34 訳あり調合術師
Q,スペシャリストって何?
A,能力所有者の事を言います。
ラミーさんは俺たちのいるカウンター席の前で使い終わったグラスを拭きながら会話を続けていた。ウェイトレスのカナは他のテーブルを拭いたり、床の掃除をしたりしていた。
「それにしても……ケルトちゃん達はどこから来たの? ここらでは見ない顔だけど?」
俺はラミーさんの能力について聞きたい気持ちを抑えて通常の会話に集中する事を考えた。それに、ラミーさんには色々怪しいところがあるもまだ確信は持てない。少し相手の話を聞いてから言及する事にしたい。さっき来ていた男達についても知りたいし……
「私たちは宿屋バニランテというこの都市外れにある1軒の宿屋のお手伝い人としてここにやってきたんです。本当は買い出しだけのつもりだったんですけど……アマが勝手に……」
俺はチラッとアマの方を睨むとアマはそっぽを向いて口笛を吹いてごまかしていた。本当にこいつはマイペースで自由な野郎だ。アマは俺の視線なんて気にせずにコップの水を飲んでいる。
そんな2人を見てラミーは急に吹き出した。
「ぷっ……あははは!! まるでここに導かれたかのようだね!! 私たちはうれしいよ、なんてったって久しぶりのお客様だからねーー、来るのはさっきの奴らくらいだけだし……」
ラミーは笑顔になったかと思うと今度はため息を漏らして困り顔に変わった。あの見るからに怪しい人たちと何か関係があるのだろうか? 俺はそれとなく聞いてみることにした。
「あの、私たちが入ってきたときに怒鳴り散らしていたあの男達とはどんな関係で?」
そう聞くと彼女は真剣な顔つきになりカウンターから出て俺たちの隣の椅子に腰掛けた。そして懐から1本の葉巻を取り出し、火を付け一服し始める。
「奴らはねーー、胡散臭いごろつき連中さ。確か……バンディットとか言っていたかね。私の力があれば金にもなるし、分け前もくれてやると言うんだ。でも、あたしゃこんな力を悪用する事なんてしたくないし、好きでこの酒場経営の道に入ったんだ。まぁ……お客が中々来なくてうちの生活もギリギリなのは否めないけどねぇ……」
「力ってやっぱりさっきのですか?」
俺がそう聞くとラミーは頷いた。
「ああ、さっき見せたのが私の力だ。簡単に言うと私の力は『どんな調合物でも全て100%で成功させる』ことができるみたい。世間ではこの力を『スペシャルスペック』って呼ぶんでしょ? それに、アマくんも使えるんでしょ? 私とは違う別の力で」
やはりこの人も能力者だった。しかも、アマが能力者であることを見抜いている。
ラミーは葉巻を吸い終わるとまた新しい葉巻を取り出し一服し直す。
「ふぅ……まあ、私はこの能力で酒と調合術を合わせたパフォーマンスを見せながら商売をやってきたのさ」
「ラミーさんが作るお酒もおいしいですし、このパフォーマンスが好評で隠れた名店とか世間では呼ばれてたりもして!! あ……でも、皆さんは鍛冶屋について聞いてきますけど……鍛冶屋って言うのは……」
途中から清掃の仕事を終えたカナがラミーの隣に近づいて話に入ってくるがカナが話そうとする事をラミーが途中で遮る。
「こらこらカナ……すまんな、ただの客人に私らの話をしてしまって……」
「全然大丈夫です!! ここであったのも何かの縁ですから話を聞きたいです!!」
その反応を聞いたラミーはため息を1回した後、軽い笑みを浮かべて話し出した。
「私が幼少期の頃、私の家は元々鍛冶屋だったのさ。父が凄腕の鍛治師で母は素材を混ぜる調合師。私は2人の背中を見ながら育って、いつか2人の鍛冶屋を継ぎたいと思ってたのさ。でもある時、事件は起きたのさ。私が買い出しから帰ってきたとき私の家である鍛冶屋が火事になってたのさ。その時間は店の中で父と母が仕事をしている時間だった。どんどん人が集まってきて消防団まで駆けつけるくらい大きな火事になってしまっていて、私は2人を助けようと向かおうとしたが消防団に止められて……結局私は両親を助けることができなかった。原因は消防団の調査によって火の不始末としてこの事件は解決として処理された。でも私はそんなはずはないと思った。だって、父は火の始末は徹底する人だったから幼かった私は納得ができなくて、そのまま火を扱う仕事が嫌いになった。この力があると分かったのは物心ついた頃だったよ。この力を生かせる仕事、火を使わない仕事……そう、この酒場を経営し始めたのさ。そして、私の噂を聞いた胡散臭い奴らが私の周りをハエのように集り始めて困るってもんさ。ふふっ……悪いね! なんか変な空気にしてしまってね」
話が終わるとカナは目に涙を溜めていた。そしてこらえられなくなったのか持っていたトレイで顔を隠し、早々と店の奥へと入ってしまった。
俺が話を聞いてるとラミーはまだ過去に相当未練があるかのようだった。話しているときの顔を笑顔に見せているのかも知れないが、暗い表情がやはり隠せていなかったのだ。この人の過去に部外者である俺たちが干渉するのは良くない。しかし、何か別の方法で助けてあげたいと感じてしまった。
「そんなことが……ごめんなさい、変なこと聞きました」
「良いのよ!! でも変ねぇ……なんだかケルトちゃん達になら話してもいいかなって……そんな気持ちになってたの。なぜかしら? これがあなたの力なのかしら? ふふっ♪」
そうだ、私はまだ仕事もらってないけど神の代行人だ。困った民のために助けることができるはずだ。民を愛するリベアムールならそう考えるはず。そう考えたときにはもう俺は言葉として口から出ていた。
「あの!! もし何か困っている事があれば助けになります!! ここであったのも何かの縁ですから何なりと言って欲しいです!!」
「えっ!? 本当!? じゃあうちに可愛い人手が欲しかったの!! 第2の看板娘としてうちのお手伝いをしてくれないかな!?」
「はい!!……え?」
<キャラクターデータ>
Name:ラミー=リキュレット
SEX;女
25歳
スペシャルスペック(SS):【調合術師Lv.MAX】
スペシャルスペックステータス:
破壊性:D 支援性:A+
応用性:SS++
自己防衛性:A++ スキル取得性:SSS
初期スキル(SSスキル)
一般スキル:【調合術:神】
特殊スキル:【武器生成】
(スペシャルスペック限定)特殊スキル:【高速調合】
一般スキル:【鍛冶技術:極】
習得スキル:【言語:ローハンド語】【乗馬:並】【素材知識:極】
2019/11/28 21:28 ラミーの一部ステータス修正、一部描写を修正。