表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

1000pt以上作品 

歴女の私が婚約破棄されたので、計略を発動した。我が師は天才軍師、「諸葛孔明」

作者: 赤ポスト

とある作品に影響されて書きました。

「僕と別れてほしい」


よく冷房が効いた高級ホテルのエントランスで、目の前の彼は私に告げる。

私、20代後半のOLであり、歴女である南未来みなみみくにそう告げる。


私の婚約者の彼。

武勇に優れた猛将のように渋い彼。

結膜炎のため眼帯をしており、それが隻眼の将、夏候惇かこうとんを彷彿させる。

すらっと背が高く、着ているスーツが良く似合っている彼。

甲冑もよく似合いそうである。

顔の堀が深く、眼光が鋭い彼。

シャープな顎のラインが魅力的な彼。

馬に乗って、どでかい大剣を持っていないのが不思議な彼。

そんな猛将風味な彼が私にそう告げる。

まるで戦の宣言の様に。

「僕と別れてほしい」と。


彼の隣にいる白いワンピースを着た女性。

フリルがついた、キャミソールのワンピース 。

一目見た瞬間「いいなぁ~」と思い、私が秘かにネットで注文していたその服を着ている。

服はまだ届いていない。ポストに不在伝票が入っていた。

男性に対して、清楚で純粋な印象を抱かせるであろうその白い姿。

彼女は麦わら帽子まで被っている。

頬だけではなく、目の下までチークを施したその顔は、子供っぽいかわいさを演出している。

20代後半にもなって白いワンピース。

多くの人にとっては痛い悲劇を巻き起こす服装だが、彼女にはそれが憎たらしい程似合っている。

それが私の親友(笑)。

佐々木沙耶。

どことなく、中国後漢末期の女性、橋公の娘、小橋を意識させる彼女。

三国志の中で絶世の美人と呼ばれた彼女を。

三国志最重要決戦の一つ、「赤壁の戦い」の原因にもなった彼女の雰囲気。

あの戦では14万人も死んだといわれている。美女は人を殺す。

ハリウッド映画「レッドクリフ」は面白かった。


「ごめんね。ミクミク」


親友(笑)の沙耶が私に謝る。

ミクミクとは、ちょっと恥ずかしい私のあだ名だ。

「ミクミクって呼んでね!」っと、アイドルの様に自分から名乗ったわけじゃないけど、親友(笑)はそう呼ぶ。

頭を下げた動作で、かわいく白いワンピースが揺れる。

まるで騎馬の(たてがみ)のようだ。

麦わら帽子をかぶったまま謝る沙耶。

謝る時は普通帽子をとると思うけど、その辺りが彼女らしい。

彼女は天然だ。

親友(笑)だから知っている。それが計算天然であることも。

これが彼女の計略だ。

私が師と仰ぐ、三国志随一の天才軍師「諸葛孔明」を彷彿させる知略。

現代も乱世である。

私の婚約者の横に並ぶ彼女。

手が僅かに触れる程の距離感。

それが私の婚約者と親友(笑)、二人の関係を表している。



私が何も言葉を発しないと、


「ごめんね。ミクミク」


と、再び彼女は私に謝る。

私に声が聞こえていないと思ったのかもしれない。

ヒラヒラと揺れる彼女のワンピースのフリル。

まるで軍旗のように揺れる。

私は、我が師の敵、曹操軍の目印を思い出した。

赤壁で曹操軍と対峙した孔明様も今の私と同じ心境だったのかもしれない。


私は心の中でほくそ笑む。

来た!

時が来た!

逃すことができない一時が!


