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ソード・レート・オーガス(SwordLateOgres)  作者: ♤Spade♤
第一章 〜失う哀しみ〜
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第一話 〜アラン〜

挿絵(By みてみん)

この世界には『ヒューマン』『オーガ』『モンスター』の三種類の種族が存在する。

ヒューマンは、地上の世界『グランドテリトリー』を占領し、文明を築いてきた。しかし、モンスター達は、ヒューマンとは別に、『アンダーテリトリー』という、地下の世界を築き上げた。

その二つの勢力は、互いの文明を守るため、終わらぬ争いを続けてきた。

そして、もう一つの種族、オーガは、グランドテリトリーに存在する種族だが、その数は少なく、稀にしか見ることはできない。

ヒューマン達は、モンスターとの争いを有利にするため、オーガの力を利用した。

結果、オーガの力を利用したヒューマン達は、モンスター達を一掃し、モンスター達がグランドテリトリーへの侵入ができないようにした。

それから、それからヒューマン達は、そのモンスターの落とす『スピリット』という結晶に目をつけた。そのスピリットには、特殊なエネルギーが含まれていることを発見した。それは、電気は火など、さまざまなエネルギーに代用できるのだ。

そしてそのスピリットを集めるべく結成した職業(ライセンス)、『狩人(ハンター)』が誕生したのだ。


***


「親父、俺そろそろ行くよ」

「何かあったらいつでも帰ってこいよハク。いつでも待ってっから」

俺は立ち上がり、顔だけ後ろを向く。そこには今にも泣きそうな母さんと、いつもは頑固な親父も暖かい目で俺を見守っている。

「それじゃあ、今までありがとうな。母さん、親父……」

そう告げると、俺は前に向き直り歩み出した。背中からは母さんの泣いている声が聞こえてくる。とても寂しかった。こんなことなら行かないでもいいんじゃないか。そう思うこともあった。でも、俺はハンターになるのが夢だから。

俺は重い足取りで、このグランドテリトリーの中央都市『アラン』へと向かった。


俺が育ったのはアランから東にずっと行ったところにある小さな村で、アランまではおよそ百キロはある。

俺には両親と、もう一人姉、エルがいる。姉はもう何年か前に先にアランへと旅立った。確かその時、俺は寂しくて号泣してたと、懐かしく思う。

俺は黒いロングコートと、背中には愛用の剣と、食糧の入ったバック。なかなかの重量を背負いながらアランへと目指す。


村を出発してから三日目、そろそろ披露が出てきた。地図を見る限り道はあっているようだが、少し不安でもある。周りは全く知らない平原の土地。草木しかない殺風景なところばかりだ。

少し休憩しようと重い、俺は近くにあった椅子に腰を下ろす。

バックから水筒を取り出し、乾いた喉に一気に流し込む。

「ハァ……」

それでやっと人心地がつく。

そして周りを見渡す。やはり周りは殺風景の平原が広がっているだけだ。

その時…!

「うおっ?!」

いきなり遠くから大きな爆発音が聞こえてきた。そこからは大きな砂埃がたっている。一体どうしたというのか。

俺はすぐさま立ち上がると、砂埃が消えるのを待つ。

数秒後、砂埃が薄くなって、二メートル程の影が見えてきた。

俺は目を凝らし、その影を見つめる。何やらモゾモゾしているので生き物だろうか。にしてもでかい。

そして、大きく動いたと思ったら、いきなりこちらに向かって走り出してきた。

「はぁあ?!」

俺は素っ頓狂な声を出し、一気に駆け出す。

「なんでこっち?!」

そう大きな生物に問いかけるが、やはり応答はないようだ。

そのままひたすら必死に走り続ける。後ろを向くと、もう化け物はすぐ目の前まで来ていた。その化け物は、大きな口と角、そして尻尾も生えていて、四つん這いで追いかけてくる。野獣種のようだ。

このまま走り続けても追いつかれてしまうと判断した俺は、バックを投げ捨て背負っている剣を鞘から勢いよく引き抜く。剣は鉄のインゴットを使った片手長剣で、村の一番の鍛冶屋に作ってもらったのだ。

その鉄剣を片手に、俺は振り向きざまに左へ跳ぶ。

そのまま受け身をとり一回転して体制を立て直すと、思いっきりそのモンスターに向かって走り出す。

「せぇェーーーェァア!」

そして水平に鉄剣をモンスターに叩きつける。そのまま二回、三回と攻撃して後退する。

すると、またモンスターがこっちに向き直り、一気に突っ込んでくる。

ゴォァーーーーーア!!

