第十四話 後始末
モンハン4Gを手に入れたぜ!
でもまだ4をクリアしてない……。
だって、探索で出現するモンスターがLv95でめちゃ強くなって発掘装備が手に入らないんだもん!
一夜明けて、窟の外では焼け焦げた木が数本、辺りにはゴブリンの死骸だらけ。
ベテラン冒険者達の指示で街の冒険者ギルドに報告に戻ったり、傷の手当を受けたり、ゴブリンとの戦いで死んだ冒険者の遺体を穴を掘って埋め、弔いをしている。
流石に遺体を此処から遠い村々やケサラパサラの街まで運ぶ事は困難だ。
その為、冒険者の証明タグと遺品を回収して持ち帰り、遺体はその場で埋めてしまう。
これが通常の処置だ。
「被害はどれ位なんすか?」
イオリはシャーランに持っていた消毒薬や化膿止めなどの薬品をを渡しながら尋ねる。
「……死者十人に内、重軽傷者が二十名。 これだけ大規模なゴブリンの巣で少人数での制圧は奇跡です」
「たったの四十人で三倍の数のゴブリン達を殲滅したんすか!?」
目を見開き、驚愕するイオリ。
シャーランはイオリと会話しながら怪我人の手当に当たる。
「普通はそんな事しませんし出来ません。 本来なら一人前の冒険者やベテラン冒険者で固めて最低でも後三十人前後の人数を加えて制圧に掛かります。 今回は魔物や魔族の被害が同時に広範囲で発生し、その討伐で人手が足りず、人数が揃いませんでしたので。 その為に急遽、私や黒モヤ様、初心冒険者達が討伐に参加する事になったのですよ」
「黒モヤさんも来てるんすか!?」
イオリも闇属性の珠紋術『パラライズ』の応用で怪我人の怪我の痛みを麻痺させて傷口を縫うのを手伝う。
「黒モヤ様はオーガの群れの討伐に当たられておられます。 オーガは本来、群れる事などないはずなのですが……」
「でも、おいらそんな話聞いてないっすよ? 何で話してくれなかったんすか?」
「何分、連絡が来たのが就寝時間後でしたので、イオリ様を起こしてわざわざ心配させるような話しをする必要も無いと黒モヤ様のお言い付けもありまして、一応置き手紙を残して出てきたのですが……まさか、此処にイオリ様もいらっしゃるとは思いませんでした」
ジト目でイオリを見るシャーラン。
その視線からあからさまに顔をそむけるイオリ。
手早く怪我人の治療を済ませたシャーランは他の冒険者達から離れた場所に隠れて小声で話す。
「それと、イオリ様には申し訳ないのですが、ゴブリン・キングは私が倒した事にさせて頂ます。 イオリ様が倒したと言っても私以外に目撃者が居ませんので信用されませんし、無用の混乱は避けたく思います」
「それでいいっす。 別にゴブリン・キングを倒す事がおいらの目的じゃあないっすから」
話し合いが終わったイオリとシャーランの二人はゴブリン討伐隊の隊長の下へと赴く。 他にやるべき仕事が無いか確認を取る為に。
「怪我人の治療は終わりました。 他に私がやるべき仕事がなければこのまま帰らせてもらいたいのですが……」
「ちょっと待ってくれ! 今から洞窟内を調査して金目の物がないか調べるんだ。 その分前を分配しなけりゃあならん」
「それなら私は要りません。 ギルドから十分な報酬が頂ける事になっておりますので」
分前をあっさり辞退するシャーラン。
だがしかし、討伐隊の隊長はシャーランのその態度を不信に思う。
冒険者とは命を賭けて金を稼ぐ職業だ。
なのに、その金がいらないとあっさり辞退したのだから。
「私は飽く迄も臨時要員に過ぎません。 私の御祖父様……ホッポギルド支部長からの応援要請で動いただけですから」
「ホッポギルド支部長!? じゃあアンタ、ギルド支部長の孫娘のシャーランか!?」
「それが何か?」
首を傾げて尋ねるシャーラン。
