114 無限ノ歯車
俺はライザと共にお互いの目的の物を見つけるべくこの広い書庫を歩いていた。多くの本棚が並んだこの場所で一つ一つ本を確認していくのはとても時間のかかる作業である。しかし、俺たちにはライザの求める本の場所には心当たりがあった。アンドルフが持っていた禁術の書かれた魔導書、それが置かれていた本棚は厳重に結界が張られていたという。だから、俺たちは結界が張られた本棚を探している。
「中々、見つからないですね」
「結界が張られた本棚と言っても、こんなに本棚が多ければ探すのも一苦労だからな」
会話を交わしながら歩いていると、ふと、俺は壁に並んだ本棚と本棚の間に一際目立つ一つの灰色の鉄製の頑丈そうな扉があるのを見つける。
「ライザさん! あそこに扉がありますよ?」
ライザを呼んで、その扉に向かうと何やらその扉にはうっすらと光の膜がついているように見えた。俺がその扉に手をかけたとき、ビリっと強めの静電気のようなものが手に当たり、思わず手を離してしまう。
「痛たたっ! 何よこれ⁉」
「なるほど、結界付きの扉か。下がってて」
そう言って、ライザは扉に手をかざすと白い魔方陣が生み出され、その魔方陣と結界が共鳴してその結界はその白い魔法陣の中へと吸い込まれていった。
「結界は私が解除した。開けてみよう」
俺がゆっくりとドアに手をかけるとさっきのような静電気は起こらなかった。力を込めてドアを押すと石と鉄が擦れるような音を響かせながらドアが開いて行く。目の前にはさらに廊下が続いていて、照明がなく真っ暗だった。
「私が光源を付けよう」
そう言って、ライザの手先から火種術によって小さい火が生み出せれる。それを光源としながらライザとこの暗い通路を進む。
ある程度進むとまた入って来た時と同じ扉があることに気が付く。その扉もやはり結界がつけられていた。これほどまでに厳重なセキュリティであると言うことはきっとこの先に差にか重要なものがあるはずだ。もしかしたら、俺たちの求める物があるかもしれない。さっきと同じようにライザが結界を解いて、その扉を開いた。扉を開いた時、暗い部屋全体を照らすほどの大きな青い光が差し込んでくる。青い光の中心でふわふわと浮かんでいる大きな歯車が目線の先にはあり、部屋の脇には相も変わらず書物が陳列された本棚もあった。目線の先にある歯車こそ、俺たちが求めていたものである『無限ノ歯車』に違いない。
「これは……」
「す……凄い……あ、あれです!! 私の求めてたものです‼」
そう言って走り出した時、部屋の途中で何かにつまずき、転んでしまった。
「大丈夫?」
差し伸べられたライザの手を掴んで起き上がる。
「ごめんなさい……」
俺は服に着いた埃を掃って、足元を見た。そこには埃まみれの女性がその場で倒れていたのだ。俺の足がひっかけたのはおそらくこの女性の足だったのだろう。
肩まで伸び居た長い白い髪、前髪はオールバックでおでこが見えており、顔はまるでお人形のような美しい顔立ちでよく見ると背丈も高い女性だ。
「ええ⁉ 死体⁉」
「ちょっと待って」
ライザは彼女の髪を掻き分けて首元を見る。
「これは……魔導器だ、人間型の。ここまで人間に近い外見で作られた魔導器を私は初めて見た」
「人間型って街にもいた人形みたいなやつ?」
「ああ、だがなぜそんな魔導器がこんなところに……」
俺は、その魔導器の顔の埃を掃ってやるとその彼女の顔が良く分かった。目を閉じて眠るその顔はどこか寂しそうな顔をしている。ずっとここにいたような、または放置されて忘れ去られたような悲しい感情が伝わってくる。
「さて、私はここの書物を探るか」
そう言ってライザは本棚を物色し始める。俺は、その魔導器の様子が気になりつつ、青く光る無限ノ歯車の元へと向かう。
その歯車は宙に浮かんで佇んでいた。俺はその歯車に向かって手を差し伸べるとその歯車まで手が届き、掴むことができた。それを引き抜くとその青い光が消える。
等々、俺は交渉に必要な目的の物を手に入れることができた。
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