大きな咆哮とともに走ってくる。それを避けようと回り込もうとするが、相手も移動して避けることができない。そこで、俺は一気に賭けにでる。

剣を構えると、モンスターに向かって突き進む。そして、モンスターと衝突する瞬間に身を屈め、スライディングを決める。そのまま相手のしたに潜り込み、走ってく相手に向かって鉄剣で削りつける。

そして動きが鈍り、体制が崩れたところを、俺はすぐに立ち上がり攻撃する。

「クソッタレがァアーーーー!」

怯んでいる相手に連続の乱舞をぶちかます。

そして、相手の正面に回り込む。大きな口に向かって鉄剣を振り下ろす。それでも倒れない。そこで最後の一撃。

「おぉォーーーーーオ!!」

相手の顔の真ん中に向かって渾身の突きをお見舞いする。

すると、モンスターは力無く崩れ落ちる。そして、このモンスターはそれから動くことはなかった。

「ハァ…ハァ……ハァ…ハァ」

荒い呼吸を続け、一分後ようやく息が整う。それからすぐに剣を鞘に納めてバックを取りに行く。バックを背負うと、水を一回飲み、少しへたり込む。モンスターと戦ったのは初めてだ。あれほど迫力があるとは思いもしなかった。稽古をつけてくれたのは悪魔で人間だ。こんなでかいモンスターとの戦いはとても疲れた。これがハンターというものなのだろうか。

やっと一息つき、俺は立ち上がると、地図を広げ、再びアランに向かった。


それから何事も無く二日経ち、やっと人が見えてきた。商人な格好をした人や、腰に武器を装備した人、いろいろな人がいる。もう少しでアランのようだ。

俺は残り少なくなってきた水を大切に少し飲み、バックに戻す。着くまではなんとか持ちそうだ。

それからしばらく歩いていると、目の先に建物が密集している場所が見えてきた。その周辺にはとてもたくさんの人達がいた。

「あれが……アラン……」

俺はあと少しだと体に言い聞かせアランへとたどり着いた。


「凄い……」

アランにたどり着いた俺が最初に口にした言葉はこれだった。ただただ凄かった。生まれて初めてこんなに凄い場所にきた。俺はここまでの疲れも忘れその光景に見入っていた。

そして、俺は歩き出した。

周りにはたくさんの人々。格好はさまざまだ。建物にはたくさんの店が構えている。

しかし、今は店による時間はない。まず最初にライセンスオフィスに行って手続きをしなくてはならない。しかし、ライセンスオフィスなんて、どこにあるのかさっぱりだった。

俺はちょっと店の人に場所を聞く。すると、あっさり教えてくれて、言ってくれたとおりに進み、楽々とライセンスオフィスにたどり着いた。

それは大きな建物で、一体中はどうなっているんだろうと思いながら、二つの扉を同時に開き、中にはいる。

中もとても広く、天井が高い。目の前には何人もの社員がカウンターに並んでいる。男はあまり少なく、ほとんど女性になっている。正直話しかけにくいが話すしかない。

俺は深呼吸してから一歩一歩歩み出る。そしてカウンターの前に到着する。

俺は勇気を振り絞り言葉を発する。

「ら、ライセンス……」

しかし、カウンターの人は首を傾げ全く通じていない。

「あ、あの……この街に来るの初めてで、そのライセンスを決めに……」

それで伝わったのか、その人は笑みを浮かべ、机の下から用紙を取り出した。

「ライセンスの獲得ですね。では、この書類にライセンスとサインをお願いします」

渡された紙には名前、ライセンス、性別年齢など、いろいろとある。

名前はハク・セレクトス。男。十八歳。ライセンス『ハンター』。

それを書き終え、俺は用紙を手渡す。

「分かりました。では、登録を行いますので、しばらくお待ちください」

そういうと、彼女は慣れた手つきで空中のパネルを操作していく。

そして、あっという間に手続きを完了させた。

「これがライセンスカードです。これは自分の全てと言っていい情報が詰まっていますので、絶対になくさないようにしてください。それと、ライセンスカードからはこの街の地図が開けますので、ご利用ください。それでは、またのおこしをお待ちしています」

俺はライセンスカードを受け取ると、その場を後にした。


具体的なハンターの仕事などを説明すると、まず、ハンターはアランの北の方にある唯一のアンダーテリトリーへの入り口となっている洞窟から、アンダーテリトリーに入り、モンスターを狩り、その時にドロップするスピリットを納品店に持っていき、お金に買えて稼ぐのだ。

因みにアンダーテリトリーは、他の人達からはダンジョンと呼ばれていて、階層ごとに別れているとのことだ。現在確認されている層は百層程らしいが、どんどん層を潜るにつれてモンスター達も強くなって行くので、現在のハンター達でも、最大で四十層前後しか行けていないらしい。まだ未知のエリアが倍以上あると思うと、なんだかゾクゾクしてくる。

そして、高難易度の層に行くには、それに適したレベルに達しなければならないのだ。ハンターには、E、D、C、B、A、S、SS、SSSの八種類がある。しかし、まだSSSランクに達している者はいないらしい。

そして、ハンターは、自分のステータスを上げて自分の能力を高めるのだ。ステータスを強化するには、ただひたすらモンスターを狩るしかない。

そして、この世界には、ヒューマンと一緒に暮らしている鬼神というオーガがいる。鬼神というのは、ハンターのグループ、いわゆるギルドを結成することのできる存在で、ハンターはその鬼神に頼んでギルドに入れてもらうのが得策らしい。だが、俺には鬼神という人がどんなものなのかさっぱりわからないので、ギルドに入ることができないでいる。

