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35 氷竜征伐

「は? オレ達ホントに飛んでない? というか、羽が生えてるぞ」


 オレ達は文字通り飛んでいて、ハガネを装備したオレの背中から一対の黒い羽根が生えていた。。


――ほ、本当だ……急いで行きたいって思ったんだけどね。

 あ、きっと昨日ユーリと心が結び付いたからだね。

 剣と人の心が近づいたらどんどん強くなれるってクリーム様言ってたよ。

 黒い羽根だねえ、カッコいいと思うよ。


 オレとハガネがちゃんと向き合えたからなのかな。

 ハガネから力が流れ込んで来るのを感じる。

 けど、まさか羽が生えるとは。


 スタっと音を立てて着地。ダンジョン最奥にあっという間にたどり着いた。

 

「これが、氷竜か」


 オレ達は氷竜を見上げた。

 

 氷竜の全身は青く、鉱物か氷を思わせる鱗が全身をびっしりと覆いつくしている。

 竜族のウロコは並みの武器より硬いという。

 鱗から鋭利なトゲが跳びだし光が反射してきらめいていた。


 固そうで強そうで、トゲトゲとした見た目だ。

 いつか見た赤竜よりも翼は小さいが、攻撃が通りそうな場所が見当たらない。


 赤竜と戦ったときのオレだったならば攻撃が通る箇所が見当たらず困り果てていただろう。


 何の策もなくハガネで戦ったら折れてしまわないだろうか?


「ハガネ、刃は通りそうか」


――今日の調子なら折れないよ。でも、欠けたりするかもね。鱗を貫くのは難しいかな。


「そうか。攻撃が通りそうなところを探そう。オレはいつも、ハガネで戦ってきたから。固い相手でもなんとかなるだろ?」

 

――そうだね。でも、今は私も固いんだよ。


 ハガネが前より強くなったと主張してくる。


「頼もしいよ。ハガネを握ってると力がわいてくるよ」


――ふふ。ねえ、ユーリ。いま氷竜は寝ているみたいだね。


「今なら気づかれずに魔鉱石を運び出せるんじゃないか?」


――そうかも。でも、私もクリーム様も眷属じゃないから、ユーリに任せる形になるけど大丈夫?


 そうか。武器とかじゃないので、ハガネ達の管轄外か。


「やってみるよ。無理に戦う必要もないしな」


 この場の魔鉱石を持ち帰ればいいかな。


「九十九神よ、魔力秘めたる魔鉱石よ。お前たちすべてを統べる私が命じる。

 一時仮初めの力を貸そう、オレが指示する方向目指してダンジョンを出ろ!」


――最初、私って言ってたのにオレって言っちゃった。


「仕方ないだろ、つい気分が乗ったんだよ。」


 ゴゴゴと音がして壁から魔鉱石がはがれた。


「お、うまく行きそうだぞ」


 それだけでなく、天井が揺れ、地面が割れ真っ暗な底が顔を出した。

 その割れ目に、寝ていた氷竜が落ちて行った。


「グアアアアアアアア」

「魔鉱石が割れて氷竜が落ちて行ったぞ」


――あらら、寝床にしていた地面も魔鉱石だったんだね。


 天井、壁、地面からはがれた魔鉱石はオレの指示通りダンジョンの入り口へ大移動し始めた。


 オレとハガネは顔を見合わせた。


「みんな大丈夫か?」


――飛ぶよ、ユーリ。


 オレはクリームたちを探して元の道を戻った。


「いるか?」


――わ、わからない。


「ハガネ、【共鳴】できるんじゃないか?」


――あ、そっか。


 慌てていたハガネは最近出来るようになった【共鳴】の存在を忘れていた。


――クリーム様!


 ハガネは全身から振動をクリーム目掛けて発した。ハガネの体に振動が帰って来て、クリームの位置を知らせてくれる。


――いた、こっちだよ。


 ハガネが見つけてくれたクリームの場所を目指す。


――クリーム様!


