羊の執事
2回目のスライム状の生き物、3回目の海老頭の執事をチェンジして4回目の白い球体が高速回転する中で明日馬は考えていた。
変な夢を見るもんだ。ストレスでも溜まってるのかな?それにしても夢の中でも上手くいかないなんて、、、
明日馬は大きなショッピングモールの警備員の仕事をしていた。学生の頃のアルバイトを楽だからとだらだら続けてしまい、正社員にはなったものの、この年齢になって初めて、このまま一生この仕事を続けても、家族を持てる収入が見込めない事に気がついたのだ。
今更焦りを感じても、この仕事以外の職についた事などないし、資格も警備員関連の物ばかりだ。
経験や資格がなければ転職も難しい。
怠けていた自分も悪いのだが、人生は上手くいかない。明日馬は常日頃こう思っていた。
夢の中まで上手くいかないなんて、、明日馬がそう思った時、球体は二つに割れ、中から銀色の光が溢れ出した。
お、今までと光の色が違うな?ゲームの演出と同じと考えるならば、少しは期待が持てそうだ。
銀色の光の中から現れた黒い姿がゆっくりと立ち上がる。
背の高さは172cmの明日馬より頭一つ分位低い。
最初に出たワニと同じ様に黒い燕尾服を身につけており、ワニと違う点は中に薄灰色のベストを身につけていた。ゆっくりとした動作で左手を腹部に当て明日馬に向かって礼をしようとしているその生き物の頭部は、、、
もこもこと触ると気持ち良さそうな毛並みと2本の曲がった角を持つ羊であった。
シツジのヒツジ?ダジャレかよ!?と明日馬は内心突っ込んだが、背格好や見た目からして今までで一番期待が持てる。
「明日馬様、外見変更が終了致しました。DPの説明をしてもよろしいでしょうか?」
おお、意外にも普通に喋れる!?しかし、羊みたいに鳴かないのかな?完全にランダムならこれ以上はポイントの浪費だ。外見は変わっても中身は同じ様だし、、今まで男性型が多いから女性型執事は望み薄だし、女性型でも顔が動物なら意味ないし、、
「説明を頼む」
明日馬は目の前の羊の執事で妥協する事にした。