14 取引
「妖精の羽? それは何だ?」
俺はそのアイテムについて全く知らなかった。ただ分かったことは妖精と言うだけあってそれがとても貴重であると言うことだ。俺は妖精について本で読んだことがある。妖精は古くからあるファンタジー世界に多々出てきているメジャーな種族である。
「妖精の羽をご存じない?? 妖精の羽はここから北西にある『妖精の園』にはエルフやフェアリーなどの妖精種族のいる森がある。あんたらにはそこに向かって妖精の1匹2匹から羽をもぎ取ってくりゃいい話だ。簡単だろ?」
ゼニは口にくわえていたたばこを捨て、また新しいたばこに付け直す。
「その妖精の羽を持ってきたとして、一体何に使うんだ?」
「それを金にするんだよ!! 妖精の羽は裏ではかなりの値になるんだ。なぜなら、妖精は強い魔力を宿した種族だ。そいつから採れる羽は最高に魔力がたくさん入ってるんだ。だが、それは人間間で売買することは禁じられているからなかなか手に入らん。しかし、それを欲してる者達がいる。そして俺たちはそれを売りたい。分かるか?」
こいつらの説明からこの取引は完全に犯罪取引だ。妖精だってもちろん生きている。その生きる象徴でもある羽を無理矢理奪いに行けとこいつらは言っているのだろう。だとするともはや強盗をしろと言ってるような物だ。エルマさんとの約束は忘れていない。俺はどんな種族でも無理に傷つけはしないと決めている。けれど、もしここで取引に応じなければサラや右京どころか俺たちまで安全ではいられない。俺は少し考え、決断を下した。
「分かった、それを持ってくれば良いんだね? でも少し条件がある。もちろん今すぐには用意できないのはお前達も分かってるでしょ? つまりは、時間がほしい。それと俺たちの依頼が完了するまで絶対こいつらに危害を与えないでほしいんだ」
ゼニはにやっと笑う。
「ああ、良いとも持ってこられるのならなぁ! よぉし!!取引は成立だ!!!楽しみにしてますぜ? お客様」
取引に応じた俺たちはあの空間から抜け出すことができた。そして俺たちは今後どうするのか考えていくことにした。
「くそっ! 俺は何もできなかった……」
ユウビスは唇を噛みしめ悔しさを表した。
「ユシリズ、そう落ち込むな。お前にしては言い返した方だぞ。俺たちの方が何もできなかった。あぁー…あの時能力使っとけば良かったな」
いや、違うぞユウビス……あそこで俺たちが下手に能力を使って失敗していたら俺たちが強力な力を持ってる者として完全に狙いに来ることもあるだろうからあそこで引いておくのが良い判断だった、と言うことをあえて口にはしなかった。
「取りあえず話を整理しようか。俺たちは言うなれば借金を抱えているような物だ。そして要求されたのが妖精の羽というアイテムか……しかもそれはこの都市から北西にある森の中にいる妖精達からもらうか、奪うかして獲得しなくてはいけない……これはけっこうたいへんなことかもしれないな」
「確かにガクトの言うとおりやで。妖精さん達も自分らの生きる象徴をホイホイあげようとはおもわんだろうからなぁ…」
俺たちは相談をするも同じようなことしか意見が出なかったため、俺は決めた。
「もう考えてもしょうがない!! うじうじしてたら日が暮れちゃうよ。もらえるもらえないなんて行ってみなきゃ分からない。ここで俺たちが何も動かなかったら、何も始まらない!! 行こう、妖精の園へ」
「もしだめだったら、エルフのお姉さん達を拝んで帰ればいい話だし」
その意気だ、ユシリズ。
「せやな」
「次は能力使おうぜ」
「「「「「せやな」」」」」
まぁ……ばれない程度にな……
そんなこんなで、俺たちは旅の準備のため近くの雑貨屋に入った。入ると、様々な薬草が吊り下げられていたり、瓶には綺麗な青い液体がはいている物があったりとRPGの道具屋そのものだった。ついでに妖精の園についての情報も聴くことにした。
「は~い! いらっしゃい!」
出迎えてくれたのは三角巾が似合うおばちゃんだった。
「すいません、この店で傷を癒やす道具とかおいてますか?」
「うちでは、薬草とローポーションくらいかね~どこかに旅にでも行くのかい?」
「はい! 妖精の園までいきたいんです」
そういった途端、おばちゃんは目を丸くしていた。
「妖精の園だって!? あんた達あんなとこへ何しに行くんだ!?」
「訳ありでして……なぜそんなに驚くんですか?」
「妖精の園って言ったら、あそこはたくさんの強力な魔物がうろついてるところさ!! 騎士の調査団以外は滅多に行くとこじゃないよ!!」
なるほど、難易度で言うとかなり上位のほうか。
「まあ、行くなら気をつけなさいね。このローポーションと薬草6個ずつで100Gにしてあげるから生きて帰ってくるんだよ」
「ありがとうおばちゃん!!」
俺はシステムを起動させ100Gを念じると手元に金貨1枚が出現する。
「毎度ありがと!!」
店から出て、薬草とローポーションを全員で分け、鞄に入れる。そしてシステムを開くとアイテム欄が更新されていた。それと同時に『マップ』と言う新たな項目があることにも気づいた。『マップ』と書いてあるところを開くとモリカの全体図はもちろんこの世界の位置情報やその地域の情報を展開できるようになっていた。
「アマ、こんな機能あった?」
「お前気づかなかったのか?」
「うん、気づいてた?」
「うん、お前良く道に迷わなかったな」
「教えてよ!!」
こんな便利な機能があったなんて、なんか前の世界で言うスマホみたいだな。でも、これで妖精の園へ迷わずいけると言うことだ。取りあえず今日はモリカ周辺の草むらで野宿をして、明日から向かうことにしよう。雑貨屋のおばちゃんが言ってたように強力な魔物もいるそうだから早めに体を休ませよう。少しの間だが待っててくれサラ。あと、右京も。
こうして俺たちは仲間を救うべく、次なる目的地『妖精の園』に向かうことになった。
 





