13 国家裏の闇商人
マーケットを見回り、気分もお腹も満足した俺たちはサラの帰りを待つために広場で休憩していた。サラを待ってからかれこれ一時間ぐらい経過はしているだろう。一向にサラが現れる感じがない。帰りが遅いことに俺たちは少し心配になっていた。
「あの子遅いなぁ、何やってんだろ?」
アマはかなりイライラしている様子だった。足の貧乏揺すりが激しい。
「男には分からないと思うけど、女の子の買い物をなめたらいけないよ」
「ケルト……お前も男じゃないか」
ガクトの言葉が俺の胸に突き刺さる。正直すぎるその一言に俺は現実を見せられショックを受けた。
「な、中身は男だよ! でも、今は誰から見ても女の子だから!」
「ハリボテみたいな物だ」
こいつ後でしばこう。
「なぁそんなことゆうてないで、サラのこと探しに行った方がええんちゃうか?」
それもそうだ。女の子と言ってもさすがに買い物時間が経ちすぎている。俺たちはこの都市のマーケットから外れた商店街の方に行くことにした。この商店街はマーケットよりもあまり人はいなかった。これなら探しやすそうだ。
「さて、わしの出番やな」
<<発動:非対称の目>>
ダンの目が赤と青になる。
「ダン、それで探せるのか?」
「これで熱感知が可能になるんやけど、対象物の熱だけ感知することができるんや。それが障害物の向こう側にあったとしても見ることができる。分かったかケルトちゃん」
「いわば透視可能なサーマルゴーグルってこと?」
「そういゆことや」
ダンはこの商店街360度見渡す。すると、商店街の奥側に赤くなっているマークが見えた。
「いるで、あっちの方で座ってるシルエットが見える!!」
「よし、行ってみよう」
俺たちはダンの案内でサラがいると思われる場所へ走った。その場所に近づいて行くにつれて人の気配が少なくなっており、空は晴天なはずだが光があまり差し込まず、気がつくと裏路地のようなところを歩いていた。そこは商店街よりも温度が下がっているようで不気味さが増す。
「ここにサラがいるのか? 女の子の買い物には無縁の場所だと思うんだけど」
ユシリズの言う通りだ。こんなとこ若い女の子どころか一般の人でもあまり来ないところだろう。てことはやはりサラの身に何かがあったに違いない。俺たちは全速力で走った。
「ここや!! ここの中におる!!」
俺たちのついたところは明らかに潰れているとしか思えない古いバーのような店だった。看板は割れており、何と書いてあるのか分からない。
「取りあえず入ろう……」
俺はドアを開ける。開けると埃の匂いでむせかえりそうになった。中は木製でできた円形のテーブルや椅子が破壊されたものが雑多に置かれていた。到底営業しているようには思えない。
「なんだよこれ……汚いな。臭いし」
アマが鼻をつまんだ。確かにここは鉄がさびたような臭いと腐敗臭の臭いが混ざったような臭いが埃とともに漂っていた。
「なんか……嫌な予感がするぞ」
「ユシリズ、その嫌な予感は的中かも知れないで」
ダンはこの店の奥にあったドアを見つめていた。
「この先に反応がある、しかもさらにこの先に道があるで」
「いこう!」
俺はドアノブをひねるがドアが開かなかった。どうやら内側から閉められているようだ。何度もドアにタックルを試みてみたがびくともしない。
「くっ!! 開かない!!」
「ケルト下がってて」
アマはドアに向かって手を差し出した。
<<発動:電磁砲>>
アマの手から電流が流れドアが吹っ飛ばされ、粉々になった。俺たちは中に入ると錆の臭いと腐敗臭が俺たちの鼻をつんざく。それに証明は足下のランタン以外何もないため上の方が真っ暗で何も見えなかった。
「暗い!!臭い!! ちょっと照らすぞ……」
ユシリズは落ちていた木の破片を持ちランタンの火を[火炎生成]のスキルで手から火を出し、松明を作った。ユシリズの松明がこの暗い空間を照らした途端、俺たちは衝撃的な光景を目の当たりにした。そこは獣を収容するような四角い檻が大量においてあり、その1つずつからうなり声が聞こえてくる。
「獣でも飼育してるのか?」
「ユウビス残念ながらちゃうで。これは全員人間やで・・・・・・」
