八話~
私が目を覚ましたときなんだか頭がぼんやりと暖かい気がした。
貴方は相変わらず私達に会いに来てはいなかった。
私が起きてすぐドアが開いた。
やっと会いに来たのかなんて思ったがドアを開けたのはあなたではなく母だった。
母から貴方が事故にあったことを聞いた。
貴方が私達に会う為に早退して病院に向かう途中事故にあったことも貴方が目を覚まさないことも母から聞いた。
私が鎖で大事に繋いでいたものを奪った奴がいる。
見つけ出してそいつを殺そうと思った
あなたをそいつから取り返さなければいけない。
退院すると私は真っ先にあなたに会いにいった。あなたの身体は生命活動を止めてはいなかった。
しかし、ベッドの上にあったのは中身のないただの入れ物だった。
私はあなたを取り戻す事を誓った。
そんな感じでシリアスモードに突入していた私だったがやっぱり赤ちゃんは可愛かった。
可愛いは正義だった。
私は赤ちゃんはあなたを私に縛る鎖だと思っていたけど私も赤ちゃんに縛られてしまったらしい。
それからはあなたのお見舞いに二人で行くのが日課になった。
午前中はあなたのお見舞い、午後はあなたの事故の調査。そんな日々が続いた。家に居ながら事故の情報を集めれるなんてあらためてネットの凄さを知ったわ。
一年と少し経ったある日、私はあなたの事故現場に立っていた。
あなたの事故には幾つか不可解な点があった。
一つはあなたが吸い寄せられるように車の前に飛びだした事。
車の前に躊躇いなく飛び出す動機があなたには無かったはず。
二つ目は事故にあったあなたの身体は全身になんらかの傷があったが命に関わる重大な傷は一つも無かった事。
身体の至るところに裂傷、骨折が見られたのに脳へのダメージは無く心臓や消化器系の臓器にもまったくダメージは無かった。
これは運が良かっただけかもしれないけどなにかひっかかったの……。
三つ目、外傷は治り内臓にダメージのないあなたが目をまったく覚まさない事。身体は生きているのにあなたがそこにいると感じない事。
なにか分かるかもしれないとあなたが事故にあった場所に藁にも縋る思いだった。