53 関所
早朝から北へと馬を走らせてからかれこれ2時間ほど経った。モリカを通り越してからは同じ地方であるのにまるで新鮮な感じがする。平原を走り抜ける動物たちはいつも通りなのに、新しい場所を開拓していると思うだけで俺たちの心はワクワクしていたのだ。
勿論、何かあるといけないので四方から攻撃に対処できる態勢で馬を走らせている。真ん中にはアミュラとガクトの乗った馬を配置させた。俺は先頭でシステムのマップを見ながら仲間達の引率をしている。そろそろサーティ地方とワンス地方の境目にある<<関所>>にたどり着くところである。
周りの注意をしつつ、馬を走らせていると向こうに木製の大扉がついた大きな石壁が見えてくる。隅には門前を見張るための高台が付いており、壁や高台には松明の灯りが目印として付いているのが見える。
「あ! 着いた着いた! みんな! 関所に来たよ!」
俺の言葉に気づいたガクトがアミュラに変装用の頭巾を被せる。見張りにはサーティ地方の竜人もいるかも知れないので一応カムフラージュとしてかぶってもらうことにしている。
俺たちは馬の速度を落としながら関所の門へと近づいて行くと高台の見張りの1人が階段から降りて、こちらの方に向かってきた。
「ここで止まりなさい。あんたらはワンス地方の人族か。サーティ地方に一体何のようだ?」
大きな尻尾と頭に独特な角、肌には少し黒緑の鱗が付いた雄の竜人が軽装備な革の鎧と腰にショートソードを挿して近づいて来た。
「はい! 私たちこの世界で冒険をしていまして、サーティ地方の美味しいものとか魔物狩りとかしたくて来たんですよ! キャハ☆」
「おえっ……」
おい、誰だ今後ろで嗚咽したやつ。後でしばくからな。……ユシリズだな、よししばく。
「しかし、あんたのような女の子が冒険なんてするんか? 冒険はごっこ遊びじゃない」
「私〜〜こんなに強いんですよぉーーほらーー♪」
そう言って俺は後ろに右手を出して、風を圧縮した小さい空気砲をユシリズに打ち込む。ユシリズはそれをギリギリ回避するが、頰には掠った後の切り傷がつけられていた。
「ご……ごめんなさい」
よろしい♪
「どう? 力は本物よ。この後ろにいる仲間もかなりの凄腕だから冒険するのに問題なんて何もないわ」
「ほぅ……わかった。あんたらを入れる事を許可する。おい! 門をあけろ!」
竜人兵が手で合図を出すと大扉が開き出す。
門の先はワンス地方の様な自然豊かな感じはなく、最小限の緑に砂漠のようなサラサラとした土質の大地が広がっていた。
更に遠くを眺めればゴツゴツとした標高の高い山々が多く並べられており、空には鳥ではなく翼の生えた爬虫類、翼竜が飛んでいる。
「わぁ〜〜同じ島なのにまるで別世界ね」
「お嬢ちゃんたちこの地が初めてならいくつか教えておくことがある。3つだ。1つ目はここの地域の魔物はここよりも凶暴で肉食が多い。
油断すればすぐに餌になっちまうからな。2つ目は困ったらこの地の中心<<竜人国家 ガラクリオット>>に向かうと良い。色々揃ってる。
そして、3つ目は……まぁ、最近この地で魔物によってある村が襲われたって話があるんだが、その張本人である子供と竜が逃げ出したって言われてる。あんたらも何されるかわからねぇからよ、もし見かけたら直ぐに報告してくれ」
「それは物騒ですねぇーーわっかりましたーー」
俺が話を適当にあしらってる頃、ガクトは後ろのアミュラの様子を見る。アミュラは自分がお尋ね者になっている恐怖心からガクトの服を掴む手に力が入っており、少し体が震えていた。
その様子を見たガクトはアミュラの背中を優しく撫でてやる。不安を和らげる不器用ガクトのできる唯一の慰めだった。
「じゃあ、私たちは急いでるから行きます! 竜人のおじちゃんありがとねーー!!」
早めにこの場から抜け出したかった俺たちは早々とその場を出ようとしたその時、進む先の空が急に暗くなった。俺たちは上を見上げると石壁には羽を大きく広げた巨大な黒龍がそこにいたのだ。
「ド、ドラゴンだぁーー!!!!」
竜人兵が尻餅をついて大声を上げる。
「ゴギャアアアアアアーーーー!!!!」
黒龍は俺たちに向かって雄叫びをあげると雄叫びに揺られた風が暴風となって俺たち向かって襲いかかる。その拍子にアミュラの頭巾が風に飛ばされ、顔があらわになってしまう。
「ケルト! このまま突っ切るぞ!」
ガクトが先導して門に向かって馬を走らせる。兵士たちは突然現れた黒龍の方に集中しているためアミュラの方に目線が来てない間に中に入る作戦だ。
俺たちもガクトに続いて馬を走らせる。兵士たちが弓矢を黒龍に放つもまるでダメージが通っているようには見えない。黒龍は攻撃を仕掛けて来た兵士たち……ではなく、門の方へ向かう俺たちの方に敵意を向けていた。黒龍は口にエネルギーを貯めると黒白い炎を吐く。攻撃は先頭のガクトに向かっていく。
<<発動:黒炎>>
「ちっ……また俺かよ」
ガクトは馬を巧みに扱い炎の被弾地点、炎の範囲を予測して華麗に回避をしていく。俺たちも黒炎で焼かれた道を回避しながら進んでいく。
全ての攻撃をギリギリで回避し続け、無事に全員門を通ると黒龍は大きな羽を羽ばたかせ、飛び上がると空高く飛び去ってしまった。
「ふぅ……どうやらあっちも諦めたのかな」
「まぁ、とわ言え……顔はばれなかったものの関所で大事起こしてるんだ。勿論、情報は回るだろう。慎重に進むべきだ」
関所通るだけでこんなに大変なんて思わなかった。
あの黒龍が里を襲ったやつなのだろうか?しかし、なぜこんな早くから現れたのか……これはますます調査が必要だ。
グゥゥウウウウーーーー
絶え間なく馬を走らせていると前から何かが鳴る音が聞こえる。
「お腹……空いた」
どうやらアミュラのお腹の音だったようだ。緊張していた空気が一気に和らいだ。
「休憩にしよっか」
俺たちは近くの道に野営をして、休憩することにした。新天地に入る前から酷い目に遭い、一体この先どうなるのだろうか……
明けましておめでとうございます!
今年1発目の投稿なので目標を1つ……今年でブクマ1000件!!……いけたらなってw
目標を達成できる勢いで頑張ります!!
 





