44 影と光
ラミーさんは俺たちの前に立ち、バズールと対峙している。
「ラミィィィィィ!? 貴様、何をした!? こんな強い光を生み出す事なんて貴様にはできないはずだ!!」
バズールは顔に大粒の汗を垂らしている。自分のとっておきの技が糸もたやすく打ち消されてしまっていることに余程驚きを隠せていないのだろう。それとは対照的にラミーさんはさっきと打って変わって落ち着いた様子だった。そのまままっすぐ歩むと部屋の中心のところで何かを拾った。
「これよ」
ラミーが拾い上げた物はとげとげの殻が割れて中が空になった木の実だった。
「あれは?」
俺がその木の実を見るとシステムが反応を示す。
<<物質を解析中……>>
<<解析完了>>
<<解析結果は以下の通りです>>
アイテム名:衝撃感知式閃光玉
種別:調合物
品質:超高品質(ボーナス:閃光時間倍増、光力超アップ)
調合成功率:70%(超高品質率:0.3%)
詳細:針山のような特徴をした木の実『バンの実』の中に天敵から身を守るために体を光らせる『デンキボタル』の光の源である、衝撃で光を生み出す体液を中に入れた物。
調合した実に衝撃を加えることで殻が割れ、漏れた液が光り出すと言う仕掛け。
本来の効力は持続時間が約1~3秒、周り少しが明るくなる光を出す物だが超高品質なため性能が大きく変わり、持続時間10秒、部屋一面を閃光で埋めることができるようになった。
「これは私がここに来る道中で護身用に作った光が出る癇癪玉よ。発光力はほんの一瞬だと思ってたけど予想以上に働いてくれたわ……作って置いて良かった」
「ふざけるな!! そんなおもちゃごときで俺を止めたと思うな!! 喰らえっ!!」
怒り狂ったバズールの後ろから黒い刃がいくつも飛んでくる。しかし、ラミーはそれを避けようとはせず、腰の鞄からさっきと同じ形の実を取り出し、その影へと投げた。投げられたその実は影によって切られた途端、衝撃を加えられたことで眩い閃光を放つ。その光は影がラミーに届く前にかき消した。
「ば……馬鹿な!?」
「影は光に弱い……影は照らされたら消えてしまう……だからこそあなたはこの洞窟を戦闘エリアにした。ここなら少しの光に照らされたとしても影を半永久的に生み出すことができる言わば無敵の場所。だけど残念だったわね……こっちだってタイプは違えどあなたと同じ物を持ってるんだから」
「ぐっ……ぬぅ……」
追い詰めたと思ったその時に形勢逆転されたバズールは下を向きうなだれる。とうとう観念したのか……そう思ったときだった。バズールは観念するどころか狂ったように笑い出す。
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
予想外のリアクションにラミーは気味悪がった。
「見事!! 見事だ!!!! ここまで俺が追い込まれたのは久しぶりだ!!」
そう言うと拍手を俺たちに向けてくる。
「一体……何のつもりなんだ……」
俺の問いを聞くと最初にあったときのようにニタリと不気味な笑みを浮かべる。
「アイデアさ!! 君たちのアイデアを褒めたい!! 消され無ければ良いんだ!!」
そう言うと影は腕へと変化しバズールの後ろにいたベリュトゥナを掴み天井へと挙げる。ベリュトゥナの下には鋭く尖った岩が並んであった。ベリュトゥナを強く握りしめられて苦しそうな声を漏らしている。
「く……うぅぅ……」
「おっと!! 少しでも影を消してみろ!! この女が落ちて、この岩に串刺しされてしまうぞ!!」
ラミーはそれを見て、実を投げようとしたその腕をゆっくりと下ろした。
「どうした? 投げないのか? お前の思い出ある家を燃やして、裏切った女だぞ? 投げてみろよ!! まぁお前には無理だよなぁ!! 何だってまだ家族だとか思ってんだろ? 甘々なんだよ考えが!!」
