さて、今回のショー部は…
「もう少しで夏休みも終わりだねぇ♪」
「…そうっすね」
とある日の部活、部長の何気ない一言が部室で聞こえた。中間試験も終わり、学校ではもう休みの空気になってる。今日の部室には憐香以外のメンバーがそろっていた。何でも、憐香は今日家の用事らしい
「うにゅ~…なんか反応が冷たいよ、あっちゅん?」
「…いや、なんかぼーっとするんすよ、暑いんで」
「確かにねー、暑いよね~♪」
この人は暑かろうか寒かろうかあまり関係ないだろうな…
「いや~…涼みたいっすねぇ…」
部室には扇風機が部屋の真ん中にあるんだが、基本的に部長の方に風を向けてるため、俺には風の恩恵は受けられない。配置としては部屋の真ん中にテーブルがあり、四つの面を見てみると俺の前に部長、左側に阿見津先輩、右側に時雨先輩がいる。風は俺の隣にちょこんと座っている
「扇風機使うぅ?」
桜先輩が扇風機の首をこちらに向けてくる。あ~、あったかぃ…
「風が生温いっす
「まぁ、今日は暖かいからねぇ~」
「暖かいで片付けるな、カオル。…にしても暑い…」
時雨先輩は汗をぬぐいながら桜先輩に突っ込む。Yシャツの第2ボタンまであけて、中から黒いキャミソールが覗く
「…河内、アンタいったいどこを見てる」
「あ…いや、別に…あっついなぁーと…」
「ふぅ~ん…」
ヤバイ、目が据わってる。怖い
『あっづい』
そして机に突っ伏す阿見津先輩。なんか心なしか溶けてるような…
「…阿見津先輩、扇風機使います?」
『うん』
扇風機の首を阿見津先輩に向ける。髪が風に煽られてる
「…合宿しよ!!」
「「ちょっと待て、なぜそうなった!?」」
全員から突っ込みを受ける桜先輩。…なんでいきなりそんな話になったの!?なんの前触れも無かったじゃん!!つか、文化部なんだから合宿なんて要らないし!
「…桜先輩、いきなり何を言い出すんすか」
「ん~?私は真面目だよぉ?♪」
「いや、真面目とかじゃなくて。もしかして暑さで頭やられました?」
「むぅー!私の頭はそんなに弱くないもん!!」
急に怒り出した桜先輩。いや、そう叫びたいのは俺たちだよ!?
「…そーですか。じゃ、合宿、やるんですか?」
「やるぅ!」
「待てカオル。さすがにそれは無茶だ」
すかさず時雨先輩が突っ込む。うん、さすがに無理だよね?
「いや、出来るよぉ?元気があればなんでも出来るよぉ♪」
…アントニオなんちゃらか
「とりあえずぅ、合宿地とかは私が準備するからぁ~♪お願いだよぉ~♪」
なんか桜先輩が時雨先輩にしがみついてる。…まさか、折れないよね?
「…仕方ないな…ちゃんと準備するんだぞ?」
折れたぁー!?
「ちょ、ちょ待ちっす!!時雨先輩!?」
なんとか時雨先輩の目を覚まさせようと聞いてみるが…
「なんだ河内。部長命令だから従おうじゃないか?」
「…」
と、時雨さんに諭された。…俺もショー部色に染まったなぁ
「じゃー、来週の日曜日の10時に高校前のバス停集合でぇ♪」
ということで、来週の部活動は合宿らしいよ…はぁ…
合宿をする事を決めたショー部。とりあえずその日の部活がおわり家に帰ってきた
「…あ、そういや持ち物とか何も言ってなかったな」
合宿そのものが桜先輩の思い付きなのである。当然の事ながら準備するものが分からない
「…まぁ、一週間後って言ってたから、あせる必要もないんだがな…」
と、そう考えてると携帯が鳴り出した。…電話をかけてきたのは桜先輩だ。なんか準備するものあったのか?
「…はい、もしもし」
『あ、こんばんはぁ~♪ひょっとして寝てたぁ?』
「桜先輩、まだ10時っす。まだまだ寝ないっすよ」
『そっかぁ~、私は眠いからもう少しで寝ちゃうよぉ?』
なんの報告だよ
「…で、用件はなんすか?」
『あぁん、あっちゅんは冷たいなぁ?…えっとぉ、あっちゅんは合宿の時、私にどんな水着来て欲しい?』
「…は?」
何を言い出すんだろうこの人。なんで俺にそんな事聞くの!?