「いやっ!? それならいいんだが……後で文句を言っても分前はやれないぞ?」
念を押す冒険者の隊長。
こういうトラブルは冒険者間ではよくある事なのでそれを心配しているのだ。
「構いません。 それに、これは私の本来の仕事ではありませんので。 それでもどうしてもと仰るなら、死んだ冒険者の方達の御遺族達にお支払い下さい。 死んだ彼等もそれを望むでしょうから」
死者には金は必要ないのだからと主張して冒険者達が自分達の取り分として全て分けるのが一般的だ。 実際に分配金が遺族に支払われる事は無いだろうが社交辞令のようなものとして言っておくシャーラン。
「……わかった。 それともう一つ。 ゴブリン・キングを倒したのはアンタか?」
「そうですが、何か?」
自分の言葉を疑っているのかと冷たい視線を向けて無言で抗議する。
「いや! 確認しただけだ。 気にしないでくれ」
顔を引き攣らせて苦笑いで気味で答えるゴブリン討伐隊長。
「それでは失礼致します」
討伐隊の隊長を務めた冒険者から背を向けイオリと共に立ち去るシャーラン。
「アレがダーク・エルフの鬼姫か……噂通りの凄腕なんだな……」
実際、ゴブリンの大半を葬ったのはシャーランである。
そのあまりの強さを間近で初めて見た冒険者達は誰もが驚愕し、圧倒された。
「ゴブリンに捕まえられていた娘達はこの後どうなるっすか?」
「親族や保護者が居るのであればギルドを通してその者達の下へ送られますが……居ない場合は各宗派の教会が運営する孤児院に預けられます」
「そうっすか……」
イオリも身寄りがなかったので、ペルセオン教会の孤児院に預けられていた事がある。 其処は決してイオリにとって居心地のいい場所ではなかった。
それもそのはず、その協会は混沌の女神ファリスの信者が半ば占拠していたのだから。
ただ、そう言う理由を抜きにしても、やはり孤児院というのは大多数の孤児達にとっては窮屈で居づらい場所なのは何処もかわらない。
「これで全部終わりっすか?」
「はい、ですのでお城に帰りま――あ! 言い忘れておりました! イオリ様、すみません! イオリ様の槍、無くしてしまいました」
「槍? ああ、黒曜石の槍っすか。 別に構わないっすよ。 アレは鍛造の道具が無かった時に暇つぶしで作った物っす。 欲しけりゃまた作ればいいっすから」
イオリの言葉にシャーランの顔は引き攣る。
プラス修正二十五もある魔導の武具をどうやったら暇つぶしで作れるのか?
イオリに直接尋ねる事にしてみた。
「うん? どうやって作ったかって? 森に転がってる適当な大きさの黒曜石をその辺の石で地道に叩いてそれらしく形を整えただけっすよ?」
そんな事で魔導の武具が作れたら誰だって作ってる! と、心の中でイオリにツッコミを入れるシャーラン。
聞いた自分が馬鹿だったと少しだけ後悔したシャーランであった。
と、其処へシャーランとイオリが助けたエルフの少女、レムネリアがイオリの下に駆けて来た。
「あの、助けてくれて本当にありがとう。 服、洗って返します。 だから、いつでもケサラパサラの街にあるウチの店に来て下さい!」
助かった安心感からレムネリアは普段の性格と言葉を完全に取り戻していた。
朝日の光の下に照らさる本来の彼女の姿。 白金の髪に紫の瞳、白い肌の美しい、笑顔のよく似合う少女であった。
イオリはレムネリアを助け出せて本当に良かったと心の底から思う。
「わかったす! 街に行く機会があれば取りに行くっす!」
イオリは我知らず、彼女に対して暖かな気持ちが心の中で生まれた瞬間であった。
後日談。
レムネリアの話をシャーランから聞いたセレネディアは『イオリに悪い虫が付いた!?』と大騒ぎだったのは言うまでもない。
やっとヒロイン出せた!
これで主人公と絡ませられる!