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女体化転生から始まる異世界新(神)生活〜TSした元男子大学生、第二の人生はチート能力【創造者】を手にして神の元で働く傍らでいつの間にか『神』扱いされる〜  作者: 霞杏檎
4章 黄燐ノ竜編

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63 黄燐竜ファンロン

 金の玉は光を発しながら話を進める。声がまるで頭の中に入ってくるかのように感じられる。


「慌てるでない人の子よ。長い間、寝ておったがあの客人を連れて現れるとは珍しきこと……汝、名は何と申す?」


「あの……えっと……私、ケルト=シグムンドって言います。神の代行人をしています」


 ケルトは困惑しながら、手に玉を持ち、玉に向けて会話を続ける。


「ケルト……どこかで聞いたことのある名だ。何だか懐かしき面影を感じる」


「色々驚いてて、全然考えがまとまらないんだけど……貴方がグルグル?」


「グルグル? ああ……あの神子が我を呼ぶ名か……我には気高き名前があるのだが……まあ良い……ケルトよ、神の代行とやらをやってると言ったな。その神とは何者だ?」


「私たちを神の代行人として決めたのはリベアムールさんです。この地方の中央にあるワンス地方ってところの神様みたいです。今回、私たちは貴方と一緒にいたアミュラという女の子に貴方の元に連れて行くことと濡れ衣を晴すために来ました」


「つまり……ぬしらがリベアムールの代わりに値する人の子という訳か? 面白い。ふむ……」


 声の主は少し、間を開けて何かを考えた後にまた口を開く。


「考えても仕方あるまい。あいにく時間も限られている。神子をここまで連れてきてくれたのだ、ぬしらを信じるしかあるまい。ケルトと言ったな? 良く聞くが良い。今、ここサーティ地方の民に大きな災いが降りかかろうとしている」


「災い?」


「汝、黒龍の存在は存じておるか?」


「黒龍……あ、あの時、関所で私たちを襲って来た龍のことかも」


 黒龍と言えば関所での出来事を真っ先に思い出した。黒い鱗に覆われ……大きくゴツゴツとした羽を翻して俺たちの事を襲ったあの正体不明の龍……


「まさに、汝が見たその龍こそこの地を脅かす災い。そして我が故郷マダンの里を焼き、罪の無い民を殺し、神子の血を狙おうとする者なり。私は神子を守るべく、深い眠りから目覚め、災いを追い払った。しかし、まるで大きな嵐が来たかのように里は跡形も無く破壊され、竜人の民達は命を失った。神子様を除いては……」


 頭に響き聞こえる声はどこか悔しげな、悔いのあるような様子を見せる。


「その生き残った神子ってもしかして、アミュラの事?」


「如何にも。あの小娘は竜人を守りし竜を司る選ばれた血を持つ者……すなわち神子。その血に宿されし力は天よりも大いなる存在である竜ですらもたぎらせ、力を与える。このマダンの里はそのような者が生まれる神聖な場所であり、私はその里と神子と竜人の守護竜なのである。だが……守れなかった。私が神子の思念により眠りから覚めたときにはもう遅かったといった方が良い……そして、我が能力を持って挑んだが倒すことはできなかった……己の力量の無さが悔やまれる」


 玉から発せられる声は顔を見ているはずもないのにその言葉には重い責任がのしかかっていようだった。


「悔やむのはまだ早いよ」


「何?」


「里は間に合わなかった。これってさ、もう仕方のない事だったんだよ。貴方も寝てたんだし、しょうがなかった。でも、それでも貴方はアミュラの事は守れてる。そして、これからも守っていかなきゃいけない。里が守れなかったって悔やまないで今目の前にある守らなきゃいけない人を失った物の分まで守ってあげれば良いと私は思う」


「……」


 金の玉は発光させたまま、少しの間無言になる。俺も確かにこの竜が置かれている状況、責任の数々を1人いや、1匹で背負っている。この竜もアミュラと一緒、抱えすぎなのだ。1人で全てを抱えることがどれだけ苦しいことなのか俺は知っている。


「ケルト、やはり我はぬしの事を気に入りそうだ」


「本当? それは良かった♪」


 少し、竜の声質が柔らかくなり、緊張が解けているのが分かる。俺はその様子から笑顔になった。


「じゃが……初めてぬしらと対面したときは驚かされたぞ? 青い空から雷鳴が鳴り響き、我に落ちたのだからな?」


 雷鳴って事はアマの能力か……俺たちが初めて竜を見たのはガクトがアミュラを拾った日のこと。あの時は普通に考えて、襲われる少女と食い殺そうとする竜にしか見えなかったからしょうがないよね。


「あの時はごめんね、私たちの早とちりで追い払っちゃって……」


「はっはっは、構わん。汝らの行った行為は人間としては当たり前なのだ。こちらも我が神子を守るのに必死だった故、汝の仲間に傷を付けてしまった。我が身をもって謝罪する」


