98 塔の守護者
石像のはゆっくりと歩み始め、俺たちに近づいてくると光を発している一つ目の顔で俺をジッと見つめる。俺と石像、互いに目と目が合った時、目のようなレンズに光が集まると一本の光線となって俺に飛んできた。
「まずっ!?」
【発動:残像】
俺の優れた洞察力によって間一髪のところでその攻撃を避ける。避けた光線は橋の向こうへと飛んで行き、着弾した地面が大きく爆発した。
なんて威力だ……
「あっぶない! ええぇっ!? 威力おかしいでしょ!?」
もしあの光線に当たっていたらと思うと思わず鳥肌が立ってしまう。
「ケルトちゃん! だいじょぶかいな!?」
「うん! ダンは早く解析を!!」
「わかった!! わしの援護頼んだで!!」
ダンが解析している間、俺とアマの2人で守護者の相手をする。
幸いにも守護者の動きは全体の見た目通り遅い。こちらから一方的に攻撃をすれば倒せるに違いない。
【発動:飛来風刃】
俺は身体の周りに無数の風の刃を纏わせて、それを守護者に向かって飛ばす。
勿論、守護者の巨大な図体には難なく命中する。しかし、その命中した風の刃が石像の胴体に触れると霧のようにかき消された。
「かき消されてるわね……」
攻撃をかき消した瞬間、石像の身体に少しだけ何か揺らいだ様子を確認する。どうやら、体中に膜のような物で覆われているのかも知れない。恐らくそれは……魔法……という予測がつく。もしかしたら威力が弱いのか?
「アマ!!」
「ほいよっ」
【発動:電磁砲】
アマの手から放たれた電流が直線となって守護者に直撃した。
と、思いきや直撃した寸前にまるで鏡に向かって光が差し込まれたかのように電流があさっての方向に飛んでいく。勿論、守護者には傷一つ付いていない。
「反射?」
「そうかも……そろそろ、普通の攻撃が通用しない敵が出てきているようね……」
距離を取っていた俺らに対して、守護者は地面に両手を付けると空に向かって光の光線を飛ばす。その光線が空で破裂し、光線が雨となって俺たちに降り注ぐ。その攻撃はダンにも当たる射程である。
「そんなことも出来るの!?」
俺はダンの元に風を切る速度で近づくとダンの服の首を掴んで、その移動の勢いを利用して後ろに引っ張る。
「ぐるじぃいいいいいっ!!!! もっと優じく!!」
「我慢して!!」
俺とダンはかなり後ろに下がり、光の雨の射程から抜け出す。
一方でアマは逆に守護者へと超至近距離まで近づき光の雨の射程から抜けると背中に背負っていた自身の杖を石像に向かって振りかぶる。
「物理で殴るっ!! てやぁっ!!」
カツン……
見事、守護者に命中したものの響きの良い音が鳴るだけでダメージなどが入った様子など無かった。
「うっ……」
アマが上を見上げると 守護者の目である黄色いレンズを光らせながらアマの方を見ていた。
そして、地面から腕を抜き、その手でアマの身体を掴み上げる。
「あわわわわわわっ!」
そして、守護者はアマを俺たちに向けてぶん投げた。
アマの体が守護者から離れたとき、守護者の手のひらに紫色に光る玉のようなものが埋め込まれているのに気が付く。
「紫の光……?」
しかし、アマの体は勢いよく飛んで行き、俺の体にぶつかって、橋の真ん中で揉みくちゃになる。
「いたたた……」
俺が起き上がると守護者は光を集めて、また俺たちに向けて光線を放とうとしていた。
あの威力ある光線から身を守るスキルを生み出さなきゃ……そう思ったとき、アマが立ち上がり俺の目の前に立つ。
「もう怒った……」
そう呟くと同時に守護者は俺たちに向かって光の光線を放出する。このままでは今度は俺たちに直接命中してしまう。
避けなくては……そう思ってもアマが避けようとする気配がない。
「アマ!! 避けて!!!」
「……できた」
そして、光線がアマに直撃……する直前で光線が角度を180度変えて、目標が守護者へと向く。
そして、その攻撃の体へと命中する。
咄嗟に俺はアマの方を見ると体中に雷の膜が纏われており、それはアマだけではなく俺たちを包むように半円上に薄いバリアが張られていた。
「もしかして……スキルを?」
アマの目の前にシステムが表示される。
≪【電気支配】のスキルにより、新たなスキルを獲得しました≫
スキル名:【電磁障壁】
種別:応用スキル
効果:自身の周囲に力場の壁を生み出して防御力を向上させるスキル。
スキル使用者自身は【物理攻撃無効】【基本属性耐性】【光属性反射】が付与され、
恩恵を受けている者は【物理攻撃耐性】【基本属性耐性】【光属性耐性】が付与される。
「さぁ……撃って来いよ」
自身の攻撃が命中し、少しふらつきを見せている守護者は体勢を整えると今度は光線ではなく光の雨の攻撃を行う。
無数の光雨が俺たちに降り注いでくる。それをもろに食らってしまった俺たちだったが、少し痛みがあるもののかなりのダメージがバリアによって守られていた。
正に広範囲に及ぶ強化支援だ。
「痛いけど、痛くない……」
一方、アマ自身に直撃した攻撃は跳ね返され、四方八方に光が飛んで行く。
「できた!! すまん、今送るで!」
「いつもいつもおせぇな」
「そこは勘弁してや!!」
相手の攻撃が止んだとき、俺たちのシステムにダンの情報が送られてくる。
≪1件のメッセージを通知≫
≪件名:魔物のデータやで!! これでよろしく!!≫
魔物名:マジックゴーレム
一般スキル:【魔法知識:並】【言語:ローハンド語】【言語:汎用魔族語】【魔力制御:光】
特殊スキル:【マルチコア】【偽りの生命】【チャージショット】
魔法:
【神聖魔法:破魔】:【破壊光線術】【光雨術】
【神聖魔法:天啓】:【魔法障壁術】
耐性:【基本属性反射】(弱点以外)【全攻撃弱点】(弱点のみ)
≪効果説明≫
【マルチコア】
自身の心臓を増やし、急所を複数に分けて即死を回避するためのスキル。
【偽りの生命】
自身の弱点を他の物に差し替えることができるスキル。
【チャージショット】
基本スキル、魔法の一部の威力を上げることができるスキル。
≪詳細≫
【偽りの生命】により体中の弱点は体の一部にある【マルチコア】で生成された心臓にだけ適用されるように変えられている。
「マジックゴーレム……複数の心臓って……」
今まで戦ってきた中で、弱点と思われるところが顔に着いたレンズのように見えたが、それだけではないということか。
つまり、複数の部位が弱点になった敵と言うわけか。じゃあ、それはどこに何個あるんだ?
