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29 氷竜の住まう洞窟へ

 リカルドがオレ達のところへやって来ていた。

 未完成の屋敷の中に上げるわけにもいかないので先ほどパンを食べていた布のところへ案内した。


 オレにはクリームが側に控える。

 ハガネ、カンナ、キヅチは内装の残りを仕上げに行った。


 ちょうど残っていたアリシアはリカルドの隣に座った。


「リカルド様、なんの御用ですか」


 会話はリカルドから始めろとのクリームの意思を感じる。


「はい。最近、どうにもモンスターが増えまして」


 リカルドが頭を掻いた。


「独角馬はまだしも、一つ目巨人が来るとなると……」

「ダンジョンの活発化が考えられる、か」


 オレが答える。

 ダンジョンは魔石、魔鉱石といった魔力、瘴気を留置ける【核】を中心として生成される。


 迷宮ダンジョンには瘴気が満ちており、モンスターの生成、一般動物の魔獣化、モンスターの強化、凶暴化……とこれ以上ないほどモンスターには都合の良い生育環境がそろっている。


 瘴気自体を食むモンスターもいれば、瘴気で肥え太ったモンスターを食べるモノも集まってきてダンジョンが活発化すると、迷宮で抱えきれなくなったモンスターが近隣に溢れる。


「ここに一番近いダンジョンはどこだ?」

「ゴブリンやオーク、コボルトどものねぐらなどとても小さいものは除いて、でよろしいですね?」

「ああ」


 ねぐら、と呼ばれる規模のものはネコ族にとって脅威ではない。

 ヒト族の大軍勢でもなければ、ネコ族は抵抗できる。

 抵抗できるから、ネコ族は日のあたる場所にいるし、抵抗できないからゴブリンどもは日陰にいるのだ。

 

 ただ、ダンジョンともなれば話は別。

 そこがモンスターにとって生育環境の一番良い場所となる。


「氷竜の住まう洞窟ですね」

 

 氷竜か。

 生育環境を変えるのを好まない氷竜は、一度お気に入りの場所を作った後は、環境を保守したがると聞く。

 ダンジョンが活発化すると環境が変化するのでダンジョン活性化とは縁遠い存在というのが一般的な言説だけど。

 

「最近、何か動きがあったか」

「把握しております」


 クリームが説明してくれた。


「最近、人間族の冒険ギルドが氷竜の住まう洞窟内でとれる魔鉱石採集依頼を出しているそうです。

 それに怒った氷竜がダンジョンを活発化させた……」

「ありえない話ではないけどな」


 一応の納得は出来る。


「それで亜人達の冒険ギルドはどう動くのです?」


 クリームの問いにリカルドが答える。


「ええ。瘴気の発生源である魔鉱石を持ち出して勢力を弱めようという依頼がでています」

「人間のギルドと同じ結論っていうわけか。

 それにしても亜人の冒険者ギルドっていうものがあるんだな」


 オレは知らなかった。


「ええ。ユーリ様たちの分はすでにお作りしております」


 リカルドの指示でアリシアがクリームに渡した。


「随分と手際がいいですね。ユーリ様と私、ハガネの分まであります」


 クリームがオレに渡す。

 オレとクリームが伝説級レジェンズ、ハガネが真銀級シルバー

 軽くて薄い石板である。魔法技術が込められていて、身分証として確かなものだ。

 火魔法でも焼けないので、損壊した遺体の持ち主もこれで判別できる。


「なにも活動していないのにこのランクでいいの? 

 伝説級って上から二つ目だよね。

 人間のギルドと同じであれば事実上最上位だよね。

 神話級は通常、空位だからさ」

「おっしゃる通りです」

 

