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夏場のショー部も、変わらぬ毎日…

太鼓の音が町中に響き渡る。今日は希望町で一年に一度だけ開かれるお祭りだ


「…今日は祭りか…」


俺は今日は全く予定がない。というのも、携帯はならず、妹は中学の友人と祭りにくりだしている。部活は桜先輩からメールで


「今日は休みだよ♪」


と伝えてきた。…なーんか嫌な予感はするけど…


「…ん~、どうすっかな…」


正直祭りは見に行きたいんだが、一人で行くのは寂しいんだよなぁ…


「…部の誰かを誘うか…?」


いや、待て待て待て。…風はまぁ幼馴染みだから良いとしても、他の面子は…


「デートになるじゃん…」


第一、今日休みの理由ってもしかして祭り?俺ハブられた?


「いやいや、あまり考えるな俺。…そんな事は無いだろ、うん」


…不安になってきた


「…」


そこで急にインターホンが鳴る。…誰だ?


「…」


ドアについてるレンズを見てみると、鳴らしたのは黒いスーツを来た女性だった。…知り合いにそんな人いたっけ


「…どちらさま?」


とりあえずドアを開ける。スーツを着た女性はそれに気付き、お辞儀をして入ってくる。…まずい、誰だか分からない


「…河内様、今お暇ですか??」


「…すいません、その前に貴女が誰だか俺にはちょっと分からないんすけど…」


俺が申し訳ないように聞くとスーツの女性は再びお辞儀をし…


「申し遅れました。私はあのバ…いえ、大道寺憐香の執事をしております、草影(くさかげ) 奏夢(そうむ)と申します。あのバカ…いえ、お嬢様とお付き合いがあるのでしたらこれからもお会いすると思います。その際は奏夢とお呼びください」


「…憐香の執事っすか。…すごい金持ちなのは知ってたが…」


憐香はどうやら執事を家に寄越したようだ。だがまだ理由が分からない。どうやら俺の用事によるみたいだが…


「第一、どうやってうちに来たんすか。俺の家を知ってるのは風くらい…」


「その朝野様にお聞きしました」


どうやらグルらしい。…となると部単位で動いてるのか、断るとなんか面倒な事になりそうだな…


「…まぁ、暇っすけど」


「そうですか、でしたら私と車で集合場所に向かいましょう。それがショー部の部長、桜様からの伝言です」


「…ちょい待つっす。集合場所なんて聞いてないっすよ」


「お任せください。車に乗れば連れていって差し上げます」


「……」


…さっき雇い主の憐香をバカ呼ばわりしてる事といい、この人中々の…意地悪…


とりあえず断るとまずそうなので、俺は奏夢さんについていった…



「…デカイ車っすね」


大道寺の家の車で移動している。車には全員乗ってもまだ余裕があるくらいデカイ車だ。ヴァンだ。とりあえず俺は最前列に座り、運転手は奏夢さん(てことは歳は18よりは上か)がいる