「俺……心当たりがある。俺が投げ飛ばされるとき、手のひらに紫色の玉が埋め込まれていた。多分そこも弱点だ」
「だとしても……他にも弱点があるはずだよ。そこが分かれば……」
「ふっふっふ……」
ダンが指を振りながら笑い始める。
「みんな、俺がおるやろ? 俺が弱点を見つける」
「そんなことができるの?」
俺がそう聞くと鼻で笑いながら眼鏡をくいっと直す。
「みときや……」
≪発動:【非対称の目】≫
「熱感知対象は敵の弱点や」
そうするとダンが見ているマジックゴーレムの手のひら、足の裏、身体の後ろ、合計5つの部位が赤く光る。
「見えたで! 奴の弱点は手のひら、足の裏、身体の後ろの5つやで!!」
一瞬にして敵の弱点が分かったのに少々驚いたが考える時間が省けた。
この度で初めてこいつを連れてきてよかったと思えた。
「「了解!」」
弱点を知ることができた俺たちは一斉に走り出す。
俺は風の力を使い風を切るような速度で移動できるがアマは普通に走るのですぐには近づけない。
そこで俺はアマのスキルを参考に良いことを思いついた。
「アマ! 飛んで!!」
「え?」
「良いから!」
アマは訳の分からないまま俺の指示に従い、軽くジャンプする。アマの足が地から離れたとき俺は行動を起こした。
「一緒に行くよおおぉ!!!!」
≪【風支配】により新たなスキルを獲得しました≫
スキル名:【風渡し】
種別:応用スキル
効果:風、音波を操り、他人の行動をサポートするスキル。素早さを瞬間的に上げたり、風を纏わせることができる。
≪発動:【風渡し】≫
そのスキルを発動したとき、風が吹くとアマの体を後押しする。それによって、アマの一歩がまるで空中を飛んでいるかのように広くなり、物理的に俺と同じ速度で移動できるようになった。
「はやっ!?」
「えへへっ♪ 楽しいでしょ?」
2人はすぐにマジックゴーレムの元に着くと、ゴーレムが大きな腕を俺たちに振り下ろしてくる。
それをお互いに避け、マジックゴーレムの体勢を崩すために動く。
≪発動:【シャインイメージ】≫
≪イメージ:【大槌】≫
≪成功しました≫
俺の手元に大きな槌が現れ、それをゴーレムの足に向けてぶん殴る。
「光は大丈夫だったよねぇ!!」
殴られた右足が衝撃で宙に浮き、そのままゴーレムが体勢を崩して仰向けに倒れる。
手の平、足の裏には紫色の玉が埋め込まれている。
「これだ!! 今だよ!!」
「おう」
俺は手のひらを光の大槌で、アマは足の裏をスキルの電流で壊す。その玉は脆く、少しの衝撃で壊れる。
壊れた後、焦って急いで立ち上がるマジックゴーレムに驚き、俺とアマは思わずマジックゴーレムの正面に立ってしまう。コアを壊されたことにより、ゴーレムはとても激怒している様子だった。俺たちの後ろには開かない塔の入り口側にいたため、袋小路で絶体絶命だ。
「くそぅ!! あと一つなのに!!」
怒りに任せてマジックゴーレムが俺たちに向かって拳を振りかぶったその時、マジックゴーレムの動きが止まった。
「ミ……ゴ……ト……ダ……」
そう言い残して、マジックゴーレムは体が崩れ、壊れてしまった。橋の先にはダンが弓を持っており、矢を射抜いたみたいだ。
「「ダン!!」」
「ナイスプレイやろ?」
チームの連携によって何とか塔の守護者を倒し、塔の中へと入れるようになった。
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次回の投稿日は9月16日の0時です。





