重要な仕事」
「ふーーん、次はどこ?」
「魔導国家ハイエロストンってとこに行くみた……」
「魔導!?」
俺の話を遮り、身を乗り出して反応を示した。多分『魔導』と言う言葉に反応したのだろう。
アマは魔法的な概念が確か好きなタイプの人間だったのを忘れていた。
「う、うん」
「詳しく話を」
「それなんだけど、いつもとレギュレーションが違うから仕事の詳細はみんなを集めてからにしようと思って……」
「じゃあみんな集めてくる」
そう言って、いつもとは打って変わって足早にみんなを呼びに行ってしまった。
いつもマイペースでまったり生きている奴だけどこういう時はやる気になるもんなぁ……
俺はやれやれと思いながら自室に戻って荷物を置く。そして数分ほどたって1階の休憩ルームにもう仲間全員が集まっていた。
みんな早すぎじゃないか?
「おかえりケルト、新しい仕事がまた入ったんだって?」
ユシリズが自分の焔の拳を手入れしながら座っている。
「なんや、今回はえらい重大とかゆうてたらしいやん?」
「うん、今回の仕事はまた別地方に向かっての仕事です。場所はここから北東にあるセカン地方と言う場所にある魔導国家ハイエロストンの神様とある契約を結びに行くようです」
「「「「「契約?」」」」」
5人が同じ反応を示してくれたのでこのまま契約の内容、六地方の協力契約を結ぶことを説明した。
「まぁ、つまり取引先に営業に行くようなものか」
相変わらずガクトの例は分かりやすい。
「そんな感じ。しかも今日は何と人数制限があります。相手の神様が大人数が嫌いみたいで3人くらいで迎えとのことです」
「ええ!? それってとうとうパーティ編成をしろってこと?」
そう、ユウビスの言う通りでこれがいつもと違う仕事のレギュレーション、『部隊限定依頼』だ。しかも、3人と言う少人数だからある程度役割を考えて仕事に向かわなくてはいけない。
「3人だろ? まず、1人はケルト確定だから残り2人。ケルトができないことができる奴が優先していくべきだ」
ガクトの言うことは正しい。RPGとかでも勇者が器用貧乏なのでそれを補う者たちを編成して向かうのがふつうである。
「ケルトができないこと……?」
「「「「「……」」」」」
ユウビスの言葉に全員が沈黙する。
「いや、ケルトちゃん何でもできるやん」
「ケルトだけで行っても大丈夫そうだぜ」
いやいや、ダン、ユシリズ!! それは違う!! 俺にもできない(作ってない)スキルはある!!
しかも、1人だと心細いんだよ!!
「じゃあ、俺行く」
そう言って一人手を挙げたのはアマだった。
「みんな、行かないなら俺行く。てか行きたい」
明らかに目が星のようにきらきらとか輝いている。よっぽど行きたいんだな。
「まぁ俺は止めねぇけどよ、もう一枠どうする? アマは遠距離、シューターだな。ケルトはほぼオールマイティ。もう一人どうすっか?」
「うーーん、俺とユシリズのような白兵戦向きのアタッカーでもいい気がするが、ユウビスやダンのような後方支援のサポーターでも全然いい」
「うーーん、でもぶっちゃけケルトちゃん白兵もできるんやからアナライズできるわしか時止めのユウビスになるんちゃう?」
「「「「うーーん」」」」
俺とアマ以外の4人が意外と真剣に悩んでいる。確かにここまでの話からまとめるとダンかユウビスになっちゃうのか。
確かに俺も戦うことはできなくはないけど瞬間火力とか盾役となると俺は紙装甲だし……
そう考えていると、宿屋内で鐘の音が鳴る。
「みなさーーん!! お夕飯できましたよーー!!」
これはお客と俺たちに夕飯を知らせるエルマさんの合図だった。もうそろそろ夕食の時間になるから夕食が終わってからでもと思ったのだが、
「じゃんけんで良いじゃん」
アマがの一言で全員が「じゃあそれで」と承諾する。 最後軽くね?
アマの鶴の一声で決まったじゃんけん大会が始まり、4人の中から一人が決まる運命の一声が言い放たれた。
「「「「じゃんけんぽーーん!!!!」」」」
最後まで読んで頂きありがとうございます(。-_-。)ペコッ
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