「ハガネ。さすがに私も風で地面を作り続けるのは疲れましたよ。

 上から岩も降ってきますしね」


 クリームたちがいた場所には風魔法で足場と天井がつくってあった。


「みんな無事だったんだな」


 オレとハガネがみんなのところへ着地すると、アリシアとリカルドが呆然としていた。


「空が飛べるんですね、ユーリ様。というか、天使様だったのですね。それにしても黒い羽根なんて」

「クリーム様は右手と左手で魔法を使っていますし、もうおどろくことだらけですね」


 二人は呆然としている。

 まあ、オレだって空が飛べるとは思っていなかった。


「ユーリ様、私も魔法を同時に3つは操れませんので、いままで落石と足場を制御するので手いっぱいでしたが、上からの落石が収まり次第みなを連れて洞窟をでます」

「頼むよ」

「ユーリ様にしんがりを頼むのは申し訳ないのですが、たぶん氷竜は生きているでしょうからね。

 もし氷竜が襲い掛かってきた時にはお願いします。

 それにしても、もう羽が生えたのですねユーリ様」


 突如、奈落のような暗闇から氷竜が浮かび上がってきた。

 羽音がしなかったことから、魔法で浮かび上がってきたのだろう。

 竜族は知能が高いという。奇襲したつもりなのだろう。


「ひ、氷竜が来ました!」


 アリシアが叫ぶ。


「グワアアアアアアアア」


 氷竜は寝ているところから奈落に落とされ相当に怒っている様子。

 大きな口を開けて、オレ達に氷のブレスを吐こうとしている。


――逃げよう、ユーリ。


「逃げられるかよ、後ろにはあいつらがいるんだぞ。

 クリームだって、手いっぱいだろ。

 オレ達が防がなくてどうするんだ!」


 オレはハガネが逃げようとするのを力を入れて踏みとどまらせる。


「ダメです、ユーリ様! 

 あなたが死ねばどの道この子たちもおしまいです。

 逃げてください。

 ハガネ、ユーリ様を連れて逃げなさい!」


――ユーリ。


「ダメだ。オレはだれも傷つけさせない。……そう誓った」

「ギアアアアアアア」


 氷竜がオレ達へ向けてブレスを吐く。


――ユーリ力を貸して。私が守って見せるから。


 オレはハガネを強く握り込んだ。


――【防御結界プロテクション!】


 ハガネは自分の力でできる最大限の大きさの防御結界を作った。

 とても小さなものでオレの全身の高さにも満たない。

 この位置じゃ後ろをかばいきれないな。


「ハガネ、このまま全速前進。

 限界近くまで前で受けてそのまま口に突っ込め!」


――わかった。


「おおおおおおおお!」


 オレは氷竜のブレスをハガネの作ってくれた結界頼りに押し返しながら突進する。

 防御結界は小さく、オレの全身をカバーしきれない。

 足先は凍りついてしまっているが、前進をやめない。


 カンナやキヅチたちのため、出来るだけ前でブレスを受けとめる必要があった。


「ハガネ、上出来だぞ。この結界は小さいけど壊れない。ブレスに負けてないぞ」


――ふふ。あとでクリームさまにちゃんとした結界を教えてもらうからね。


 オレ達はハガネの作ってくれた防御結界でブレスをくぐり抜け、氷竜の眼前に飛び出た。


「ハガネ、飛び込め!」


 鱗が固いなら、体内に突っ込めばいいんだよ。


――うん。


 氷竜が口を閉ざすより早く口内に飛び込んだ。

 氷竜の舌に着地したオレは舌を強く蹴り、ハガネをまっすぐに立て口蓋から上に突きあげた。


「ギイイイイイイイイ」


たまらず、氷竜は叫び声を上げた。


「ハガネ、そのまま突き抜けるぞ」


――うん。


「【脳天通し!】」


 オレは黒い羽根をはためかせその浮力で氷竜の口蓋から脳天を切り開き突き抜けた。


「ギュアアアアアア」

「大丈夫だったか」


 オレは、クリームが作ってくれていた足場に戻ると氷竜は崩れ落ちていく。


「ユーリ様!」


 アリシアが抱き着いてくる。良かった。

 みんな氷のブレスは直撃してないな。

 オレは力が抜けてアリシアに体を預けた。


「「ユーリ様!」」


 立ち上がれないほどだったので、カンナとキヅチが心配してくれた。


「おまえたちが無事でよかったよ」


【風のウインドワゴン


 落下を始めた氷竜を落下させないためにクリームが足場を作った。

 落石がとまったので片手が空いたのだろう。


「ふふ、最高の素材をみすみす逃しはしませんよ。

 ああ、最高の武器が作れるでしょう」


 クリームはにやっと笑った。

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