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GWをぶっ潰すー!!

「…こんちはー」


「こんにちはぁ!!」


「やぁやぁ、よく来たねぇ!あっちゅんにふーちゃん!」


GW(ゴールデンウィーク)前の今日、放課後いつも通り部室に向かうと今日は久々に全員が揃っていた。…まぁ、基本的に何か目的をもって活動してる訳じゃないから、仕方ないんだろうけど、実は入部して以降全員が揃った事無かったのだ


「にゃはは、全員揃ってくれて私は嬉しいなりぃ♪」


「…カオルが『今日は絶対来なきゃダメ!』なんて言ったんだろうが…」


『でも今この場に居るって事は、私たちもよっぽど暇なんですね』


「…そうなんだけどよ…」


一人はしゃぐ桜先輩をよそに阿見津先輩と時雨先輩は苦笑混じりにため息をもらしていた。…あんな部長をもつと、大変なんだろうな


「とにかく、早く話せよカオル。何かあるんだろ?」


「おっとぉ、そうだったぁ♪」


そして桜先輩は一旦落ち着き、本題を切り出してきた


「ゴールデンウイーク、皆暇かい?」


「アタシは暇だ。これといってやることはないよ」


『私も暇です。家に居ても本読むだけだし…』


「あたしも暇です!家の手伝いも無いですし!」


桜先輩の問いに時雨先輩、阿見津先輩、風が即答する。…暇人かっ!


「あっちゅんはどうなの?」


唯一答えていない俺に桜先輩は視線を向ける。…正直俺も暇なんだが、何をするか分からない以上、簡単に暇というのはどうなんだ?…よし


「何をする気なんです?」


「ほぇ??」


俺の作戦はこうだ。行くような気のある質問を投げ掛けて、桜先輩にポロっとその答えを言わせる。それで興味が無ければ適当に理由つけて断ればいいだけだ。いい作戦だろ?


「ん~と…遠足?」


「…は?」


しまった、うっかり口が悪くなってしまった。だが考えてみろ、遠足って学校の行事だろ?なんでそれを部活でやるんだよ!つか、遠足は高校生になったら普通やらねーし!!


「はぁ…もうちょっとまともな言葉があるだろ、カオル」


「え?だって遠足だよ?」


「要するに、ピクニックだな?」


「あぁ、そうそう!ぴくにっくぴくにっく!!」


桜先輩が笑顔で答える。…もしかしてこの人、遠足=ピクニックなのか?…でも実際この二つの違いはいまいち分からないな


「だそうだ、河内。理解できたか?」


「あぁ、はい」


「で、どこに行くつもりなんだ?」


「ん~と…、ん~…。…」


「考えてない、と」


「てへ♪」


桜先輩はおどけながら笑い、時雨先輩はため息をついていた。…はたから見たら姉妹に見えなくもないな


「仕方ない…ピクニックをやるのはいいとして」


「え、いいんすか?」


「何か用事でもあるのか、河内」


「…いえ、無いです」


何故か知らないが、時雨先輩って威圧感あるんだよなぁ…


「…で、弓佳。行きたいところはあるか?」


時雨先輩はまず阿見津先輩に聞き始めた


『…海?』


「それは海水浴」


『近くの公園』


「それはピクニックにはならない」


『瞳先輩、贅沢だよ?』


「アタシは普通のつっこみをしてると思うんだけどな…」


何故か立場が逆転してる…なんかほほえましいな


「次、朝野」


「私ですか?私は近くにある森なんてどうでしょう?晴れてたら気持ちいいですよ?」


「森か…そういう答えを待ってたよ、朝野」


「えへ~、お役に立てて光栄ですっ♪」


…森なんかあったか?


「河内」


「俺っすか?…う~ん…やっぱ妥当なのは山かなと」


「山か…確かにノーマルだな。だけど…」


時雨先輩が目配せをした先には豊満な胸を揺らしながら


「普通の場所じゃヤダ!!」


と言う、部長の姿が…。…子供かよ…


「…なんか他に無いか、河内」


「…だったら鍾乳洞なんかどうです?それならピクニックでは行かないですし…」


俺が何気なく言った一言。正直ピクニックには向かない場所。なのに…


「それいいね!はい、けてーいっ!!」


桜先輩が拳を振り上げ、決まってしまった。今回分かったことは、桜先輩は「普通」を好まないって事、変人って事、そしてこの部活はなんか家族っぽい空間が完成してるって事だ


「じゃ、明後日の9時、鍾乳洞前に集合ねー!」


そして、ショー部はGWに鍾乳洞へピクニックをすることになった…



「…ちわーす」


『おはよう。早かったね?』


「…いや、もう集合時間の5分前っす。実際これでもかなり遅く来たほうじゃないんすかね?」


『ショー部は基本時間には縛られないからね?』


「でしょうね…」


GW2日目、俺は部活のメンバーと約束した通りの時間帯に鍾乳洞入り口前に辿り着いた。ただ…集まったのは阿見津先輩のみ。まあ、集合時間になったわけじゃないし、気長に待つとしましょうか


五分後…


「悪い、待たせたな?」


「あ、時雨先輩。ちわーす」


待ち合わせ時間丁度に時雨先輩が合流した。だけど風と桜先輩がまだだな。…まあ、まだ時間あるし、気長に待とうか


十分後…


「…来ないっすね」


「カオルは時間の縛りがないからなあ」


『気長に待つしかない』


「…しゃあないっすね」


30分後…


遅い、遅すぎる。なぜ来ない…


「時雨先輩、桜先輩のアドとか知らないんすか?」


「知ってはいるんだけど…今電源切ってるみたいでね。繋がらないんだよな」


時雨先輩は困り顔で答える。…電源ぐらい入れとけよ!


