24 神との対面
俺たちは荷物を整えた後、エルマさんにモリカへ行く事と帰りが遅くなることを告げて宿屋を後にした。なんども往復したモリカと宿屋への道は慣れたようなものであっという間についてしまった。モリカの入国料金は免除されているため俺たちは只で入国することができた。入国してすぐにシステムを起動させ、リベアムール城までの道を調べた。
「どうやらここから真っ直ぐ北に向かえば城にはたどり着くみたいだな」
「ここから視認できるところにあるから大丈夫だろ」
ガクトが北に目を向けている先にはあの某夢の国にありそうな大きな城がそびえ立っている。さすがこの都市のシンボル的な建物だ。俺たちは念のためにシステムを起動させながら進んでいった。マップの通り一本線だったので迷うことなく城の近くまで向かう事ができた。近づくと入り口は大きな鉄の門で塞がれていた。それに左右両隣に門番がいるかなりの厳重なセキュリティーだった。俺たちが門の前に行くと門番2人が立ちふさがった。
「貴様ら何者だ! 他所者がこのリベアムール様の城に入れるとでも思っているのか?」
「私はケルトそしてこいつらは私の仲間達だ! リベアムール女神様が私たちに会いたいと手紙を受け取ったから会いに来たんだ」
俺は門番にリベアムール様が書いたであろう手紙を渡した。門番がその文面を眺めると驚いたように道を開いた。
「たっ……たいへん失礼致しました。リベアムール様のお客様とは知らず、申し訳ございません! どうかご無礼をお許しください。 門を開けろ!!」
門番の一声で大きな城門が開いていく。その門が重々しく開くと俺たちは城の入り口まで向かった。城の中に入ると正面には女性の像が迎えてくれるかのように置かれていた。像の前には『リベアムール=ディクジット愛の象徴』と書かれていた。
「愛の象徴か、確かに民のためとか言ってる兵士達だから相当優しい人なのかな?」
俺はじっと眺めていると横からメイドのような女性が複数人現れた。
メイド達はニコッと笑顔で接してくる。
「ようこそおいでくださいました。あなた様達がケルト様達でございますね。話は伺っております。リベアムール様がお待ちになっておりますので早速ご案内いたします」
俺たちはメイド達について行くと像の奥には大きな階段があった。そこを上っていく。登り切るとそこは広い神の玉座になっていた。奥にはさらさらの黒髪のロングヘアーに派手な服と紫とピンクが混ざったフリルのついたミニスカートに身を包み、足を組んで座っている巨乳の女性が見えた。
「奥におられますのが我がワンス地方の神であり、このモリカのリベアムール城の城主である愛と豊穣の神リベアムール様でございます。どうぞお近づきになってください」
システムが反応し始める。
<<人物解析中>>
<<解析未完了>>
<<解析率10%で表示します>>
Neme:リベアムール=ディクジット
Sex:女
スペシャルスペック:[地母神]
スペシャルスペック専用スキル
:???
:???
:???
:???
:???
メイドはリベアムールに向かって腕を向けた。俺たちは玉座の前へ行くとリベアムールは立ち上がると口を開いた。
「妾はリベアムール=ディクジット、このワンス地方を統治する神である。そなた達が妖精の園の救済と闇商人の確保に協力したという冒険者だな? 実に見事な仕事ぶりだ。君たちには礼を言わせてもらうよ」
リベアムールは俺の前に立つと右手を差し出してきた。この国のお偉いさん故に少し緊張していたがやはり良い人そうだ。それでも少し緊張する……
俺が後ろを振り返って見ると仲間は皆、後はお前に任せたと言わんばかりのアイコンタクトで俺を見てきた。お前ら、こう言う時だけ代表にしやがって。
「い……いえいえ、私たちも訳ありだったので当然のことをしたまでですよ」
そう言いつつ、俺は差し出された手を握り返した。するとリベアムールは一瞬驚いた顔をさせたが普通に戻った。
「おぬし……いや、人違いかもしれん。気にしないでくれ。それよりもあの森でのことや闇商人についての話を聞かせて」
俺はリベアムールに妖精の園で起こった出来事や闇商人についての事をできるだけ詳しく伝えた。
「なるほど、ゼニという輩がそなた達の仲間を捕まえ、それを助けるために行ったと……そして別の地方の魔物で森を襲ったのか。まさに外道がやることだな」
「あと、その魔物を『あるお方』からもらったなどと話していました」
「あるお方だと……やはり奴と絡みがあったのかもしれん……」
「奴とは誰ですか?」
リベアムールは席に座り、落ち着いた面持ちで口を開いた。
「新しき第7の神 邪神エスデス=アスモデウス。奴はこの世界で唯一の邪神とされる者。強力なその能力でこの世界を我が物にしようとしているのよ。今この世界には魔物が過多に生み出されている現象が起こっているのはあいつが元凶だとされている。それによってこの世界のバランスはかなり隔たりが見られるようになって、我々6神も手を焼いているのだ」
エスデス……名前からして悪者って感じがするな……そいつがある意味ラスボスなのだろうか?でもどうしてそんな奴とつながることが?俺は少し疑問に思う事があった。
「そんな大きい存在とつながることは可能なんでしょうか?」
「エスデスは沢山の部下達を率いている。その部下とうまくコンタクトは取ることはできるだろう。しかし詳しいルートまでは分からない」
なるほどな、ともかくエスデスとやらが多分俺たちのような能力を使って世界の平和を脅かす者であるというのは分かった。リベアムールがこちらをじっと見つめており少し怖い……
「それにしてもだ……シンシアからも話は聞いていたのだがお主らの活躍ぶりと言い何か引っかかるところがあるのだが……」
「そうなんだよ! 実は俺たち……」
「馬鹿! ユシリズ!」
リベアムールの一言に俺たちの能力の事を喋ろうとしたユシリズの口を瞬時に塞ぐ。
「(もがもが……)」
「ん? どうしたのだ?」
「いやー!私たち実は結構みんな努力家で日々の鍛錬は欠かせないんですー!だから少しは動けるというか負けはしないと言いますかー!」
俺はその場で考えた適当な事を言って話を流そうとした。
「ほう……」
リベアムールは俺の体を下から上まで舐めるように見回す。リベアムールの瞳があるところで止まった。それは俺の腰に身につけられていたシンシアからもらった神器ティターニアだった。それを目にするとまた一瞬驚いた目をしたがすぐに戻り鼻で笑った。
「それは神器ティターニア……ふっ……なるほどな……話は確かに聞かせてもらった。こちらでもエスデスの件の調査を続行する。そして君にはある頼みがある」
「何でしょうか?」
リベアムールは立ち上がり俺の近づくと俺に向かって指をさした。
「冒険者ケルトよ! これよりリベアムールは貴方と決闘と言う名の手合わせを行うことをここに宣言する!」
リベアムールの言った一言は俺たち、そしてその側近達に一瞬の無言を与えた。俺は驚きを隠せぬままだった。
「決闘?」
リベアムールの側近達も急な出来事によりざわつきを隠せずにいた。リベアムールの顔は冗談でもない、本気そのもの顔をしている。俺は真っ直ぐ透き通ったその眼差しを見て、冷や汗が流れた。
どうして急に……?
2020/2/19 挿絵を追加しました。
 