 リカルドが頷く。


【ギルドランク】は【九十九神】のランクと共通したものを使っている。下から、


 青銅級 ブロンズ

 鋼鉄級 アイアン  

 真銀級 シルバー  

 黄金級 ゴールド  

 伝説級 レジェンズ 

 神話級 ゴッズ   


 だったよな。たしか。


「ただ、正式に依頼もないのに一つ目巨人を退治してくださった。

 そのお力を、伝説級より低く評価はできません。

 一つ目巨人は黄金級以上の冒険者が数人単位で倒すものですから」


 リカルドが目を輝かせている。

 賞賛してくれている様だ。

 オレもハガネがいないとたぶん単独征伐はきついしな。


「じゃあ、ありがたくもらっておこうかな。

 人間族のと同じでこれがあれば身分証代わりになるよね。

 エルフ、ドワーフの領域でも有効?」

「ええ」


 リカルドが頷いてくれた。


「良かったな、クリーム」

「手際が良すぎますね。これで何をさせようというのですか?」


 クリームがリカルドを睨みつけた。


「一つ目巨人討伐と、屋敷の底地の使用許可では本来釣り合いが取れません。

 村の崩壊を防いだ報奨すら、あなたたちからは十分にもらっていないのです」


 クリームが詰め寄る。


「一つ目巨人の通行ルートとなることは通常、村の全壊を意味するのです。

 それを防いだユーリ様に財宝一つ与えなくてどうしますか。

 これ以上ユーリ様を見くびるようであれば、私が容赦しませんよ」


 クリームが目を見開いて脅す。


「す、すみません。ただ、財宝の類いは持っておらず……」


 リカルドが恐縮している。


「キモノ等、東方文化の流れは汲んでいるようですが、ネコ族は東方から刀剣類はもらっていないのですか?」

「はい。持ち出し厳禁とのことで少量持っていた分も移動に際して返しました」


 クリームは納得したようだ。


「管理が厳しいとのウワサはどうやら本当のようですね」

「村の破壊を止めていただいたお礼を、宝剣等でお返しできずすみません」


 リカルドが謝っている。オレは、返礼の品が欲しくて一つ目巨人を倒したわけじゃない。


「いいよ、別に。今、レナト達が狩ってくれた巨象を加工しているんだよね。

 アバラのところが一番おいしいって聞くけど本当?」

「はい。アバラの近くの部位は絶品です。

 干し肉にする必要はありますが」


 オレは恐縮するリカルドに笑いかける。


「それを持ってきてくれたらいいよ。

 そもそもモンスターが来たら倒すから任せてって言ったしね」

「ユーリ様、ありがとうございます!」


 リカルドが頭を下げた。


「そこまでユーリ様がおっしゃるのでしたら、私もここは引きましょう。

 ですがリカルド。それ以上を求められては困るのです」


 あえて、「リカルド」と呼び捨てるクリーム。

 交渉ごとにおいての相手との距離感を演出するのがうまいな。

 こちらが上だと再度認識させようとしているんだろう。


「そうですね。ユーリ様に何から何までお助けいただくわけには……行こう。アリシア」

「はい。……ユーリ様」


 リカルドが立ち上がる。アリシアはオレを見つめる。


「何か言いたいことがあるかな。アリシア」

「いえ……ありません。

 さようなら、ユーリ様。私、幸せでした」


 涙を拭いて、走り出すアリシア。

 妙に遅いけど。


 ああ、もう仕方ない。芝居に乗ってやろうじゃないか。

 オレに掴んで欲しそうな手を掴むと、アリシアがこっちを向いた。


「待てよ。話ぐらい聞かせろよ」

「ユーリ様」


 アリシアは泣きそうな顔をしている。


「……全くネコ娘のくせに、このメギツネは」


 クリームはため息をついた。


 ☆★


 オレ達は、屋敷がほぼ完成したので氷竜の住まう洞窟を目指すことにした。

 ネコ族の子どもが病気になり、薬が必要だとのことでアリシアが洞窟に薬を取りに行くらしい。

 

 通常であれば、ネコ族の男何人かで護衛すればいいだろうけど、ダンジョンが活発化しているので、凄腕の冒険者を探していてオレに白羽の矢が立ったらしい。

 ちょうど近くにいるしな。


 ギルドを通して依頼を受け、表面上オレ達とネコ族で貸し借りがないようにした。

 オレは格安で受けてもいいと思うんだけど、一方的に頼る、頼られる関係になるのは良くないというクリームの入れ知恵に従った。


 ダンジョン攻略部隊はオレとしては大所帯と感じる人数となった。


 先頭をオレとハガネ。

 その次にアリシアとリカルド。

 薬草の採取地がわからないので来てもらった。

 一番後ろにクリーム、カンナ、キヅチ。


 オレはカンナとキヅチは置いていったほうがいいと主張したが、クリームとハガネが同行を強硬に主張した。

 外の世界を見せたいのだとか言っていた。

 ハガネなんか半分泣きながら訴えるものだからしぶしぶ了承したけど……

 ダンジョンは危険なんだけどなあ。


――ユーリ様、聞こえますか


 ん? クリームはヒト型でもテレパシー使えるの?


――ええ。ユーリ様のお耳に入れたいことがありまして。


 何?


――このダンジョンのネコ族のための薬草に魔石、魔鉱石を持ち帰るのが目的なのは間違いないのですが、このダンジョンには伝説級の魔剣がいます。


 本当か?


――ハガネ達はまだ未熟でできませんが、【九十九神】である我々は互いに共鳴し合うのです。ダンジョン活性化は氷竜というよりその魔剣の影響の可能性が高いですね。


 従わせるんだな。


――ええ。ユーリ様の存在を知れば、否応なく従うと思いますが……人間の冒険者が入り込んでいるとなると、高確率で憑依しているでしょうね。


 人殺しの魔剣か。この世に妖刀、魔剣の類いは何本かあるというが。


――ご存知ですか。その中でも性質たちの悪い魔剣ですよ。使用者に憑りつき、鞘から抜き放たれたが最後。好みの男を捜し歩き、その人を殺すまで決して鞘には戻らない。

 好みの男を見つけて斬るまで延々と憑りついて殺し続けるっていう趣味の悪い剣です。


 名前は?


――ブリュンヒルデ・ダーインスレイブ。伝説級の魔剣です。 

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