11 これからの運命
Q,良神、邪神って何?
良神は世界の均衡を保つことを心に持った神。良神は主に人間の味方である者もいれば、力を大事にする者、自分を磨く者などがいる。
邪神は能力を悪用し、均衡を乱そうとする者。
<登場人物>
古河 経→ケルト
佐野 卯月→ユシリズ
増岡 柳太郎→ユウビス
岡田 学人→ガクト
三ツ矢 弾→ダン
阿野部 慎→アマ
お風呂から上がり、みんなと夕食を食べた。そして余程疲れていたのかみんなはすぐに寝静まってしまった。俺はエルマに言われたとおり、部屋に向かった。もちろん俺の心臓はバクバクだった。俺だって中身は男なのだから変な妄想だってしてしまう性なのだから。俺は緊張で震えた手を落ち着かせてからエルマさんの部屋のドアを開いた。
見るとエルマが椅子に座っていた。
エルマさんの前のテーブルには大きめの水晶玉のような物がある。
「あの、エルマさん、なんですか?」
「ケルトちゃん良く来てくれましたね、それではこっちに座ってください」
俺はエルマに促されて手前の椅子に座った。
「実は私、こう見えて占い師もしてるんです。よろしければ占いの力であなた方を次の旅へと導く手助けができるのではないかと思って」
「占いですか?一体どんな物が見えるんですか?」
「そうですね、あなたの進むべき道が分からない迷える者には曖昧にですが次への旅のヒントが見えたりするんですよ!ほかにも、あなたの未来や運命も見ることができます」
「すごいですね!でもどうして私に?」
「あなたなら成功するって思ったんです」
「成功?失敗することもあるんですか」
「失敗と言っても、普通の人だと見える物が曖昧すぎることがあるんですよ。だから、占いをしてあげても見れた物が難解すぎて占い自体を信じてもらえないことがあるんですよ」
エルマさんは少し悲しげな表情をしていた。人のためにやっていたことなのに誰も信じてもらえなかったんだ。
この人の気持ちは痛いほど分かる気がした。
「大丈夫ですよ!エルマさんが私たちのためにやってくれることなんですから、どんなに難解だったとしても頑張って解読します!」
俺は胸を叩いた。
「ケルトちゃん……ありがとう」
エルマの表情が明るくなると手を水晶玉の前に添えて構えた。
「じゃあ、始めます」
「お願いします」
エルマさんは大きく息を吸うとエルマさんの周りから青いオーラが周りから流れてくる。
「『運命予測』」
そうつぶやくと、水晶が輝き始める。俺はそのまぶしさに耐えられず目を背ける。
少し時間が経つと光は消え、エルマさんはそのまま水晶を見ていた。
「見えました」
「何が見えますか?」
「北の地の大きな都市に、あなたと深く関係する何かが悪のオーラを感じる者達の手の縁にあり。そして、大いなる試練が来たり、それを乗り越え、天に近し者と相まみえよ」
北の地?俺たちに関係する何か?大いなる試練?
北の地はサラが教えてくれた国家を指しているのかも。
でもあと2つが分からない。
「ふぅ……これにて占いは終了です」
「ありがとうございました」
「すごいです!こんなにも占いがうまくいった人なんていませんでした!まさか文章が出てくるなんて思いません!それで分かりました?」
「う~んいまいち分からないところもありますが、北の国家に行けば良いことは分かりました」
「わかりにくくて申し訳ないです……」
エルマさんがすねてしまった。
「いや違うの!! 私が読み解く力がないだけです!! でも、そこに行けばいいことがわかったのでとても力になりました!! ありがとうございます」
エルマが笑顔で返してくれた。その笑顔はあの水晶の光よりも眩しく感じた。でも、1つだけ気になったことがあった。
「エルマさん、1つ聞いても良いですか」
「は~い、なんですか?」
「エルマさんは何か能力をお持ちですか?」
それを聞いたときエルマさんは驚いた顔をした。
「どうして能力って思ったの?」
「それは……」
今この人に俺たちがスペシャルスペックのような特殊固有スキルの保持者であると喋っても良いのだろうか。
一瞬言葉が詰まった。
「もしかして、だけどケルトちゃんも?」
俺は嘘をつくことができず、軽くうなずいてしまった。
「そうだったのね……でもこれで分かったわ」
「何がですか?」
「だってあの迷いの森で装備も何も持たないで生きて帰ってこれるのはあり得ないことだったから、少しおかしいなって思ってたんだけど、本当のことが知れて良かった」
エルマはほっとしたような顔をした。俺も緊張が少し解けていった。
「この力は神様達が使っているのと同じ類いなの。私の力は『占術者』と言うの。この力は世界を変える能力『スペシャルスペック』と言われているわ。でも私の力はただ占いをするためのものであり、決して人を傷つけようなんて思わないわ。でもね、この力も間違ったことに使うととんでもないことになるの。だからこそ私はそれを心得て使っている」
エルマさんのその瞳はまっすぐで、とても真剣だった。
「そして、あなたがどんな能力であったとしてもあなたには力を間違った方向に使ってほしくないわ。もう夫のような人を見たくわないの」
