3 創造者
前の2話が長くなってしまったため分割させていただきました。
「はぁ、もういいや……あのさぁ、此処って異世界じゃん？俺良い感じの名前思いついちゃったんだよね」
「なになに？」
聞くと卯月は鼻を高くして自慢げに言う。
「『ユシリズ』とかどうだ？」
「ああ、ファンタジーっぽいなぁ。でも何で？」
「ユシリズは俺の好きなロボットの名前だ！」
確かに別に名前に制限などないのであればどこかから名前を取ってきたって良いのだろう。
「良いんじゃねか？」
「あざっす」
そして、卯月は早速その名前を試す。
≪『ユシリズ』を認証しました≫
「できた！ よっしゃぁ～～」
卯月もしっかり決まったようで良かった。
「ところで、名前が決まるとどうなってるの？」
認証された後のシステムの状態が心配だったのでついでに卯月に聞いてみる。
「今はなんか待機中ってなってる」
すぐには次のステップにはいかないようならまだ焦らなくても良さそうだ。
そろそろ俺も決めなければ……
俺は柳太郎のところに向かう。
「柳太郎は名前決めてる？」
「俺？ 何もないな……」
「なんか卯月は工夫してあだ名がつけられるかつ、ファンタジーっぽい名前にしてたけど」
「ファンタジーっぽいて……にしてもなぁ……」
柳太郎は考えているようだ。なんだかんだこれは自分の名前だから自分で考えさせた方が良いのだろう。あまり口出しはしない方が良いのだが、他人の名を自分の名を考えるのを忘れて考えてしまっていた。そして俺は一つの名を考えた。
柳太郎は考えているようだ。なんだかんだこれは自分の名前だから自分で考えさせた方が良いのだろう。あまり口出しはしない方が良いのだが、他人の名を自分の名を考えるのを忘れて考えてしまっていた。そして俺は一つの名を考えた。
「じゃあ、ユウビスだ！男っぽいだろ」
「う～～ん、じゃあいいよ」
「え？ 良いの？」
「え？ だめなの？」
「いや、すんなりOKするとは思わなくて」
「まあ、変なのよりは良いよ」
「あ、本当？ ならよかった」
≪『ユウビス』を認証しました≫
「認証はできた」
よしこれでみんなの名前は決まったか。残りは俺だけか……
「経はまだ決まらないんか？ まあ、なんか俺らの方はみんな待機中って書いてあって全然このシステムが機能せえへんからゆっくり考えて良いで！」
「おお、ありがとう」
とは言うもの、何も出てこない。女の子っぽくてこの外見に合った名前……
空を見ると青い空はもう夕焼けの色に染まっていた。森も薄暗くなり、辺りから獣かどうかよく分からない鳴き声まで聞こえて来るようになった。
「そろそろ移動しないと少し怖くね？」
アマが場所の移動を提案する。
「そうだなどこか休める場所を探そう」
俺は名前決めを中断して移動しようとみんなに言おうとしたそのときだった。
俺はどこかから何者かに見られている感じがした。辺りをぐるりと見渡す。
「どうした？」
「ここ……なにかいる」
「なに？」
ガクトも俺と共に辺りを見回す。俺はふと近くの茂みに目をやると、赤い目がこちらを見ているのが見えた。
そして、その茂みが激しく動き出したと思ったそのとき、黒い影が飛び出して俺に向かってくる。俺は間一髪のところで避けたが振り向くとそこには恐ろしい怪物がいたのだ。
「危ねえ！ なんだ！？」
そいつの姿は大型犬よりも大きい、四足歩行のオオカミのような黒毛の獣だった。赤い目を光らせ、口からよだれを垂らしながら牙をむきだし、俺たちをにらみつけている。
「で……でかい……」
さすがのガクトも驚いていた。
俺は目を残りの4人に向けると棒立ちになっていた。
「みんな！！ 気をつけて！！」
俺が声をかけると同時に、その魔物は棒立ちの4人に素早く襲いかかった。魔物のかぎ爪が4人の胸元を一気に切りつける。
「くっ……いてぇ」
「なんやねん……殺す気か」
アマとダンの胸元には傷は浅くても、少し血が流れていた。
「あっぶね！」
「何だこいつ！！」
ユシリズとユウビスは間一髪のところで避けていたらしい。魔物は今度は俺に向かって襲ってくる。
「ぐぅ！！！」
俺は魔物に押し倒され、のしかかられると、その魔物は俺の顔に噛みつこうとしてくる。俺は必死にもがくが今の体はか弱き女の子、腕に力を入れて獣の顔を押さえるのがやっとだった。この世界でまた死ぬのか？ 何もできずに？ そんなのいやだ。でも、そろそろ腕が限界だ。
俺は死を決心したそのときだった。頭に直接女性の声が聞こえた。
『汝の名を名乗りなさい、まだ始まったばかりではありませんか』
なんだこの声……
『神のご加護がありますよう…』
その言葉を聞くと、俺は叫んだ。
「私はケルトだぁ！！！！！」
そう叫ぶと俺の体から衝撃波が起こり魔物を吹っ飛ばした。
＜＜『ケルト』を認証しました＞＞
＜＜『スペシャルスペック：創造者』の能力が自動発動し、以下の能力を制作、獲得しました＞＞
スキル名：［風支配]
効果：あらゆる空間の大気を自由に扱うことがで