「人間!? そんな……じゃあここは……」
そう。ここは本物の奴隷倉庫だった。まさか、ここまでむごいとは思わなかった。俺たちが見ていたアニメやラノベの世界のようなそんな生半可な物ではなかった。下には血しぶきや吐瀉物がぶち撒かれたような形跡や、血のついた首輪やロープ、鎖が床に散らかっている。さっきまでのあのマーケットとは一変して、俺たちは恐怖を感じていた。
「まさかこの先に……サラ!!」
俺たちは奥に進むと正面に大きめの檻がおいてあった。そこを除くと手前にはサラの持っていた籠が置いてあった。俺は一気に鳥肌が立ち、焦るようにその檻の中に叫んだ。
「サラ!! 大丈夫!? サラ!!!」
すると檻の奥から二人の人影が出てきた。
「ケルトちゃん……ケルトちゃん達なの!?」
それはサラだった。服もそのままで顔も別れたときと一緒だったことから、まだ何もされていない様子だった。
「サラ!! どうしてこんなところに!!」
「分からない。買い物が終わって帰ろうとしたら急に視界が真っ暗になって、気がついたらここで寝てて……」
「そうなのか……」
「あれ? その人達は知り合い?」
奥から男の声が聞こえてきた。
「そこに誰かいるのか!?」
「あれ?その声は学人だ~僕だよ~」
更に奥から出てきたのは、俺たちが前の世界で見覚えがありすぎるやつだった。
「「「「「「お前は・・・・・・右京!!!!!!?????」」」」」」
全員目が飛び出るほど驚いた。
「うん僕だよ~久しぶりだね~」
「お前の事すっかり忘れてたけどなんでここにいるんだよ!! てか、今までどこ行ってたんだ!?」
「柳太郎じゃん~久しぶり~僕はあれ以来気づいたらここで寝てたんだよ~ここどこ~?」
「ユウビス、取りあえず話は後だ。こいつらを檻から出すのが先よ!」
俺はスキルの準備をした、そのときだった。
「そこまでだ! お前ら!!」
後ろを振り返ると大柄の男と小柄の男が入ってきた入り口から出てきた。
「貴様ら、何俺たちの商品盗もうとしてんの?」
小柄の男はたばこをくわえながら近づいてきた。
「何もんだ? お前ら?」
ユシリズは男達をにらみつけた。
「俺たちか? 俺らはよう、奴隷売りさばく仕事してるゼニっつうもんだ。ほんでこのデカぶつがドルだ」
ドルという男は無言で圧をかけてくる。
「今商品って言ったか? 元々お前らのものではないだろ!!」
ユシリズは二人に対して怒鳴ったが二人はびびる様子がない。逆に余裕のある振る舞いだった。
「いや、俺たちが拾ったんだから俺たちの物だ。ここにある物すべてが商品なんだよ!!俺たちの金になれて幸せなんだよ!!!」
「この外道め……ケルト!!早く檻ぶち壊せ!!」
「おっと、ちょっとまて。お前らその頑丈な檻壊せると思ってんのか?それに、壊したとしてもこの部屋には催眠ガスの罠が大量にセットされている。下手なまねしたら即座に作動させちゃうよ?」
ゼニという男は手に持ったボタンをちらつかせて俺たちに見せびらかしていた。
「お前ら!!!」
「おっとと、押しちゃうよ~?」
俺は前に出た。
「あんたがボスなのか? 私はこいつらを購入したいんだけどさ。お前はお金になると言ったが、いくら出せばいいのかな?」
「ちょ! ケルト何言って……」
ガクトがユシリズをそっと黙らせた。
「今争っても俺たちが不利だ……取りあえず俺たちだけでも抜け出さないとこいつらは助からない。少し我慢だ」
「……分かった」
良い子だぜ、ユシリズ。そして空気読んでくれてありがとうガクト。話に応じるか分からないがやれることはやってみるさ。さあどうでる。闇商人共……
「いやぁなんだ、これはこれはお客様でしたか。大変失礼いたしました」
人が変わったかのようにゼニは商売顔になった。
「お客様のお求めのそちらの品は大変貴重な物です故、普通に売るには大変難しい品になっております」
「じゃあ、何を渡せば譲っていただけるのかな?」
男は不気味ににやりと笑うとこう告げたのだった。
「『妖精の羽』を持ってこい」
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