「意外と素直についてきましたね、河内様」


「…ついて行かなかったら部の代表がうるさそうっすからね」


「あぁ、あの(微)少女ですか」


「…引っ掛かる物言いですね」


「私は人を見る目があると自負していますので。桜様はおそらく中身が残念なお方かと…」


奏夢さんがクスクスと笑う。…おっしゃる通りで



ほどなく祭り会場に着いた俺たち。だが皆はその会場にすぐは行かなかった


「祭りと言えばぁ~??」


「「浴衣!」」


と、女性陣が声を揃えた位だ、多分着物をレンタルしに行ったんだろう。…その間俺は、少しふらつくとするか


「お待ちを」


「いっ!?」


何故か手首を握られ、奏夢さんに止められる


「…な、何か…?」


「あ、申し訳ありません。河内様がとても理解不能な行動を取ろうとしていたので、つい」


「つい、でそんなに力強くやるかよ…」


「とにかく、です。皆さんが浴衣を着てくるのですよ?それを待つのが良いのではないですか?」


「確かにそれも分かるんすけど、結構時間もかかるでしょう?だったらその間でも見て回れるかなって…」


そう話すと、奏夢さんは深いため息をついた


「…はぁ…これでは主人公スキルも台無しですね」


「なんすかそのスキル」



「こんな素敵イベント、中々ないでしょう?(微)少女達と共にお祭りなんて…」


「あ~…」


どうやら奏夢さんは結構な乙女心を持っているようだ。…やっぱり言い方は引っ掛かるが



そんな感じで話してる間に女性陣は浴衣を着てやって来た。…うわぁ…さすが皆元がいいだけに可愛いなぁ…


「あっつ~ん♪しばらく振りの浴衣~♪」


風は水色の浴衣。水玉模様がまた可愛らしい。…昔に何回か着てるの見たことあるからあまり感動はないが…


「…私はこういうのは苦手なんだが…」


時雨先輩は赤の浴衣。帯がリボンの形に縛られてるせいか、いつもの様な豪胆さ(?)は影を潜めてるな


「…どう、草影?」



「バカなりには似合ってるのでは?胸も小さいのですから浴衣に助けられてよかったですね」


「…好き勝手に言ってくれるわね…!!」


憐香は黒を基調とし、所々に鳥の模様があしらわれた浴衣。…確かに胸は小さいから、浴衣が様になってる…


「淳、失礼なこと考えてますかしら?」


…目を逸らすか


「…」


阿見津先輩は薄い緑の浴衣。そしていつもしている眼鏡をかけてないせいか、別人に見えてくる。…べっぴんだな


「下駄がカランコロンって…なんか祭りって感じだねぇ♪」


桜先輩はやはりピンクの浴衣。模様で桜があしらわれてる。そして桜先輩は部一の巨乳(グラビア程じゃないが)のせいか、浴衣なのに胸の大きさが見て取れる。それに髪を後ろで束ねてるからうなじが見える。全国のうなじファンが見たら卒倒するくらい美しい…


「じゃ、行こっかぁ♪」


そしていつも通り桜先輩を先頭に、ショー部の祭りの練り歩きが始まった…



「…この町の祭りも代わり映えしないなぁ」


「ま~ね~?」


俺たちショー部は今、希望町のお祭り会場に足を運んでいた。俺の隣には風がいる。とりあえずは皆自由行動と言うことで、皆ばらけてるのだ


「いらっしゃい、兄ちゃんに姉ちゃん!どうでい、1つ買ってかんかい!?」


「…お、たこ焼きか。おじさん、1パック!」


「あいよっ!」


俺はとりあえず近くにあったたこ焼きの店でたこ焼きを一パック買い、1つを自分の口に、もう1つをとりあえず風に渡す


「あふっ…あっつん、昔からたこ焼き好きだよね~?」


「んむ…まぁ、滅茶苦茶うまいからな」


「はむっ。…確かにね♪特にお祭りで食べるものって何でもおいしいんだよねぇ♪」


「そうだな。…うん、うまい」


だが実際祭りで何をやるかと言われたら、よく分からない。風は楽しいんだろうが、俺は元々出歩かないしな…



「うぁう!?…また破れたぁ…」


『甘いですよ、カオル先輩』


「…容赦ないな、弓佳」


近くで桜先輩、時雨先輩、阿見津先輩の三人が金魚すくいをしていた。手元の皿を見てみると、どうやらすくえてるのは阿見津先輩だけらしい。阿見津先輩の皿には既に3匹金魚がいた


「楽しんでますか、先輩方?」



とりあえず俺は風を連れ、桜先輩達に話しかけた。…風もやりたそうだったからな


「う~ん…楽しいけど中々連れなくて大変なんだよぉ~…♪」


「確かにすくえてるのは阿見津先輩だけっすね」


「そうなんだ。…やっぱり私はこういう慎重な作業は苦手だ」


時雨先輩は苦笑いを浮かべて席を立つ。その席には風が座り、おじさんに網を貰っていた


「阿見津先輩がこういうの得意なんすか?」


「…ん…」


「…!?あ、阿見津先輩!?」


今…声が…?


