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ソード・レート・オーガス(SwordLateOgres)  作者: ♤Spade♤
第一章 〜失う哀しみ〜
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第四話 〜限界突破〜

 審判の合図と共に、両者はフィールドを駆け抜ける。

 そして、一瞬のうちに距離は縮まり、剣と剣がぶつかり合う。

「ッッ?!」

 ハクはその力に驚嘆した。

 いくら力をいれても押し返されるその力に、俺は抵抗することはできなかった。

 そして、その鍔迫り合いで、俺はアレンの力に負け、押し飛ばされる。

「くっ!」

 俺はすぐに片足を後ろに回し、なんとか倒れるのを防いだ。

 しかし、安心するのもつかの間。そこへアレンはすかさず突っ込んできた。

 俺はその攻撃をなんとか剣で受け流し、左側へと跳ぶ。

「せぇああ!」

 そして、アレンが振り斬ったその隙を狙って剣を縦に加速させた。それは、最初に覚えた『ヴァティカル』という加速スキルだ。

 もう少しで当たる。そう思っていたが、アレンはからだを捻らせ、それを回避してのけた。

 そこから高速に剣が混じるが、毎回ハクはアレンに押されていた。

「ハクさんっ!」

 遠くからリーフの声がする。

 ここで負けたらギルドには入れない。なんとしてでもこの状況を打開しなければ。

(シロマ!何かないか?!この状況をひっくり返す方法は!)

『ううん……あると言えばあるけどね』

(もったいぶらずに早く頼む!)

 俺は必死にアレンの攻撃を食い止めながら問いかける。

『まぁ上手くいくか分からないけど……』

 そして、その後俺はシロマの奥義を教えてもらった。

(よし!)

 なかなかハードな技だが、やらなければ確実に負ける。

 俺は一旦アレンから離れる。

「リミッター、レモーバル!」

 先ほど教えられたように、そう俺は口にする。

 そして、一気にアレンに突っ込んでいく。

「うぉおおおおおおおお!!」

 そして、アレンの接近し、攻撃をかわそうとした彼に、加速スキルを使う。

 それは、突進時に効果を発揮する『プランス』というものだ。そして、このスキルは、他のスキルと組み合わせることによって効果をフルに引き出すことで有名な技だ。

 俺はプランスで相手に縦斬り(ヴァティカル)を与える。

 だが、

「何っ?!」

 アレンは驚きの出来事に驚嘆する。

 俺はプランスからヴァティカルに繋げたわけではない。それで、そこから本当に繋げたのは…

「ペンタゴンっ?!」

 五連回転斬り(ペンタゴン)は、その名のとおり、一撃一撃体を回転させ、重い攻撃を五回も連続でする技だ。

 しかし、なぜ俺みたいな素人がこのスキルを使用できたのか、それは今考えている場合ではない。

「せぇアっ!!」

 二撃、三撃と、次々とアレンに縦の剣の竜巻が襲いかかる。

 そして五連撃目。それを受け止めたアレンは体制を大幅に崩していた。

 そこで、俺は足で踏みとどまり、完全に俺の有利な状況にたった。

「ここだ!」

 俺はペンタゴンの回転力が失われないうちに、また手に力を入れ、再び加速させる。

「ぁぁあぁぁあぁあ!!」

 そのまま縦に一振り(ヴァティカル)。そして右に水平に斬り払った(ペーレル)。そこでも終わらず、体を逆に回転させ、右上から左下にかけて斬り下ろす(スピンカット)。

「なぜだ?!」

 アレンがそう口にする。

 自分にも分からない。なぜこうも加速が上手くいくのか、なぜ連続で大技を使ってもオーバーヒートで体が硬直状態にならないのか。

「らぁぁぁぁあぁぁあぁあ!!」

 そして、トドメにそこから思いっきり横へ水平になぎ払った。

「あぐっ?!」

 アレンはそれを防ぎ切れず、後方へ吹っ飛ぶ。

 俺はラストアタックの勢いで体を一回転され止まる。

 四連撃、スクエア。

 四回の斬撃の残像で、四角形に見えるということからその名がついた。

 その四連の残像は鈍く光ると、光の粉となり消滅した。

 そして、目の前には尻餅をつくアレンと、スクエアを発動させた直後の格好で固まっているハク。それを見て驚いて固まる観客の姿があった。

 誰がこんな展開を予想しただろうか。今も俺はこの状況を読み取れきれていない。

 そして、数秒たったところで、俺は体に疲れを感じ、膝をつく。

「ハクさん!」

 そして、そこへ駆け寄るリーフ。しかし、疲れ過ぎたせいで、視界がぼやけ、音がよく聞こえない。ふらっと力が抜けたかと思うと、視界がどんどん傾いていく。

 ドサ……

 俺はそのまま床に倒れこみ、意識が途切れた。


 ***


 目が覚めると、最初に視界に飛び込んできたのは木の板の天井だった。そして、体を包む暖かい感触はかけてあった布団だった。

 そこでようやく、ここがベットであることが分かった。

 俺は確か、アレンと戦い、そのあと体が急に力が抜けて倒れたのだ。それを誰が運んでくれたのだろう。

 そして、先ほどの戦いでの疑問が再び蘇ってくる。

(シロマぁ)

『ん〜。何ぃ?』

 俺の呼びかけに、シロマは腑抜けた返事で応答した。

(さっきのは一体何だったんだ?)