ただ、聞いてる本人は大真面目らしい。電話口からは
『ね~ぇ~、あっちゅん~?聞いてるぅ~?』
と、甘ったるい声が聞こえてくる。…答えなきゃいけないらしいです、はい
「…桜先輩なら何を着ても似合うと思いますよ?だから自分で好きなの着てたらいいと思うっす」
勿論、お世辞なんかじゃない。グラマラスでモデル体型の彼女ならまず間違いなくなんでも似合う。
それにあの天使スマイルが一緒になれば男性陣は間違いなく悩殺だ
『ふにゅ?それは誉められてるのかなぁ?』
電話口から疑問符が飛んでくる。…こーいうこと、鈍いんだろうな。今までどれだけ男を泣かせたんだ?
「誉めてますよ」
『そっかぁ~♪』
電話口からでも桜先輩が微笑んでいるのが分かる
『水着の事は分かったよぉ♪皆にもそう伝えておくねぇ♪』
「…はい?皆?」
なんか今、よく分からない言葉が聞こえてきた気がする。…今、桜先輩の話をしてたんだよな、俺
「あの、桜先輩?」
『それでね~、当日なんだけどぉ~』
「聞く気ナッシングですか」
よし、諦めよう。聞いても絶対教えてくれない
とりあえず桜先輩がまだ話があるようなので、その話を聞くことにしよう。気にしちゃダメだ
『海でやれるスポーツって、何あるかなぁ?』
「スポーツっすか?」
『うん』
また突拍子も無い話だ。…なんでスポーツ?
「とりあえずはビーチバレーに遠泳、後はビーチフラッグが結構一般だとおもうんすけど…」
『…びーちふらっぐ?なぁにそれぇ?』
桜先輩はビーチフラッグに食いついてきた。…なんなんだ?
「簡単に説明すればうつ伏せの状態から少し遠くにさしてある旗をダッシュで奪い合うゲームっす。先に旗を取った方が勝ちっす」
『ふにゅ~ん…』
何やら電話口で考え事をしてるようだ。…ぁ
「もしかして、何をして遊ぼうか考えてます?」
『うん♪』
やはりか。だとするとビーチフラッグは遊ぶのには向かない。あれは戦争だ。まして俺以外は女性だ
「だったらビーチバレーでよくないっすか?ちょうど今部員も六人ですし…」
『そうだよねぇ~…』
何やら本気で悩んでいるようだ。常にぽわんとしてる人だが、やっぱり部長。しっかりするところはしっかりしてるな
『とりあえず分かったぁ♪…今日はとりあえず寝ちゃうよぉ♪』
「そうっすか、じゃあ寝ますか」
『うん♪とりあえず必要な物はまた連絡するねぇ♪おやすみぃ♪』
「お疲れっす」
電話が切れる。…そういや、なんで俺に相談したんだ?
とりあえず考えるのが面倒になったので、俺も寝よう。うん、そうしよう
「…うーっす」
「おはようございまーす!」
「お、来たねぇ、あっちゅんにふーちゃん!時間ぴったりだね♪」
「さすが凡人」
「時雨先輩、それは暴言っすよ!?」
『朝から賑やかだね?』
「…本当に、騒がしい連中ですこと」
「…言われ放題だな」
夏休みに入ったある日の朝、俺らショー部はこれから合宿である
「…で、桜先輩?これからどこに行くんすか?」
「とりあえず私の家が持ってる別荘だよぉ?」
「…は?」
…別荘?
「そうか、河内に言ってなかったか?」
『カオル先輩の家はお金持ちなんだよ?』
「…なんとなくそんな話をしていたような気がしますけど…」
どうやら今日の目的地は海沿いにある別荘のようだ。…なんで海沿いかと言えば、昨日桜先輩から来たメールだ
『うーみーにーいーくーのーだー♪だから水着用意!』
…というメールが来たんだよ。まぁ、合宿するって言ったときからまぁそんな気はしていたが
「……揃ってる…みたいだね…」
「!?先生!?」
なぜかいきなり羽根黒先生が現れた!…なんで?