「す、すいません!遅れましたあっ!」


そこに風が現れる。…おいおい、お前までなぜ寝坊した…


「ば、バスを間違えて逆方向に行っちゃって…!」


…まあいいや。これで残るは、桜先輩のみ…


「おはよーっ」


…噂をすれば何とやら。桜先輩がいらっしゃいましたよ


「ごめんねー、ちょっと車が止まっちゃって…」


「車?」


「ああ、カオルは桜財閥の一人娘なのさ」


「桜…財閥っすか」


名前だけは聞いたことはある。確かここら辺一帯の産業の総括事業を受け持ってる会社だよな。…社長令嬢なのか


「よーし、皆集まったみたいだし、ここいらでやっちゃおうか、ひとみん!?」


なにやら桜先輩が時雨先輩に了解を得たようだ。そして桜先輩は右手をグーに握り、拳を突き上げ叫ぶ。


「じゃあ、ここら辺でショー部ぴくにっくを実行しよー!」


はい、またよくわからない話が始まりましたよー



「にゃは~、すっずしぃ~♪」


「…そうっすね」


俺たちショー部は今、鍾乳洞にやって来ている。…正直この時期には少し寒い…。そのわりに部長…桜先輩はピンク色の半袖ワンピースではしゃいでる。…たくましいこと


「アタシは比較的こういうのは好きだな。この風情は中々だ」


上下ジャージの時雨先輩は桜先輩と同様上機嫌だ。だが眼鏡をかけ制服姿の阿見津先輩は…


『帰りたい、寒い、狭い、怖い…』


と、俺に見せてくる。肘を抱え、目線は様々な所に動いてる。…さすがインドアっぽいとは思ったけど、凄いな


「あっつんはこーいう所、好きなの?」


そしてYシャツにデニム姿の風もなんか怖がってる様だった。…珍しいな


「好きじゃないが、なんか楽しくないか?」


「ん~…いまいち分かんないや」


「よぉ~し、このまま奥へしゅっぱぁつ!!」


桜先輩の号令で皆が進みだした。先頭から桜先輩、時雨先輩、俺、風、阿見津先輩の順で自然と列が出来上がっている。…こうみたら、確かに遠足っぽいな


「あっるっこー、あっるっこー♪私はっ元気ー♪」


片や元気に歌う人


「…うぅ、帰りたいなぁ…」


『同じく』


かたや帰りたがる人たち。…不思議な集まりだな


「…ふふっ」


そこで不意に時雨先輩が笑だした。なんか俺、変な顔してたかな


「どうしたんすか、時雨先輩」


「いや、この部も賑やかになってきたなと思ってな。…カオルも楽しそうだ」


「そうっすね~…」


部にはいって1ヶ月、遊んでばっかだけど、結構楽しい部に入った気がする…



「…随分広いところに出ましたね」


「やっほー♪秘密基地みたいっ♪」


俺たちは道なりに進んでいくと、開けた場所にたどり着いた。そこで時雨先輩は荷物の中からブルーシートを取りだし、その場に引いた


「じゃ、カオル。ここらで昼飯にしようか?」


「そだねー♪お腹空いたし、食べよっかぁ♪」


時計を見るとちょうどお昼時だったので、時雨先輩の提案で皆でシートで座り、各々の弁当を広げた。…と言っても、俺はコンビニ弁当だけどな!?


「それにしても、随分広いな、河内。どれくらいの深さなんだ?」


「ここがたしか道半ばで、後少しで最奥っす」


「そうか、ならもうすぐか」


時雨先輩と談笑する俺。最近気付いたのは時雨先輩は残り二人(桜先輩と阿見津先輩)と比べると常識人だって事だ。おかげで自称凡人の俺もなんとかこの部でやってけるのだ。…断じて時雨先輩が男っぽいからじゃないぞ


「んじゃ、ご飯も食べたし、奥に行くよぉ!」


そして昼食も過ぎ、また桜先輩を先頭に歩き出す。そして間もなく最奥に着いた。そこは鍾乳洞が長い年月をかけ作り出した幻想的な世界が包んでいた


「わぁ~…」


風は目を輝かせて、この景色に見とれていた。幼馴染みでも、ここには誘ったことはなかったからな


「大したものだな、河内。よくこんな場所を知っていたな」


「いやいや、俺も最近知ったんす。気に入ってもらえました?」


「ふっ…カオルの様子を見たら分かるだろう?」


時雨先輩が見ていた先には尻餅をついた桜先輩が居た。どうやら驚いて転んでしまったらしい。だが表情は笑顔だった。桜先輩はすぐ立ち上がり、ワンピースについた埃を払って俺に近づいてきた


「あっちゅん、ありがとー♪」


そして俺の手を握ってきた。…生まれて15年、今まで一回も女性と手を繋いだことがない俺(可哀想とかいうなっ!)にとっては、とても衝撃的な出来事だった…


だが、そんな余韻に浸る暇は無かった。手を離された次の瞬間だった


「いぇーっ!!」


「は…!?うぎゃぁぁああっ!!」


桜先輩が俺の顔面に拳をぶちこんだのだ。どうやら手を離して喜びを爆発させた時に手を振り上げたんだろう…。…な、なん、だよ…何なんだよ、それ…


そのまま俺は意識を失った。消え入る意識の中、時雨先輩が何かを言ってた気がするが、俺は聞き取れなかった…


「カオルが興奮したら、何をしてがすか分からないから気を付けろって話、しとくべきだったね…」


…まじ…かよ…

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