『気のせいだよ』


阿見津先輩は少し焦ったように携帯の画面を見せてくる。…気のせいか…?


「ま、とりあえず桜先輩、風をよろしくお願いします」


「え、あっつん?」


俺の言葉に風が驚いていたが、まぁ当然だ。俺は金魚すくいをやる気はない。風もすぐにそれを察した


「じゃああっつんは時雨先輩と?」


「いや、俺はちょっとそこら辺をぶらつくよ」


「じゃあねぇ、9時に公園に集合してくれるぅ?」


桜先輩がこんな事を言ってくる。…なんかやるのかな


「了解っす」


そして俺はその場を後にし、祭り会場をぶらつく事にした…


「…ふう」


近くのベンチに腰掛け、買ってきたコーラを飲む。…最近希望町は若干人減ってきてるって話だったが…それが感じられないくらいにぎやかだなぁ…


そんな事を考えながらふと、視線を横にずらすとなにやら騒がしい男女の一団があった。女性陣は…桜先輩に、風、阿見津先輩?…あの男達にナンパされてるのか?とりあえず俺は気付かれない程度に近くに行ってみると…


「…だから、構わないで下さいって…」


「あぁ?別にいいじゃねぇか?三体三だ、一緒に遊ぼうぜぇ?」


「でもぉ…私は貴方とは遊びたくないかなぁ?」


「そんな連れないことを言うなよ、姉ちゃん?」


…思いっきりナンパだな。男共はなんかヤクザっぽい感じの奴等で、下手に逆らったらヤバイような気がするんだけど…桜先輩と風がその不良と話をしてるようだ。阿見津先輩は桜先輩の影に隠れ怯えてる。…可愛いのは罪だなぁ…


「おい、あんたら」


「あぁ!?なんだ貴様!」


声をかけて速攻絡まれる俺。…あんときよりタチ悪いなぁ


「…そいつらの連れなんだが」


「連れだぁ!?こんな貧相な男がか!?」


「貴様の様な男にはこんな子は似合わねぇよっ!!」


…その通りっす。だけどここで退くのは嫌だな


「釣り合わないのは事実でしょうが、それはヒガミかなんかっすか?だって俺はいやがられてないんすよ?ねー?」


「「ねーっ♪」」


俺と桜先輩達が目配せする。実はここでの俺たちの行動には裏があったのだが、相手はまるで気が付いていないようだ


「…テメェッ…」


どうやらこれが相手の琴線に触れたようだ。…よし


「あ、あっつん!?」


「とりあえず桜先輩?」


「んぅ?」



この状態でも動じない桜先輩。…さすがだな


「この三人、何秒でくたばりますかね??」


「ん~…10秒もったら良い方じゃないかぁ??」


俺と桜先輩が揃って笑う。…実は、俺たちは怖いという感情はないんだ。何故かって?


「お前ら…シメテやるわぁ!」


不良が俺たちに殴りかかろうと足を踏み出した時だった。不良達は何かの力によって足止めを食らった


「うげっ!…誰だこらぁっ!」


不良達が後ろを振り向くと…



「随分と面倒事を作ってくれてるじゃないか、カオル?…おいお前達、私の友人なんだが?」


「憐香様のお連れの方が面倒事になってるようなので、とりあえず助太刀です。これでよろしかったですか?」


「…ベストタイミングっす、お二人!」


時雨先輩と奏夢さんがとてつもなく怖い顔で不良の襟を引っ付かんでいた。実は少し前から後ろに居て、アイコンタクトを取ってたのだ


「…貴様らぁ…!!」


不良達の顔色がみるみる青くなっていく。残った一人の不良も俺たちに掴みかかろうとするが


「…いっ…!?」


「おっと、アンタもアタシが相手だ。…じゃ、カオル、合図頼む」


その不良の襟も時雨先輩が掴んでいた。そして時雨先輩、奏夢さんが桜先輩を見る。桜先輩は満面の笑みで…


「おバカさん達を…ぼこぼこにしちゃぇ~♪」


「「はいよっ!!」」


「「ぎゃあああっ!?」」


こうして俺たちは不良を撃退するのだった。…ショー部の女性陣、これじゃ彼氏出来ないよな…アグレッシブすぎだろ!?