「甘々はあなたの方よ!!」
ラミーは大きく声を上げた。ラミーの左手は強く握られている。
「確かに私の思い出は燃やされた……でもカナのことも私は思い出の一つなの!! カナと一緒に歩んできた事実は変わらないわ!! 私は裏切られたなんて思ってない。だって、さっきまで家族同然だったんだから!! 家族は……最後まで……信じるものなんだから!!」
ラミーにとってカナは唯一の家族同然の人。なのに自分の思い出を奪われた。でも、それでも信じている彼女をまるで本当の母親に見えた。ラミーに残されたカナという最後の思い出を守るために。
助けたい。この2人を助けたい。ラミーさんに言った約束を果たしたい。神様……俺はどうすれば良い。
そう思ったそのとき、俺の頭の中に声が響いてくる。
『思いを持ちなさい……あなたが今、どうしたいのか』
いつもの天の声だった。得体の知れない、どこから伝えているのか分からない声だが聞くだけでどこか安心感があった。
「俺の思い……」
俺の思いは1つ……それを強く願った。するとシステムが反応を見せる。
<<希望を確認しました>>
<<能力制作により以下のスキルを習得しました>>
基本スキル:【光支配】
効果:光を生み出したり、操ることができる。光は特殊属性に分類され基本属性よりも応用性があるがそれは所有者の創造力に委ねられている。
制作理由:2人を助け、未来に光を照らしたいと言う強い願い
「ラミーさん、安心してください。私がお手伝いします」
俺はそう言いながらラミーに歩み寄り、隣に立つ。持っていたティターニアを手でゆっくりと撫でる。すると、ティターニアの刃が眩しいほどの光に包まれ、虹色の輝きを纏った。
<<『光支配』のスキルにより以下のスキルを行いました>>
応用スキル:光の粉
種別:付与
効果:物体に光を宿す。宿された道具は全て光属性攻撃、闇属性耐性を得る。
「ケルトちゃん……」
「良いですか、私が合図を出したら迷わずカナのところへ走ってください。カナを救えるのはラミーさん、あなた自身です!!」
ラミーは俺の顔を見るとはにかんで頷いてくれた。
「それでは、行きますよ!! 走って!!」
俺が先行し、バズールの方へ向かっていく。ラミーも後ろから付いてくる。
「うおぉぉぉぉ!! そんなに死に急ぐのなら死ぬが良い!!『影槍』!!」
俺たちの目の前に鋭く尖った多くの影が飛んでくる。俺は輝く剣を全ての影に切りつける。切られた影は後ろに流される前に消滅していった。徐々にバズールの体が近づいてくる。
「おのれぇ!!『影鎧』!!」
バズール付近にある全ての影が彼を包みバズール自体が影のシルエットのようになる。
「たああああああぁぁぁぁ!!!!」
俺は剣をそのままバズールの腹に突き刺す。刃は貫通し、体に纏った影を払っていく。払われるとともに赤い血が垂れ出る。
「ば……か……なぁ……この……俺が……こんなガキに……」
バズールはそのまま前に倒れ俺の体にうなだれる。その体からは生気が感じられず、そのまま死亡したことが分かった。それと同時に影は元の場所に帰り、ベリュトゥナを離した。
下にいたラミーは落下してくるベリュトゥナをキャッチするとそのまま抱きしめ、涙を流した。
「カナ……よかった……」
「どうして……どうして私を助けたの?」
あふれようとする涙を頑張ってこらえているベリュトゥナの体をラミーは更に強く抱きしめる。
「馬鹿……だって……貴方はもう家族なんだから……私の目の前にいる……家族なんだから……」
その言葉を聞いたベリュトゥナはせき止めきれぬ涙を声を出しながら流した。
俺たちは2人の様子を優しく見守り続けた。
しばらくしてから外に出ると夜となり、空には綺麗な星が広る。久しぶりに見えた今日の空は一段と綺麗に感じた。
長く感じた俺たちの初仕事は完了した……さあ、帰ろうか。