『今です!』という我が師、諸葛孔明様の声が脳内に響く。


それと同時に、浮かぶフレーズ。


『知者は時に後れず、勇者は決を留めず』


知者は好機を逃さない。勇者は決断をためらわないという意味である。

名門の武家に生まれた後漢末期の軍人、「皇甫嵩」の言葉である。

彼は「冀州統治」という政策を行い、市民から人気が高かった。乱世で生活が苦しくなった民のために、徴収した税一年分全てを飢民に与えたというのである。この政策に代表されるように、彼の人柄の良さは有名だ。彼が数々の戦功を挙げながらいずれも同僚の手柄とし、自らの戦功を論じることがなく、そのために恨みや禍とは無縁であった、と称賛されている。


そんな事を思い出しながら、私は心を決める。


「うっ!」


私は、僅かに声を出しながら、右手で胸を抑える。

小刻みに手をプルプル震わせながら胸を抑える。

顔は下げ、床を見る。

腰を僅かに曲げ、立ちくらみの様に数歩移動する。


「ど、どうした未来!」

「ミクミク、大丈夫?」


二人の声が聞こえる。

私は下を向きながら二人の足をよく見る。

近寄ってくる二人を上手く避けながらふらつく。

戦場で敵の刃をさけるように華麗にさける。

気分は戦場の花、姫武将だ。

敵兵の刃を華麗に避ける。

俊敏に動いてはいけない。

悟られてはいけない、この動きが意図的だと。

私は腰を強く意識し、どの方向にも動けるようにふらつく。

深夜の商店街、ガラス張りの店の前で練習した成果を今見せる。

上手くステップを踏みながら徐々に体勢を倒していく。


「う、うっ」


という苦しそうな掛け声も忘れない。


「未来!」


っと、私の体を支えようとする元婚約者の腕を、華麗に、優雅に、蝶の様にさける。

まだ倒れてはいけない。

まだ、倒れていはいけない。

獲物を待たなければいけない。


『自分の心は秤のようなものである。人の都合で上下したりはしない』


ふと、我が師、諸葛孔明様の言葉が頭に浮かぶ。

どこまでも私を助けてくれる師匠だ。

私は心を落ち着ける。


「ミクミク」っとかわいい猫撫で声。


来た!敵将だ!


床を向いている私の視界に映る白いヒラヒラ。

死神の鎌の様に揺れるそれ。

彼女の刃、いや手が私に差し出される。

私はそれを華麗に、優雅に、蝶の様にさける。


私は敵将とすれ違うと倒れこみながら彼女のワンピースのスカートを握る。

そして倒れこみながら、ホテルに置いてある高そうな壺に突撃する。

私の背丈ほどある壺。

エジプトの宮殿とかに置いてありそうな壺。

ゲームで壊すとアイテムがでてくるだろうそれ。

それを私は全力で倒れながら体重をかけて押し倒す。

普通に押すだけでは倒れない壺。

だが、私は細工していた。壺の下に僅かに木片を仕込んでいた。

それを蹴り飛ばすことで、壺の重心を揺らし、一瞬のすきをつく。

どんなに重い物でも、揺らせばたわいない。

敵将のスカートをにぎったまま私は倒れこむ。


目の前では壺が倒れ、隣にある大きな水槽にぶつかり、



バタン。

ガシャン。

ドシャン。

「きゃあ!」



同時に様々な音がする。

まるで私が初めて『八卦の陣』を見た時の様である。

休・生・傷・杜・景・死・驚・開の八門からなる陣形。

生・景・開を攻めると良く、杜・死を攻めると負ける、という理論。

あの時、私の心は震え、心の中で様々な音が鳴った。


頬に冷たい感触。

私はホテルのフロアに俯せに倒れている。


床冷たい。


高級ホテルのためか、見事に清掃されており、埃ひとつ見当たらないのは幸運だ。

私の目に映るのは、割れた壺の破片と、親友(笑)の無様に倒れた姿。

清楚な彼女の姿はそこには無く。

破れたワンピースに、壊れた水槽の中に会った海藻がからみつく彼女。

全身ずぶぬれで、生臭い匂いがする。


敗将の末路である。

いつの時代も敗者は姿は悲しいものがある。


彼女の腹の上では、鮮やかな色をした錦鯉がピクピクと元気よく跳ねている。

一匹ではなく何匹も飛び跳ねている。

何かねっとりとした液体が鱗からでている気もする。

日本に数匹しかいない、一匹数千万する伝説の錦鯉が飛び跳ねている。

口をパクパクさせている姿が愛らしい。

親友と錦鯉の姿。

これが噂に聞く、女体盛りなのかもしれない。


心中で、私は叫び声を上げる。


「―――怨敵、敵将、打ち取ったなり!!!―――」


床は二段になっており、私は上手く上の段に倒れ、水槽被害を逃れた。


計算通り!我が師、ついにやりました!