不良を撃退し、夜9時になったため俺は集合場所として指定された公園に向かった。そこには既に全メンバーが揃って居た


「あ、あっつんきた♪」


「…遅くなりました」


「いんやぁ、ちょーどいいよぉ♪…じゃ、皆来たのでぇ、花火をやろっかぁ♪」


桜先輩が持っていた袋から花火が出てきた。その花火を地面に置き、袋を開けた。中にはいろんな種類の花火があり、皆好きな花火を持つ


「じゃあここにロウソクつけておきますわね」


憐香がロウソクに火をつけ皆の輪の中に置く


「終わったらこのバケツな?」


時雨先輩が水が入ったバケツを置く。


…よし、準備は出来たな


そして皆が花火に火をつけ、花火が始まった。

色々な光が皆の手の傍で輝く


「うわぁ~…♪」


桜先輩が目を輝かせてる。…一番こういうの好きだよな


「弓佳ーっ!」


「…?」


「おらーっ!!」


「!!?」


時雨先輩が花火を振り回しながら逃げる阿見津先輩を追いかけ回す。…時雨先輩、キャラが…


「…綺麗ですわね、草影」


「はい、バカよりは断然キレイですね」


「この後に及んで侮辱ですの!?」


憐香と奏夢さんがダベりながら花火をしている。…やっぱ憐香には厳しいんだな…


「…あっつん?火、消えてるよ?」


「お?…あぁ、マジか。新しいのに火つけるか」


「じゃーはい、これ♪」



風から新しい花火を受け取り、火をつける。赤い光が俺と風を照らしていた


「…今日は中々濃い1日だな」


「そうだねー♪」


「…風は、この部活にはいってどう思う?」


「ん~…楽しいよ?学校生活もショー部のお陰で楽しい思いしてるし…」


「…同感だな。中学の時代を比べればな…」


「…あっつん…」


風が少し寂しそうな顔をしてる。…中学時代、実は俺は荒れていた。小、中を階段で進学していて、1学年1クラスしかなかった為、顔ぶれが基本変わらなかった。その中で風の様な奴と知り合えた一方で、当然仲が悪い奴も出てくる。俺はクラスの女子大半を敵に回していた。理由は風とよく俺が絡んでいたのだが、他の女子に対しては冷たくあしらっていた。それが気にくわなかったのだろうな。そしていつしかクラスから仲間はずれにされた。担任も見て見ぬふりだ。…唯一ちゃんと見てくれてたのは、風だった。中学時代に俺がなんとか過ごせたのは、風のおかげなんだよな。…だが、それのせいで俺は今まで彼女というものを作ったことがない。…信用が出来ないんだ


「…あっつん?」


「…え?あ、なんだ?」


知らぬ間に皆に囲まれていた。…女子ばかり…この風景…


「…おい、河内!アンタ風のなんなの!?」


「何か脅してるんじゃないの!?」


「違う!俺はそんな…」



「アンタの様な奴、嫌いなのよ!」


「朝野さんが可哀想よ!アンタ見たいなキモ男と一緒だと!!」


「…なんだと…!俺が友達じゃ悪いってのか!」


「そうよ!!アンタじゃなくてもっとふさわしいのが居るのよ!」


「アンタなんか死んじゃえ、バーカ!」


…風…



「河内、河内!!」


「…へ?」


時雨先輩に声をかけられ、我に帰る。皆が心配そうな目で俺を見つめてる。…これは過ぎ去った事なんだ。…気にする必要は無いんだ


「いや…ちょっとボーッとしてただけっすよ」


「…ほう?」


時雨先輩が怪訝な顔をしていたが、すぐに口元を緩めた。…ありがとうございます、時雨先輩


「…じゃあ、あっちゅんが気付いたからぁ、最後に線香花火をやるよぉ♪」


桜先輩は皆に線香花火を渡し、火をつける。皆が花火を囲み、余韻に浸るのだった…

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