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48 殲滅戦

「ユーリ様! 助けに来てくれたのですね!」


 荷台に立つオレに気づいたアリシアが駆け寄って来た。

 ネコ族の他の女たちは安心したのか涙を流していた。


「アリシア、皆をまとめろ。出来るな」


 オレは端的にアリシアに伝える。


「はい!」

「いい返事だ。

 すぐにリカルドを合流させる」


 オレはそれだけ告げてアリシアのいる馬車から離れた。


 リカルドとレナトは落馬した騎士に容赦なく追撃を加えている。


「「グルルルルルルルアアアアアア!」」

「リカルド」

「ユーリ様! ……どうして……」

「ノエが呼びに来てくれた」


 オレはノエの頑張りを伝えたかった。

 リカルドは涙を拭った。


「ノエ! 生きていたのか……それも、ユーリ様に連絡をして……」


 リカルドがひざまずく。


「あなたを追い出した我々を、自ら救援いただき感謝する言葉が見つかりません」


 涙を流して感謝するリカルドの肩に手を置いた。


「リカルド、話はあとだ。レナトは【獣化】しているから意思疎通が難しい。

 女子どもをあちらで救援した。警護に回れるか。

 安全な場所に避難してくれ。あとでオレも合流する」


 リカルドはうなずいた。


「わかりました。ですが……」


 リカルドは【獣化】し、暴れまわるレナトが気になっている様だ。


「オレが連れて帰る。急げ」

「わかりました、ユーリ様。

 また、後で!」


 リカルドはアリシアたちの元へ急いだ。


「さて、残りの騎士を片付けるか」


 ふと、あたりを見やれば落馬した騎士が次々とレナトに屠られていた。


「グオオオオオオオオオオッ!」


 レナトは咆哮し、騎士たちを睨みつける。


「ひ、た、助けてくれえええええ!」


 オレは、命乞いをした騎士に歩み寄った。


「ネコ族は、子どもや老婆までが殺されていた。

 戦士でもないものが助けを呼ぶ声がお前には聞こえなかったのか」

「し、仕方ないだろ、領主であるガガーリン家に宝物を報告しなかったんだから

 ……それより、お前人間だろ?」


 騎士はオレを見て少し安心したように話を続けた。


「ネコ族に雇われるよりウチで仕官しないか。

 領主を襲った罪はオレがもみ消す」


 騎士は笑った。


「なあ、その日暮らしの傭兵より給料もでるし、小銭が稼ぎたかったらそこらの村に行って略奪すればいい。

 オレも傭兵上がりだが、ここの待遇はいいぞ?

 女も、金もそこらの村から徴税ついでにちょろっともらえばいいんだ。

 女も村娘やネコ娘なんかさらって来ればいいしよ。最高だぜ?」


 兜の奥から濁った瞳がのぞいていた。


「領主に言われて、いやいやながらネコ族を襲ったんじゃないんだな」

「当たり前だろ? 氷竜の鱗がもらえるんだぜ?

 大きさによるが一生遊べるくらいの金になるだろうよ。

 ははは、ユーリ様様だぜ。

 氷竜の鱗をくれてありがとうございますーってなもんだ」


 騎士は大笑いした。


「ありがとう、感謝してくれて。

 オレからも感謝の言葉を伝えるよ。

 お前が、殺しても良心が痛む必要のないほどのクズ野郎で良かったよ」


 オレは騎士の鼻先へブリュンヒルデを突き付けた。


「……金髪碧眼。まさか、お前、ユーリ・ストロガノ……」


 オレは剣を振るい、騎士の兜と鎧を切り離した。

 鮮血がほとばしる。


「さてと、レナトも頑張ってくれているが、あと半分くらいだな」


――ユーリ様は無駄話がお好きですねえ。私は早く踊りたくてうずうずしておりますわ。


 ブリュンヒルデはヒトを斬るのが待ちきれないといった様子だ。


「悪かったよ。兜を操って一瞬で全ての騎士を殺してもいいが、それじゃ満足しないんだろう?」


――あら、ユーリ様。すべてを私のせいにするんですか? 別に私は構いませんけど……あなたの殺意を私は感じておりますよ。殺意という衝動に身を任せ、何もかも斬り刻みたいというあなた様の心。私は敏感に感じております。