心の中では諸葛孔明様が長い顎鬚をモフモフ触りながら微笑んでいる。

私は心で喚起しながらも脈拍を止めていく


「救急車!救急車!えっと、きゅう・きゅう・しゃだから、991か!」


彼が騒いでいる声が聞こえる。

周りの人の騒ぐ声も。

まるであの激戦地、長江の赤壁のようだ。


私は意識が消えて行った。





◇◆◇





私は、彼に損害賠償を請求した。

婚約破棄による慰謝料を。

婚約破棄に動揺して私は失神した事になっている。

本当は私が会得した「死んだふり」の意図的に行使したのだが、それには気づかれていない。

意図的に失神できることなどばれるはずがない。


私がこの能力に目覚めたのは彼と親友(笑)のおかげだ。

偶々彼の車が公園に止まっているのを発見し、索敵班のように近づき、孔明の罠の様に彼を驚かそうと思ったら、彼と親友(笑)の二人は、車の中で愛ある行動を致していた。そこは、18禁後宮の世界であった。


それを見て私は失神した。

偶々草むらに倒れてダメージは無かった。


だがその日以降、私は意図的に失神できるようになった。


そしてホテルの日である。

私は事前にホテルを調べていた。

超高級錦鯉がいることを知っていた。

彼がもうそろそろ別れを切り出すことを予測していた。

そしてあの場面である。

全て計算通り。

孔明の罠である。



彼は、終わった。



彼は、私からの婚約破棄の損害賠償(通常の婚約破棄の慰謝料とホテルでの治療費(あの後、私は念のため入院した))+ホテルからの損害請求(主に錦鯉の損害。かわいいそうに、あの一匹数千万と言われた錦鯉は死ぬ一歩手間までいったらしい。延命措置と継続治療のため、莫大な費用がかかっている。買いなおす方がはるかに安いらしいが、歴史のある錦鯉は違う)で大変な事になっていた。



親友(笑)は、錦鯉恐怖症になったという。

又、何故か生臭い匂いがとれないらしい。

彼女に近づくと、不思議な生臭さを感じる。

偶々街で会った時、私が錦鯉の真似をして口をパクパクさせたら、彼女は失神した。




私はこの特技「死んだふり=意図的に失神できる能力」を使い、この乱世を生きていく。



ここまでお読み下さり、ありがとうございます。


熱くて頭が沸いていたのかもしれません。

いつの間にか書いていました。

私もよく分かりませんが、一応恋愛コメディです。



宜しければ他の作品もお読みください。

以下の作品は似たような空気です。

「婚約破棄された私は、激オコプンプン丸 (# `)3')▃▃▃▅▆▇▉ブォォォォ」


又、本日、連載中の以下の作品、2章完結予定です。

「彼氏と親友と乙女ゲーム転生。えっ、私はモブですか? 」



◇追記(夜)

三国志物?投稿しました。著者名からどうぞ。

「彼氏は三国志、隻眼の猛将「夏侯惇」 ※ただしヒモ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 天才軍師を師にもつ歴女(笑) [一言] 錦鯉恐怖症と聞いて、錦鯉お待ちどう!    、~ヽ。   }\/⌒ヾ、  /彡r、  ・`ω・)  レ~し~”∪∪
[良い点] 笑いました。 まさか、『歴史』(三国志)×『恋愛』(現代)とはww 作者は天才かwww [一言] 辛すぎるザマァ相手を癒すのはどこぞの仁愛主君(笑)でしょうか。 三国志について、なんか色々…
[良い点] 湧いてる作者の頭www天才w [一言] 脳内ナレーションが素敵すぎるwww。あっれ?三国志ってこんなんだったっけ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