きる。
制作理由：魔物を吹き飛ばしたい強い思い
「なんだ……今の」
俺が起き上がると、魔物も起き上がる。魔物も傷を負っているが、俺に殺意を向けてにらんでいる。俺も魔物をじっと見つめるとシステムが反応した。
＜＜生物を認識しました、以下の通りです＞＞
Name：ヘルハウンド
level:8
危険度：D
スキル：【噛み付く】【吠える】
システムが作動している。初期設定が完了したからか？敵の情報も少し見ることができるみたいだな。え？レベルとかあるの？しかも8って高くない？でも、倒すしかない。俺は身構えた。ヘルハウンドは勢いよく突進してくる。俺は片手を前に出す。
≪スキル『荒ぶる大気』発動準備≫
ヘルハウンドとの距離が縮まったタイミングで俺は右手に力を入れて放った。
≪発動：荒ぶる大気≫
すると爆発音と共に衝撃が生まれ、ヘルハウンドは吹き飛ぶ。そして、そのまま木にぶつかり、木々はドミノ倒しのようになっていく。そしてスキルを受けたヘルハウンドはピクリともうごかなくなり、そのまま消えてしまった。
「やったのか？」
俺は傷ついた2人の元へ向かう。
「大丈夫か？」
2人の傷の心配をし、様子を確認する。
「い……てぇわ」
「重傷で笑っちゃうで」
いつものアマとダンなので大丈夫そうだな。でも傷の手当てくらいはしてあげたい。
「傷の手当てしたいんだけどどうすれば……」
そのときシステムが動き出した。
≪『創造者』の能力を使いますか？≫
そういえばこの能力は一体何なのだろか、取りあえず説明を聞くのは後だ。こいつらが助かるならそちらを優先しよう。使います。
取りあえずこいつらの回復と怪我の治療ができるようなことができれば……
＜＜希望を確認しました＞＞
＜＜創造者の能力により以下のスペルを制作・装備しました。＞＞
魔法名：【神聖魔法：祝福】完全回復
効果：対象1体の怪我完全治療、体力全回復、状態異常をすべて打ち消す。
制作理由：すぐに回復させたいという強い思い。
え？完全回復？ さすがにそれは強くね？ まだ序盤だぞ？ 俺にはよく分からんけど取りあえず回復だ。俺は２人に覚えた呪文を使う。
<<詠唱：完全回復>>
直ぐではなくある程度の時間が経つと、２人の体が少し光り体の傷は完全に無くなっていた。
「ほんまありがとう あれ？ 君強くない？」
「チートか？」
俺もよく分からなかった。急に発動して、急に能力もって、勢いで使ったからまだ自分に能力がある実感が持てていない。後でプロフィールを確認しておこう。
「なあ、やっぱり移動しないか？」
学人の提案により、俺たちは取りあえず森から出ることを決めた。
俺たち５人は、ヘルハウンドのような魔物に警戒しながら森の道を歩いた。森を歩いている途中に俺はふと思った。
「なあ、もしかしてお前らもなんか能力持ってるんじゃないか？」
俺は軽くダンに話題を促してみる。
「そうやなーー全然確認してなかったわ。まあ、後でゆっくり確認するかな」
歩いてからおよそ２時間は経っただろうか、未だに森の出口が見えない。
みんなもうヘトヘトだ。
「しょうがない今日はここで少し休むか」
声をかけるとみんなは完全に疲れ果てていた。まあムリもない。魔物も出たんだし、慣れない環境にいる時点で疲労はいやでもたまるだろう。
そして夜、取りあえずみんな草の上で寝ることにした。話し合いの結果、俺はスキルがすぐ出せるという理由から、魔物が出てこないように見張りをする当番になった。一応、女の子なんだけど、普通は女子を先に寝かすんじゃないの？
この使えん男共が。そう考えている間にみんなは爆睡モードに入っていた。やはり相当疲れてるたみたいだ。
みんなが寝静まり、１人になった俺は少し考えごとをしていた。
「能力をもっていて、あんな奴らがいるならやはり此処は別の世界なのか？ もしかしたらこいつらも何かしらの能力があるのかもしれない。それに聞こえてきたあの声はなんなんだ、気になるな」
俺は悶々と不安ごとなどを考えていたがさすがに俺も疲れていたのか、襲いかかってきた睡魔を受け入れ、俺も横になった。
この世界に来て１日目、能力を手に入れたがこの能力の本当の力と恐ろしさを俺はまだ知らない。
＜現在のステータス＞
Name：ケルト
SEX；女
スペシャルスペック(SS)：
【創造者 Lv.1】
スペシャルスペックステータス:
破壊性:∞ 支援性:∞ 応用性:∞ 成長性:∞
自己防衛性:∞
基本スキル：【風支配】
初期スキル:【???】【???】【???】【???】
魔法:
・神聖魔法:祝福…【完全回復】
所持金：１５０Ｇ（ヘルハウンドの討伐報酬）
この回からキャラの名前がそれぞれ変わり、分かりづらいと言う言葉を受けたのでここにまとめます。
次回からはほぼこちらの名前になりますのでよろしくお願いします。
古河 経→ケルト
佐野 卯月→ユシリズ
増岡 柳太郎→ユウビス
岡田 学人→ガクト
三ツ矢 弾→ダン
阿野部 慎→アマ