「行くぞ」


――仰せの通りに。


 オレは、倒れ込んでいる騎士たちの首を踊るように刎ねていく。


 通常の剣であればすぐに肉の脂が回り、斬れないなまくらとなってしまうところであるが、【暗殺者の剣】とも呼ばれる魔剣はいつも一定の切れ味を保っている。


「氷竜の洞窟では、手首などを狙っていたが、今回は首を切り離すように斬ってるんだな」


――ふふ、私が憑依していた女の細腕と、私を使いこなしているユーリ様では魔剣である私自身の切れ味が違います。まず、腕力からしてクビを落とすことは難しかったのです。

 思う存分、首を落とせて私は感動に打ち震えておりますわ。


 魔剣が感動で振動している様だ。


「さてと、あとひとり」


 オレとレナトの頑張りで指揮官一人を残すのみとなった。


 オレは、指揮官のすぐ隣へ降り立つ。


「何か言いたいことはあるか」

「お前らああ! オレをだれだと思っている。

 この地を統べる侯爵家ガガーリン家の次男、グリゴリー・ガガーリン様だぞ!」


 あいにく国を追われたオレには侯爵家だろうが、知ったこっちゃない。

 まあ、国を追われていなくても、オレは貴族制度に疎いので伯爵だろうが、子爵だろうが、貴族なんだなーって思うだけだ。


「なぜネコ族を襲った」


 オレはグリゴリーに問うた。


「金をもってると聞いたからなあ、ロランに。

 重税を課せば、ユーリは村から出ていくだろうと」


 ロランが、糸を引いていたのか。


「まあ、そんなことはいい。

 私は寛大だ。お前が、剣を収めるなら部下としてとりたててやってもいいぞ」


 グリゴリーが、オレに語りかける。


「お前も、用は金が欲しいんだろう? なあ、もっと近くへ来い。

 お前だけに、最高報酬をくれてやろう。

 耳を貸せ、ほら、こっちだ」


 オレは、グリゴリーに耳を傾けた。


「馬鹿め! 転がりし兜よ、我に従い、槍と化し、この男を貫け!」


 グリゴリーは【錬金術】を使用し、オレの背後に転がっている兜から槍を生成し、オレを貫こうとした。


「止まれ」


 オレは向かってくる槍に命令し、制止させた。


「な、なんだとおおおおおお!」


 グリゴリーは驚いていた。


「オレの錬金術が言うことを聞かないなんて!」


 グリゴリーは動揺を隠しきれない。


「我に歯向かいし、九十九神の眷属よ。

 我に忠誠を示し、槍をその男に突き立てろ!」


 オレが叫ぶと、槍はくるりと踵を返し、グリゴリーの元へ戻ろうとした。


「おい、どうなってる。オレの言うことを聞くんだろうが!

 何で金属がオレに歯向かうんだよおおおおおお!」


 グリゴリーは想定外のことにおろおろするばかり。


「止まれ、止まれよ!」


 グリゴリーの言葉を聞かずオレの命令を遵守しようと、グリゴリーの心臓へゆっくりと槍は進んでいく。


「た、助けてくれええええ!」

「止まれ!」


 オレはグリゴリーの心臓目掛けて進み続けている槍の進行を止めた。


「はあ、はあ……」


 ひとまず生命の危機を脱したと思ったのかグリゴリーはへたりこんだ。


「お前が殺したネコ族に謝れるか」


 オレは念のため、グリゴリーに問う。


「フン、誰が。

 そんなことより私の部下になるんだろう?

 まったく金を吊り上げるために小芝居を打つんじゃないよ」


 グリゴリーは小さく笑うとオレを手招きした。


「あとは金の話なんだろ。

 お前ぐらいの達人ならちゃんと金は払うからさ」

「謝る気すら、お前にはないんだな」


 オレはそう言うと、剣を2回振りグリゴリーの耳をそぎ落とした。


「話が聞けない耳はいらないな」

「ギアアアアアアアア!」


 グリゴリーが叫んだ。


「謝れない口もいらないよな」

「た、助けて……」


 グリゴリーは耳を押さえなごら命乞いをした。


「ははは。お前の部下も言っていたぞ。

 助けてって。自分は誰も助けなかったのにさあ」


 オレは剣を突きつけた。。


「金なら、払う! 払うから……」

「じゃあ、ありったけ払えよ今」


 オレはグリゴリーに伝えた。

 

「こ、これが全部だ。足りなきゃ後で払う」


 グリゴリーは持っている限りの通貨を並べた。


「ひい、ふう、みい。ああ、こんだけありゃ足りるだろ」


 グリゴリーはオレの言葉に安堵したようだ。

 耳を抑えながら、オレに話しかける。


「い、癒し手のところに連れて行ってくれ……」

「必要ないだろ、今から死ぬんだから」


 オレはグリゴリーに冷たく言い放った。


「なんだと、金なら足りるっていったじゃないか」

「ああ、言ったよ。お前の体に風穴をあけるには十分足りるだろう」


 オレは小さくグリゴリーに伝えた。


「な、何だと?」

「九十九神よ、その眷属たる通貨よ。

 今こそ我に力を貸し、この男を通過せよ!」


 オレの命により、通貨がグリゴリーを通過し、グリゴリーの体に無数の風穴があいた。


「ぎゃあああああああああああ!」


 グリゴリーの身体は大小さまざまな穴をあけられ、地面に倒れた。

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