 俺は単刀直入にそのことを問いただす。

 さっきのとは、アレンとの戦いでのことで、あの合計九連撃の大技のことだ。

『え?お前知らないでやってたのかよ』

(……は?)

『だから、最初に唱えたじゃんかさぁ。リミッターレモーバルって。あれは、オーバーヒートをしない代わりに体にダメージが蓄積されるようになる技なんだよ。だからあの技を使っても硬直しなかったんだ。わかったか?』

 大体は分かった。あの時は全く知らずに唱えていたが、本当はそんなスキルだったなんて、思いもしなかった。

 そして、その後シロマから、使用後は今回みたいに倒れることもあるから、本当に使わないといけない時しか使ってはいけないと念を押された。

 それを聞いたあと、俺は体を起こそうとしたが、まだ披露が溜まっていて、起き上がるのに苦労した。

 ゆっくりと上体をあげ、足を床につかせて立つ。ふらつきながらもなんとか立ち、自分のポーチの中をあさくって回復薬(ポーション)を取り出すと、蓋を開け、一気に流し込んだ。

 すると、体が一気に楽になり、痛みがどんどん引いていく。

 しばらくすると、もう体は万全の状態になったので、かけてあった愛用のロングコートと、指貫のグローブ、それと愛剣(アクセルスワイト)を背中に背負う。

 準備が整ったところで、俺は扉の方へと向かい、ドアノブを捻って扉を開けた。

 そとはまだ廊下が続いていた。宿か何かだろうか。

 廊下の端についていた窓を見ると、外はもう朝日が差し込んでいた。それを俺は目を細めて見る。

 そして俺は前に振り返り、出口や探す。

 すると、すぐ奥に階段があった。

 俺は階段をそのまま下り、下の階へと向かった。

 下の階は、さっきの階と同じく、木造の古びた内装だった。

 そして、その近くから何やらワラワラと人の声が聞こえてきた。何だろうかと思い、俺はその声のする方へと向かった。

 その声の源はすぐ見つかった。俺はその扉の前に立ち、ふうっと深呼吸してから扉を開けた。

「あ、ハクさん」

 そこにいたのは、リーフと、その他もろもろの三人だった。

「もう体は大丈夫なんですか?」

「あぁ。なんとかな」

 リーフは一番最初に体の心配をしてくれた。それを笑みで返すと、今疑問に思っていることを答えた。

「リーフ、この人たちは?」

 そこには、男女が二人ずついた。

「えっと、これからの新しい仲間です。今日から私たちはパーティです」

 すると、まず一人の男が前へ出てきた。

「俺はシルクだ」

 シルクと名乗る男は、背中に太刀を背負った長身の男だ。

「それで、右から、この少年がザックで、隣の髪をアップにしてんのがノア。仲良くしてやってくれ」

 そして、あちら側の自己紹介が終わったところで、自分も自己紹介をする。

「俺はハクだ。まだギルドに入って間もない、というか入ったばっかだけど、これからよろしく」

 すると、みんなが優しく返事を返してくれた。その反応は、俺にとってとても嬉しいものだった。

 するとリーフが俺に近寄ってきて言った。

「そして、このパーティの団長は、ハクさん。貴方ですから、頑張ってくださいね?」

「お、俺っ?!」

 それを聞いて、俺は腰を抜かしそうになる。

「お、俺なんてまだ入ったばっかだし、そんな」

「リーフから聞いたよ。あんた、なかなかいい奴なんだな。それにあの二群長のアレンを吹っ飛ばしたあの時はとってもスカッとしたぜ。見直したよ!」

 と、シルクが俺をおだててきた。

「い、いや、その、そんな対したことじゃ……」

「本当凄いよねぇ。これでも私たちと同じEランクなんでしょ?」

 そう聞いてきたのは、自分と同じくらいの身長のポニーテールの少女、ノアだった。

「えっ……えっと……う、うん」

「そっかぁ。やっぱり凄いなぁ」

 そんなこんな、いろいろみんなと話していたら、いつの間にか彼らとはもう打ち明けられていた。

「それじゃ、早速なんだが、十二時からダンジョンに出発する。それまでに準備をしておいてくれ」

 そう言ったのは、シルクよりすこし小柄の少年、ザックだった。

 現在は十時。まだ少し時間があった。


 それから俺たちは時間になるまで自由行動となった。俺は一旦廊下へ出て、そのまま外の庭に出た。

 リーフに聞いたら、ここはギルド・ケルベロス第三群の宿舎らしい。そして三郡には、他にも三班あるらしい。

 俺は中庭につくと、背負っている剣を引き抜く。

「せぇェア!!」