「あいつの事なら大丈夫だよ。それにしてもグルグルさんって喋れるんですね」


「我は口では喋ることができん。故に風を操るこの力を使い、振動と波を操っている。それが耳に届く事によって会話を成立させてあるのだ」


「そんなこともできるんだなー、と言うかグルグルも能力とか持ってるんだねー?」


「うぅむ……ケルト、我をグルグルとかそのような安易な名前で呼ぶのはやめるのだ。我には誇り高き竜としての名前がある。どれ、ケルト。我を持って外に出るのだ」


「どうしたの?」


「ぬしに見せたいものがある」


 そう言われたので、俺は優しく両手で玉を持ち、家の外へと出た。外はもう薄暗くなってきており、この時間ならそろそろアミュラ達も戻って来る時間帯であろう。


「ケルト、我を投げよ」


「えぇ!? なんで!?」


「構わん、大きく天に届かんとする程高く投げるのだ!」


「何か分からないけど、分かった!」


 俺は玉を片手で持つとメジャーリーガー張りの投球の構えを取り、そのまま大きく振りかぶり、足を上げ、全力で山なりに玉を投げた。


「グルグル! 君に決めた!!」


 投げられた玉は空中で大きく光り出し、一瞬だけ辺りは白い光に包まれる。あまりの眩しさに咄嗟に顔を両腕で覆い隠す。


 ヴォアアアアアアアアアア!!!!!!


 何かが爆発したかのような激しい雄叫びが耳を劈き、辺りの焼き爛れた木片が飛び散り払われる。衝撃によって砂煙も巻き上がり、細かい砂が身体に当たってくる。前を見たくとも見られない、そんな状態が2分ほど経つとぴったりとあの嵐のような激しさは収まった。俺はゆっくりと腕を開き、前を向く。


「ケルトよ、これが我の本当の姿である!!」


 そこに居たのは、竜だった。しかし、ただの竜では無い。全体を覆っている鱗は爪の先、羽の隅まで薄暗いこの地が明るく照らせる程黄金に輝き、羽は一振りで木々を吹き飛ばしてしまうかの大きな大羽、全てを噛み砕くかのような大きな顔に付いた大牙、それを総評して黄金の巨竜である。


「改めて名乗ろう!! 我の名は黄燐竜ファンロン!! 我が気高き姿、しかと目に焼き付けよ!!!!」


 ヴォアオオオオオオオオオ!!!!


 ファンロンは羽を大きく広げ、天に向かってまた一鳴きして見せる。その姿は本当に美しく、一つの芸術を見るように見とれてしまっていた。


「綺麗だ……」


 そう一言しか言葉が出なかった。こんな神秘的なことは生前の世界ではあるわけが無かったのだから驚くに決まっている。


「あ! グルグル元に戻ったんだ。ケルト、ただいま」


 後ろから急に声がして、振り返ってみるとアミュラとみんなが腕いっぱいにお芋を持っていた。どうやら今帰って来たのだろう。


「うわっ!? こいつもしかしてさっきの玉の中の奴か!? でかっ!!」


 ユシリズが俺の前にいる竜を見て、両手に持っていた芋を落とすほど驚いていた。


「一回見てるけど、全然姿が違ったからこっちの方が迫力あるな」


 アマはのんびりとその竜を見上げる。


「うわーー……おっかないなぁ……」


 ユウビスは少しおびえた様子で見ている。


「淒いぃ!! かっこいいやん!! あ、情報出た。みんなに一応送っとこ」


 ダンがちゃっかりファンロンを解析できたらしく、俺たちに情報が送られる。

てか、みんな肝据わり過ぎじゃないですか!?


≪メッセージを1件受信しました≫

 Name:”黄燐竜” ファンロン

 種別:竜

 スペシャルスペック:【竜王バハムート


 所持スキル

 特殊ユニークスキル:(スペシャルスペック限定)【千変万化の擬態(インフィニティコード)】【自己再生】

 基本ベーシックスキル:【風支配】

 耐性レジスト:【基本属性耐性】

 常時パッシブ:【言語:汎用魔族語】【言語:ローハンド語】

 EXスキル:【神子の加護】




「え……嘘?」


 これは驚いた……人間以外にもスペシャルスペックを所持する事ができるなんて。ますます、スペシャルスペックの定義が分からなくなってきた。でも、能力所有者の例外とは言え、かなり頼もしい戦力だ。


「ケルト、どうかした?」


「う……ううん、何でもないよアミュラ」


「そう。じゃあ、夕食のお芋さんを作るから皮むきしよ」


「うん、そうだね! 皮むきなら任せて」


 多分、スキル【剥ぎ取り:極】を応用すればなんとかいけるかも? さて、お腹空いたし準備しようか。そう思い、山盛りに積まれた芋の山の前に座り、鞄から

 小型ナイフを取り出す。さて、剥き始めるか……と思ったその時、ダンが俺の肩を叩き、話しかけてきた。


「なあ、ケルトちゃん。さっきからあの倒壊した家のがれきの山の角から何かしらの反応があんねんけど、ほらそこの角」


「反応?」


 指さされた山の方を見る。ぱっと見、特に何もいる様子は無い。


「しょうがないなぁ~~私が見てくるよ」


「頼むでーー!! 何か変なのいたらきいつけや!!」


 そう言ってゆっくり近づいてそのがれきの裏を覗いた。しかし、そこには特に誰も居る様子は無い。しかし、よく見ると薄く足跡が見える。その足跡をたどっていくとがれきの中へと続いていた。そこをのぞき込むと竜人族の青髪の男の子がダンゴムシのように丸くなっていた。


「君……ここで何してるの?」

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