そして今、俺はその鬼神を探すべく街を探索していたのだ。

(鬼神ってどんな人だろ……)

そんなことを考えながら、周りを見渡す。しかし、見る人見る人普通の人間。まったくわからない。そもそも何が特徴なのかさっぱりだ。

そのまま二時間程探したが、結局見つからなかった。俺は諦めて宿屋に向かうことにした。


宿屋の場所はライセンスカードの地図を使ってすぐに見つけることができた。しかし、早く物件を見つけないと毎回宿屋で止まる訳にはいかない。

俺は部屋のベットに腰を下ろし、ライセンスカードを見た。ライセンスカードには自分のステータスなどが載っている。

挿絵(By みてみん)

ステータスを見ると、やけに瞬発力と敏捷性が高かった。それと、スキルというところにある『挑戦者』と『スーパールーキー』というのは一体どういうものなのか気になって仕方が無い。明日ライセンスオフィスで聞いてみよう。

ランクはE。ランクを上げるためにはそれなりの実績が必要で、ライセンスオフィスがランク昇格の許可が得れない限りランクを上げることはできない仕組みになっている。

俺はライセンスカードをしまい、大きなあくびをした。

「………寝よ」

今日はもう疲れた。長々と歩いた披露が体を押し付ける。その体をベットに転がり休ませる。目を閉じると、すぐに意識が遠のいていき、俺はすぐに眠りについた。


***


翌日、俺はすぐに狩りに出かけることにした。実際食費や家賃なども払わなければならないのだ。

しかし、その前にまず、ライセンスオフィスに用があったので、行く前によることにした。

「あ、ハクさん。丁度いいところに」

中に入ると、一人の女性がロビーの椅子に座って俺を呼んでいる。一体なんなのだろうかと思い、俺はその女性の方へと向かう。

「えっと……俺、ですか?」

「はい。あなたのサポーターになりました、アリスです」

サポーター。それは、この街に来たばかりの人のライセンスのサポートをしてくれるもので、仕事などの情報や相談などにものってくれる。

「ハクです。えっとその、アリスさん。実はお聞きしたいことが」

「なんですか?」

「昨日ステータスを確認したんですよ。すると、スキルに挑戦者とスーパールーキーってのがあったんですけど、一体なんなのか」

俺は、ポケットからライセンスカードを取り出してアリスに渡す。

「ううん……私も始めて見ますね。一応調べてみます。何か分かりましたら教えてください」

「はい。分かりました。それじゃあ俺はそろそろ行きますね」

俺はアリスに別れを告げると、ライセンスオフィスを後にした。


アランの北に俺は来ていた。

「ここが、アンダーテリトリー、ダンジョンの入り口か……」

そこは、ダンジョンに繋がる入り口。それはとても大きく、中は光石という、青い光を放つ鉱石によって照らされている。その先は階段になっており、ダンジョンへと繋がっている。周りにはダンジョンへと入っていくハンター達がいた。俺もそれに続いて中へと入っていく。

「凄い……」

周りには光石の青い光が微かに輝いていてとても神秘的だった。

階段を下りて第一層へと向かう。

第一層はただの洞窟で、別れ道がたくさんありとても入り組んでいる。どこを行ってもほとんど同じ景色だ。俺は適当に洞窟を回った。

その時、奥から何かが走ってくる音がしてきた。

「モンスターか!」

走ってきたのは、片手に斧を持ったゴブリンだ。

洞窟のモンスターと対峙するのは初めてだ。以前よくわからないモンスターと戦ったことはあるが、あれはなぜあんなところにいたのかいまだに分かっていない。

それより、まずは今目の前の敵を倒すことに専念しよう。

俺は剣の柄を握り、鞘からゆっくり引き抜く。

「ふぅ……」

ゆっくり息を吐き、剣を構える。ゴブリンは俺より一回りも二回りも小さい。しかし、それでいてすばしっこい。ゴブリンはもう目の前まできている。そして、手に持った斧を振り上げ、斬りおろしてくる。それを俺は斜め上に斬り上げ、ゴブリンの斧を弾きとばす。

「せぇアッ!」

ギィィン。

金属同士がぶつかり合い鈍い音が鳴り響く。

体制を崩したゴブリンは、後ろに後ずさる。そこをすかさず斬りつけ、斧を斬りとばす。

「おォオォオーーー!!」

そして、ゴブリンの首元を斬りつけ、頭を吹っ飛ばす。

ギャェエアーーーッ………

そして、ゴブリンは断末魔とともに動かなくなり、バンっと音がしたと思ったら、光の粉となって消滅した。その下には、赤紫色の結晶が落ちていた。

「これが、スピリット……」

俺はスピリットを拾い上げ、腰のポーチに仕舞い込む。

一息つくと、剣を鞘に納める。

これが、俺のハンターとしての第一歩だ。これから、鬼神にギルドに入れてもらって、仲間もたくさん増やす。そして、一流のハンターになると、俺は胸に誓った。

「そのためには、まず力を付けなきゃ」

俺は、それからもダンジョンの奥へと突き進むのだった。

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