 出した技はダイアグナルという、左右斜めに一撃ずつ加える二連撃だ。

 それからも、クロス、スピンカットに、ハイブローズといった中級技を繰り出していく。

 これでもまだほんの一部で、加速スキルは数え切れないほど存在するのだ。

「ハクさん」

 すると、宿舎の方からリーフがやってきた。

「練習熱心ですね」

「あぁ。少しでも多く加速スキルをマスターしないと」

 そして、俺はスクエアを繰り出した。

「それより、俺は他にも仲間ができたことが嬉しい」

「はい。私もとても嬉しいです」

 リーフの笑顔は、本当にそう思っていることがよく伝わってくる。

「いい仲になれるといいなぁ」

「そうですね」

 そして、俺とリーフは少し黄昏ていた。

 俺はリーフと出会っていろいろと変わった。ギルドにも入り、仲間もできた。それが今、一番嬉しかった。

 数秒ほどたって、沈黙を破ったのはリーフだった。

「ハクさん」

「ん?」

「一本、勝負しません?」

 それは、リーフからの勝負の誘いだった。

「いいけど、大丈夫か?」

 俺でも分かっているが、俺とリーフには結構な技量の差がある。それを分かってリーフは言っているのだろうか。

「はい。いつかはハクさんに追いついて見せます」

 その眼差しは、彼女の言っていることを本気だと信じされるには十分だった。

「よし。分かった。ルールは普通に一本勝負の寸止めな」

「はい!」

 そして、二人は左右に分かれて向き合う。

 俺は背中の剣を引き抜く。リーフも同様、剣を抜いて構えている。

 リーフが構えたのが分かったら、俺はそこに落ちていた石を拾い上げた。

「これが地面に落ちたら開始だ」

 そう言うと、投げる体制にはいる。

 そして、十分力をいれ、真上に向かって放り投げる。

 すぐに俺は武器を構え、石が落ちるのを待つ。

 その時は、突然やってくる。

 ジャリン……

「ふぅっ!」

「せぇェア!」

 その音と同時にハクとリーフは走り出した。

 その差はほぼ無いが、ハクの方が若干速い。しかし、それにも負けずにリーフは加速する。

 そして、ぶつかる瞬間に、二人とも相手に突進の力を乗せた重い攻撃(プランス)を繰り出す。

 リーフは、最初からハクに押し返されるのを分かっていたのか、ハクの力に抵抗するのではなく、受け流すように剣を滑らせる。

 リーフが使っているのは、ハクと同じく長剣で、性能はほぼ同じの武器だ。

 そこから両者引かず相手の攻撃を防ぎは攻撃する。その高速の動きにリーフはなんとかついていく。

「ハァッ!」

 そして、ハクはリーフの攻撃を上へと弾き、リーフを無防備にすると、右足に力を入れ、左前にでた。

 そこはリーフの背後だった。ハクは、リーフを通り過ぎると同時に剣を水平に滑らせる。

 そして、リーフに当たると思った瞬間、

「なっ?!」

 リーフは両脚を踏ん張り、後ろ側に飛んで一回転する。

 それでハクの攻撃は空振りに終わり、無防備になる。そこをリーフは見逃さず攻撃をする。

 一気に肘を後ろに引き、思いっきり剣先で突く(ブロード)。

 しかし、ハクは振り抜いた剣を、軌道に逆らい真横に振ってきた。その攻撃は同時打ちで、両者ともに弾かれる。

 そして、二人は一旦距離ができ、しかしまた走り出す。

「せぇぁぁアーーーーー!!」

「やぁァアアーーーーー!!」

 両者はぶつかり合い、互いの攻撃(プランス)で火花を散らした。

 そこで、ハクは攻撃の後そのまま横に剣を振り抜く。

 そこからもう二撃の四連撃(スクエア)が決まる。綺麗な四角形ができ、リーフは体制を崩す。

「せぇアっ!」

 そこをハクは襲い、倒れたリーフの首元に剣を突きつけた。

「俺の勝ちだな」

「四連撃なんて卑怯ですよ〜」

 確かに、Eランク同士での戦いで四連撃は反則じみている気もしないこともない。

「ま、これが勝負だし。手加減しない方がいいだろ」

「まぁそれもそうだけど……」

 リーフの顔には不満な顔が見て取れる。

「また今度教えるよ」

 そして、俺は時計を見る。すると、時計はもう十一時をさしていた。そろそろ準備をしないと集まりに遅れてしまう。

「それではハクさん。また後で」

「あぁ。じゃあな」

 俺は、リーフに別れを告げ、それからも稽古に没頭するのだった。

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