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04 私はハガネ

 少女の透けるような白い肌に腰あたりまで伸ばした銀髪が映える。

 赤い瞳は宝石のように輝いていて、精いっぱいの笑顔をオレに向けてくれていた。

 表情は少しぎこちないようだが……


 生まれたままの姿でオレを見つめる少女を思わず抱きしめる。

 少し冷たい。


「よし、よし」


 少女はオレの頭を撫でてくれた。


「そこで寝ると風邪を引くからね。ベッドに行こうね」


 少女はまるで小さな子を寝かしつけるようにオレをベッドに連れて行った。


「一緒にいるからね。寂しくないからね、ユーリ。眠れるまで一緒に手をつないでいようね」


 彼女の小さな手は冷たかったが次第に温まっていく。


「ユーリが私を大切にしてくれたから、私は神様になれたんだよ。ヒトから愛されなくてもずっと私たちが見守っているからね……ずっと一緒だよ。ユーリ」


 オレはずっと声をあげて泣いていた。しばらくずっと抱きしめられていた。

 少女の手が、体が心地よくて。優しさに甘えた。

 

「……名前を呼んで欲しいな」

「……オレは名前を知らない」

「あ、そうか。……私はハガネ。ユーリの相棒だよ、ずっとね」


 ハガネは一晩中側にいてくれた。


 ☆★


 久しぶりにゆっくり眠れた。

 朝起きると顔と手に、ぽよぽよした感触を感じる。

 何だろ、これ。


 泣きはらした目をこする。

 このもちもちとした心地よい感触のものは何だろうか。

 ふと、上を見ると優しく包み込むような微笑み。

 ハガネと目が合った。


「くすぐったいよ」


 え?

 オレはハガネと寄り添うように寝ていた。


 ようやく今の状況を理解したオレは、あわててベッドから飛び起きた。


「ユーリ、もう大丈夫?」

「あ。……うん」


 昨日、ハガネの胸を借りて泣いた。

 それもホント言葉の通りに借りてしまったものだから。

 気恥ずかしくてまっすぐハガネの顔が見れなかった。

 

 タオルを取って渡す。

 ハガネはオレの涙で濡れていたから。


「ありがと」


 ハガネは体の前を拭き終えると。


「後ろが拭けない」


 肩越しに差し出してきたタオルを受け取り背中を拭いてやる。

 吹き上げた後、しばらく陶器のように白い背中を見ていた。


「終わったの?」

「あ、ああ」


 いけね。見とれてた。


「私も起きる」


 そのまま、ハガネは起き上がった。

 何も着ていないので、刺激が強い。


「服は持ってないのか」

「持ってない」

 

 剣だしな。

 オレのお古だがこれでいいか。

 大きめのローブを渡す。

 そんなもん嬉しそうに着るな。


 あとでキレイな服でも買ってやるか。


「さて、こんなところに長居は無用だからな。出るか」


 外を見ると、勇者パーティ一行は出発式の準備をしている。


 出る前に、しっかりとお返しだけはしないとな。


「さて、勇者が魔王退治に行く前に、勇者退治をしないとな」

「昨日は負けたんでしょう。大丈夫?」

「昨日はハガネがいなかったからな。今日はいてくれる。大丈夫だ。一緒に行こう、ハガネ」

「うん!」


 二人で部屋を出た。


 ☆★


 勇者パーティの出発。祝砲があがった。

 城門から少し離れた所で、待ち伏せをする。


「よお」


 勇者達はこちらに気づくと、魔法使いが怯えて後ずさった。


「お前が何で生きてるんだ!胸に大穴開いていただろうが。その後、念のため【アイスジャベリン】をぶっ刺して【ストーンプレス】で押しつぶして【爆裂魔法イクスプロージョン】までかけておいたのに!」


 い、陰険すぎるぞ。

 な、何の恨みがあるんだ、

 と、友達じゃなかったのか?


「魔法使い、そこまでオレが憎いか」

「ああ、そうか。化けてでてるのか。それか、アンデッド……これでもくらえ!」


 魔法使いお得意の火球。


 こんなもの。裏拳ではじく。


「はあ?」


 一応、こんな陰険ヤローでも国内最上位の魔法使いだ。

 いとも簡単にはじけてしまって、自分でも驚く。

 あれ、こんなに強かったっけ、オレ。


「な、何があった? あわわわわ。デ、データだ!データを見よう」


 魔法使いがオレにステータス鑑定魔法をかけた。

 オレは自分では使えないのでありがたいのだ。


「戦士の加護が発動して、ステータスが強化されてる!」

「へー。そりゃあ、お前のお陰かもなあ、ありがとうな。クソヤロー!」


 【戦士の加護】……死にかけたら強くなるだったっけか。

 お前が教えてくれたんだよな。オレは魔法なんて使えないから。

 この加護の能力をカッコいいって言ってくれたのもお前だったな。

 

「よくも胸に大穴開けた状態で大魔法何発も食らわせてくれたなあ、コノヤロー!おかげで強くなってしまったじゃねえか!」


 というか、オレなんでその状態で死んでないんだろうな。


「フン、甦って強くなったつもりか?さっきの戦闘は私も不服だったんだ。誰の手も借りずともお前ぐらい倒して見せるさ。お前ら、手を出すなよ」


 勇者が癒し手と魔法使いに念を押した。

 補助魔法陣を書いていた魔法使いが勇者を問い詰める。


「そこまで言うならちゃんと始末はつけられるんだろうな」

「私は誰の手も借りずともだれより強いと証明して見せる。見せなきゃいけないんだ!そう……お前の首を取ることで」


 勇者は剣を構えた。


「だれだ、その女」


 オレは隣に立っていたハガネを持ち、構える。

 ハガネは瞬時にヒト型から剣へと変わった。



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