「エルマさん……実は能力を持っているのは私だけじゃないんです。ほかのみんなも持っているんです。でも、そのような強力な能力であるという自覚がないみたいで……」
そう言うとエルマさんは俺の頬に手を当てて微笑む。
「それでいいのです。能力を持ったとき一番怖いのはその人が能力の威力に気づいた瞬間なのです。それに気づいた瞬間から人は邪か良に別れるのです。あなたは少なくとも良寄りの人間です。でしたらあなたがあの人達を支えて、導いてあげれば良いのです」
「エルマさん……」
「無自覚で良いのです。その方があの子達……いや、人間にとって幸せですから」
俺はエルマさんが伝えたいことが分かった気がする。いかにこのスペシャルスペックが危険なものなのか。そして、能力を人のために使ってほしいと言うことを。
「最後に、あなたに伝えたいことがあります」
「なんですか?」
するとエルマさんは俺の体を優しく包み込む。そして、力はなくとも思いの強さを感じることができた。そして、エルマさんは静かに言った。
「頑張るのよ」
「はい……」
俺は優しく返事をした。
「今日はありがとね、楽しかったわ。ゆっくりおやすみになってくださいね」
その言葉に一礼をして僕は部屋に戻った。
そして、俺は布団に入った。
エルマさんのあの顔と言葉だけは決して忘れない。神に誓って……。
そして、朝になり冒険の支度をしていたときだった。
「おはようございます♪」
サラが朝から太陽に負けないくらいの笑顔で部屋に来た。
「サラおはよう」
「ケルトちゃん!お母さんがみんなを呼んでちょうだいって言ってました! なんでも、皆さんに渡したい物があるそうです」
エルマさんが俺たちに渡したい物?一体何だろうか。
「分かった、エルマさんに今行きますって伝えてちょうだい」
「はいは~い♪」
俺は直ちにねぼすけ共をたたき起こし、エルマさんの元に集まった。
「皆さんは今日から旅立って行きますね?」
「はい、みんなにはしっかり行き先は伝えています」
「北の都市国家モリカへですね。実は旅の皆様にお願いがございます」
「何ですか?」
「実は私が仕事で手が離せなくて、代わりにサラをモリカへ買い出しなどを頼んだんですけど良ろしければ、この子の送り迎えを頼めないでしょうか?」
「サラのですか?」
それを聞いて後ろからダンが耳打ちする。
「全然ええで!この人達にはお世話になったからそれくらいせえへんと悪いで」
みんなその通りだという表情を見せていたので答えは即決だった。
「任せてください!」
サラはとびっきりの笑顔で喜んだ。
「やったぁ!ありがとう!」
「本当ですか♪ありがとうございます♪それと、渡したい物があります」
そう言うと受付の奥から大きな木箱を出してくれた。中身を開けると、男物の軽量の旅人の服がと簡易な武器が入っていた。
「これは?」
「うちの主人は道具屋だったのです。これは夫が売っていた物でしたが私たちにはもう必要ない物なのでよろしければ使ってください」
「装備までくれるんですか!?」
「たいした物ではないんですけどね」
ただで宿泊させていただき、そして装備もいただけるなんて・・・いつか必ずお礼をしなくては。
「「「「「「ありがとうございます!!!!」」」」」」
各々が自分の装備を選び始めた。
「俺っちはこの長剣とこの旅人の服をいただきます!」
「俺はこの少し短めの剣とこの服で」
「う~ん、俺はこのナイフをもらうわ。あと、この黄色い服で」
「わしはこの弓矢を頂こうかしら」
「俺は~そうだな~この鉄の塊で良いかな」
「「「「鉄の塊って????」」」」
ユシリズ、ユウビス、アマ、ダン、ガクトは決まったようだ。あれ?俺の分は?
「ケルトちゃんにはこれをあげるわ♪」
エルマさんはレザーマントと動きやすいように作られたレザーの軽量な胸当てがついた女戦士が装備していそうな服、そして小刀をくれた。
「これは?」
「これね、私が作ったの。普通の女の子服に軽い素材の防護素材を付けて改造した服だから良かったらもらって」
「て、手作り!?私のために・・・ありがとうございますご恩は必ず返します!!!」
俺たちはそれぞれ着替え、外に出る。空は澄んだ青をしており、俺たちの新たな旅を歓迎しているようだった。
「モリカはここからそう遠くない北にあるから迷わずいけるはずよ、あなたたち気をつけてね。サラをよろしくお願いします」
「お母さん!行ってきます!!」
エルマさんは最後まで笑顔で手を振ってくれた。
宿屋がだんだん遠ざかっていくにつれ、昨日のエルマさんの言葉を思い出していた。
私・・・頑張ります・・・。
「よろしくね!皆さん!!」
「おう!俺はユシリズだ、改めてよろしく」
「よろしく、俺はユウビスです」
「いくで!わしはダンやで」
「よろしくおねがいします、俺はガクトだ」
「おす、俺はアマ」
「私はケルト!これからよろしくね!」
「はい!よろしくお願いします♪」
草原を駆け抜ける風が笑顔のサラの金髪をなびかせる。
その先に次の目的地がある。
ここから本格的に俺たちの実力無自覚な旅が始まったのだ。
第11話をお読み頂きありがとうございました!!
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