115 啓蒙ノ塔脱出
お久しぶりです!
休載期間でかなり期間が空いてしまいました(3ヶ月はびっくり)……ただいまです!
同時進行とまではいきませんが、またちょこちょこ投稿頑張ります!
無限ノ歯車を手に入れた俺はその形をじっくりと見る。見た目はただの大きい歯車にしか見えないがこれに膨大な魔力が含まれているのだ。腰のポーチに入れようと思ったが大きすぎて入らなかったので手でそのまま持っていくことにした。
一方でライザも目当ての魔導書を探している最中なので、ライザの手伝いをしようと思う。
「ライザさん、手伝いますよ」
「ええ、ありがとう……ん?」
その時ライザはふと、一冊の魔導書を手に取る。その魔導書は他の他の本よりも異質で表紙が真っ白だった。それに黄ばみもなく新品同様の状態で置かれていることにどこか変わっている。ライザがその本を開こうとするがまるで接着剤が付けられているのではないかと思うほど硬く閉じられていた。
「これも結界付きの魔導書のようね。恐らくだけど……まぁ、結界を解いてみましょうか」
そう言ってライザは扉に向けて行った結界を解く呪文を試みてみるとその結界が無事に解かれる。
そしてライザは本を開くとある程度流し読みをしていく。隣でライザを見ていたが目の動きが激しく、本を読む速度が驚くほどに速かった。今までに多くの本を読んできたに違いない……それくらい本を読むことができれば論文や専門書など容易く読んでしまえるのに……羨ましい。
そう考えている間にもライザは本を読み終え、静かに本を閉じた。
「……やっと……見つけた」
ライザは目に涙を浮かべて、手で口元を隠していた。どうやら、ライザも目当ての物を見つけることができたようだ。涙しているライザを見て自然と安心した。
「ケルトも見つけたのだろう?」
「うん! ほらこれ!」
そう言って、鞄の中にある大きな歯車を見せた。
「多大なる魔力を感じる……ケルトはなぜそれを求めてやって来たんだ?」
「この国の神様のお遣いで……えへへ……」
「……」
ライザは俺の言葉を聞いて、少し黙り込むと俺の事を見つめていた。ライザの赤い目がきらりと光ったような気がした。
「ケルトは……何のために神を慕うのだ?」
神嫌いのライザにとって俺が神の元で働くことに疑問を持っているようだ。俺は、口元を緩めて優しく笑う。
「世界を幸せにしたいんだ。その土台に私たちがなれたらいいなって思ってるだけだから」
「……そうか」
ライザはそれだけを言うとパチンと指を一度鳴らすとライザの持つ禁書が一瞬にして消えてしまった。
「え⁉︎ 本は⁉︎」
「安心しろ。私が本に透明術の魔法をかけただけだ。実際に本は私の手元にある」
ライザの説明に俺はほっとするとライザは部屋の出口まで歩いていく。
「さあ、お互い目当てのものは見つけた。部屋を出ようケルト」
「うん」
俺は部屋を出ようとしたかったが、倒れている魔導器が気になってしょうがなかった。この部屋の中心で倒れた一体の魔導器……よく見ると服も着ていない、埃でデリケートな場所が隠れてしまっている。まるで長い間、ここに放置されていたかのよなこの女性を見ると胸が痛くなった。もしこれが、機械のようなただの鉄の塊なら何も思わなかったかもしれない。
しかし、この魔導器はあまりにも人間らしい見た目をしている為、どこか感情移入してしまう。
「ライザさん、この魔導器……って、まだ動くのかな?」
「魔導器は魔導石を原動力として動く。魔導石を嵌め込んだ際にエネルギーが流れる回路が繋がっていれば動くかもしれない」
倒れたその魔導器が孤独にこの場で眠っている様子が俺にとって、心が強く締め付けられるような切なさを感じさせた。俺はその魔導器を起き上がらせると、肩に手を回して持ち上げた。
「ケルト? 何してるんだ?」
「この子、持って帰る」
「ど、どうしてだ?」
「だって、こんな誰も来ない場所に独りぼっちだなんて可哀想だ。もし、この国の神様ならこの子を動かす事ができるかもしれない。動かす事ができたなら、仲間のと一緒にいられるし」
「ははは、ケルトはどこまで優しい子なのだ。……よし、手伝おう」
すると、ライザも魔導器の片方の肩を持って運ぶ手伝いをしてくれる。
「ありがとうライザ!」
俺とライザは一体の魔導器を担ぎながら部屋を後にした。
そして、元の部屋へと戻ってくると転送版が活性化し、2つの影が見えた。
「おーーす、終わった?」
「ケルトちゃーーん、お目当てのもんは見つかったんか?」
そう、一つ下の階で戦っていたアマとダンがやってきたのである。
「2人とも‼︎ キュマイラは倒したの⁉︎」
「おう! バチコーーンやったったで!」
「死にかけたけどな。……て言うか、お前何持ってんだ?」
「魔導器!」
「は?」
あんな化け物を2人で相手するなど心配していたが、2人が無事で良かった。
「君たちがケルトの仲間か」
「はい、俺がダンって言います! こっちがアマや‼︎」
「どうも」
「ライザだ、よろしく」
お互い、挨拶が済んだところでそろそろこの塔から出たいのだが、どうやって出れば良いのか……
「ライザさん、この塔からはどうやって出るんですか?」
「あれを使うぞ」
ライザが指差す方向には転送盤とは別に、大きな魔法陣が描かれた絨毯がある。この本棚が並べられた部屋で唯一敷かれている絨毯である。絨毯に描かれた魔法陣が淡く発光しているのが見える。
「あの魔法陣には転送魔法が備わっている。あれに乗れば一瞬でこの塔から脱出することができるだろう。ただし、一度脱出したらここにはもう戻って来られない一方通行の転移だからな、帰るタイミングは考えた方が良い。因みに私の用は済んでいるからいつでも帰って良いのだが、君達はどうする」
ライザにそう聞かれ、俺たちは目を見合わせる。
「ケルトちゃんなんかあるか?」
「特にないよ、ちゃんと目当てのものも見つけたし」
「なら良くね? もう帰っても。俺……もう疲れた……」
話し合いの結果、特に用がないと言う結果になった。
と言うわけで、俺たちもライザと一緒に帰ることにしよう。
「では、行くぞ」
こうして俺たちはライザと共に絨毯の上へと乗った。すると、絨毯の上の魔法陣が活性化すると、大きく光を放ち始めた。そして、その光が俺たちとライザの身体を包み込むとその場から俺たちは消えた。
俺たちが消えたこの塔に、寂しい静寂だけが残された。
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