38 本職の開始
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あの火事が起こってから数時間が経過した。俺はラミーの怪我や火傷の手当てのためにリベアムール城の治療室へ運んだ。街で起こった大火事の事件のニュースは宿屋バニランテにも伝達され、ガクトとダンが城へと来てくれたのだ。そして今、俺と仲間は城のエントランスでリベアムールの指示を待っている。
<<リベアムール城;場内エントランス>>
「ケルト、一体何があった? お前が居ながらどうしてこんな大騒ぎになるような事が起こってる?」
ガクトが俺に質問を投げかけてくるが、その質問に対してよく分からないとしか言えなかった。ガクトを含め、仲間全員にはこの事件直前の俺の行動について細かく説明するとガクトがやはり首を傾げる。
「なるほどな……なにか酒場に恨みでもあったのかは分からないが放火はまだしも、女の子を連れ去った事が何か引っかかる」
「身代金目的じゃないんか?」
「ダンの考えも悪くないと思うが、身代金目的ならラミーさんでもお客の中でもよかったはずだ」
「せやなぁ……何でなんかなぁ」
確かにダンの言うように身代金目的であるなら話は分からなくもない。しかし、ガクトが言う誰でも良いと言う考え方も当てはまってしまう。一体何のためにカナを?
そうこうしていると早々とした足並みでこちらに向かってくる人影が見える。そちらに目を向けると黒髪のロングヘアーをなびかせながら現れた長身の女性がそこには居た。そう、ここの城主であり神であるリベアムール=ディクジットだった。
「ケルト=シグムントよ、女をここまで連れてくる事ご苦労だった」
「リベアムールさん! ラミーさんは無事ですか!?」
「落ち着くのだ。命に別状はない、妾の力で体内に入った有害物質などは除去した。ここ数日休めば元気になるであろう」
「ホッ……良かった、リベアムールさんありがとう」
「妾にかかれば造作も無い事だ。ところでだケルト、そしてお主らに少し大事な話がある。このまま妾の玉座まで付いてくるのだ」
リベアムールはそう言うとまた早々と歩き出す。大事な話とは一体なんだろうか? 俺たちもそれに続いてリベアムールを追う。玉座の間に辿り着くとリベアムールが堂々とした風格で座っていた。
「ゴホン……それでは皆の者、話とは今回の火災と少女誘拐についての件だ。さっき酒場の女から話を聞き、私はある集団がこの事件に繋がっていると推測している。皆、『バンディット』と言う集団を知っているか?」
俺はそのキーワードを聞いた時、俺が始めてラミーと出会った時のことを思い出す。ラミーを謎の商売話を持ちかけていた奴らのことを確かバンディットと言っていた。まさか、俺たちがあの時、揉め事に割って入った事の逆恨みから酒場に火をつけて店内がパニックになっている間にカナを人質に取る為に誘拐したと言うことか?
「リベアムールさん、私、初めて酒場に来た時、一度バンディットの一員と思われる人たちと会っています。その集団についてもラミーさんから聞いています」
「詳しく聞かせて?」
俺はラミーから聞いていた情報を覚えている範囲でリベアムール含め、この場にいる者たちに説明した。
「ふむ……事情は分かった。やはりこの事件に関与している事が益々明確になって来たか……どうやら、少々早い指示だが止むをえんな。お主ら! 聞くが良い」
リベアムールの呼びかけに俺とガクトとダンは反射的に姿勢を正す。リベアムールの顔付きは真剣そのものだった。ギラギラとした目と俺の目が会い、背筋に脂汗が出てくる。緊張感のある空気の中、リベアムールが口を開く。
「お主らに最初の仕事を命ずる! バンディットを調査し、人質を救出せよ! 本来この私が向かうのだが……神とは忙しい者なのだ。だが、信頼している主らなら妾よりも良い仕事をしてくれるかもしれんからのう」
「早速か……だそうだがケルト?」
ガクトが俺の返事を待とうとしている。
神から直々に言われた最初の仕事……その大切さもある。しかし、俺の中で一番真に思っていた事は今まで守り続けた家を焼き払い、そしてカナまでも攫って行った事を俺は許せなかった。あの時、俺が早目に帰っていれば、一歩でも先に異変に気がついていたら……いや、もう過去を恨んでは駄目だ。今が大事だ。この事件……俺が……
「命令を承りました!!」
解決してやる……!
「待って!!」
後ろから突然聞き覚えのある女性の声が聞こえ、俺たちは咄嗟に後ろを振り向く。
「ん? お主は……」
「ラミーさん!!」
そこには病室で休んでいる筈のラミーがそこにいたのだった。そうと知った俺は急いでラミーのそばに駆け寄る。
「ラミーさん!! お身体の方大丈夫なんですか!?」
「ええ、手厚く治療して貰ったから大丈夫……ケルトちゃん、私がここに来たのは神様と話をしたくて来たの」
そう言うと、ラミーは真っ直ぐにリベアムールの元へと歩んでいく。そして、リベアムールのいる玉座の前で身を下げた。
「私はラミー=リキュレット! 親愛なる神リベアムール様! 私のような庶民の命を助けて頂き感謝致します。ですが、もう少しだけ我儘を言わせて下さい。私をケルトちゃんたちの仕事に同行させて下さい!」
ラミーさんの言動に俺は驚きを隠す事ができなかった。しかし、俺が口を出せる筈がなく黙って話を聞いていた。
「何故だ? 何故其方がわざわざ出向く必要がある?」
「その集団の本当の狙いは私であり、私の力です。でも、関係ない、私の大事な……家族のような存在を連れ去ったあいつらを私は許せない! 私の家族のときもそうだった。守れなかった……でも、今、私には力がある! だから、この力で今度は守りたい! 今回の事件、この力が原因……だったら、私が行ってやろうじゃない!! そう思いました」
彼女の熱い心情は俺の心に深く突き刺さった。ラミーの言った事は一語一語が本気に聞こえた。何故なら、彼女はそう言う性格の人だったから。俺は知っている。少々がさつで男勝りなところもあったけど根は優しいヤンママって感じだった。それは、カナの事も俺のことも家族と変わらぬ扱いをしてくれていたから俺はこの人に情を自然と抱いていたに違いない。だから、俺は改めて決意する。
「リベアムールさん、私からもお願いします」
気が付けば俺も自然と頭を下げていた。
「ケルトちゃん……」
「もちろん、ラミーさんにあらゆる力でサポートします。そして必ず、仕事を全うしますから」
俺は視線をリベアムールへと真っ直ぐに向け、返事を待つ。俺に続いてダンとガクトも頭を下げる。
リベアムールは静かに目を閉じ、一時の静寂の後、口を開いた。
「宜しい、向かうことを許可する」
「!! ありがとうございます……」
ラミーが改めて深々と頭を下げる。俺はホッとした面持ちになる。
「自ら立ち向かうその心意気……見事だ。ケルトよ、その女の事を頼むぞ」
「分かってます」
こうして、俺たちは準備が整い次第、バンディットの討伐と人質救出の仕事に向かう事になった。