「…顧問…だからね…」
あぁ、そうか。引率か。丁度よかった、男一人で心ぼそかったんだよな
「……見送りに…来たんだ…」
「見送りかよっ!?」
俺は全力で突っ込んだ!!だって普通は顧問は引率だろ!?どんだけ自由なんだよこの部は!!
「…だって…僕が居たら…楽しくないよ…?」
「暗いわ!!そんな事ないと思いますよ!?」
朝イチから無駄に暗い先生。…はぁ…
「ま、いいです。…じゃ」
「バスも着いたし…いっくよー!!」
「「はーい」」
桜先輩の掛け声で、皆がバスに乗り、移動が始まった
バスの中の座席は後ろに憐香と風。真ん中の列に時雨先輩と阿見津先輩。そして俺は何故か最前列で桜先輩と並んで座っていた。なんでもこの座席配置は部長命令らしい
「~♪」
部長はさっきから上機嫌に鼻唄を歌っていた。…楽しそうだな
「…でさ、ウチのクラスの…」
「…♪」
「あ、憐香ちゃん。おやついる~?」
「…仕方ないから、いただきますわ」
「じゃあどれがいい?」
それぞれがそれぞれで楽しんでるようだ。…さて、着くまで寝ようかな…
「寝るなんて許さないよん♪」
「…!?」
え?…桜先輩、心の声を呼んだの!?
「じゃーさぁ、おねーさんとお話しようかぁ♪」
「なんか随分扱いがガキくさいっすけど」
「まぁまぁ♪よいではないかぁー?」
そんなこんなで一時間後、バスは無事桜家所有の別荘にたどり着いた。皆がそれぞれ荷物を部屋に置き、海辺に出てくる
「…まさか、ここ全部つかっていいんすか?」
「うん♪ここは私の家の私有地だからねぇ♪」
見渡す限りの青い海。ここが貸しきりだとは正直思えない
「じゃ、着替えよっかぁ♪」
すると女性陣は自分達の部屋に行った。どうやら水着に着替えるそうだ。…今歩き回ったら覗きの疑いかけられて殺されるな。…憐香辺りに
「…にしても…本当に来たんだなぁ…合宿に。この部の活動目的はピンと来てないが、どうせまた何かやらなきゃならねぇのかな…?まぁ、いいけどさ」
そう独り言をいいながら居間のソファに寝転がる。…女子の着替えは、時間がかかるんだよな。…少し、寝よう
「…おっそいなぁ…」
女子が着替えるといい自分達の部屋に行って数十分経ったんだが、何故か皆の着替えが終わらない。別の部屋から随分と賑やかな音が聞こえてはいるが…。
「…お、おやめに…!!」
「にゅふー♪待つのだ憐にゃん~♪」
「ひ、ひゃぁぁあ!?」
…なんか、悲鳴っぽいような声が聞こえてくるのは気がするのは気のせいなのか?気のせいにしておくべきなのか?
「…男が一人ってのは、肩身が狭いな…」
「たのーもーー!」
するとドアが思いきり開き、風が飛び出して来た。だがその格好がまた…
「…お、お、おま…」
「ん、どしたのあっつん?」
風が来てきたのは青いフリルつきのビキニを来ていた。…やばい、知らぬ間にめっちゃ大人になってんな、風。とにかく…ボディラインがやばい、そして何故か可愛い
「…あっつ~ん?」
「ん?ぁ、あぁ…」
「どぉ?可愛い?♪」
風はすごい近くに寄ってきて聞いてくる。…いやいや、近い近い近い!?
「ち、ちょ…風!?」
「ん?」
「…ち、近い…」
「んん?…恥ずかしいの?」
なんか風がすっごい笑顔だ。…嫌な予感…
「…そうか、恥ずかしいのか」
「にゅふ~、可愛い奴だなぁ、あっちゅん♪」
『…恥ずかしい…』
「殿方にこの様な姿は見られたくないのだけれど…」
…皆様が、水着になっていらっしゃいました
「…えーと…」
「もぉ~、可愛いなら可愛いって言ってくれないとぉ♪」
桜先輩はピンクのパレオだ。…大人だ、マジ大人だ
「河内、気の利いたセリフは無しか?仕方なく水着を着たのに残念だ」
全く残念そうな顔を見せない時雨先輩はスポーツタイプの水着。だが競泳用のではない。これはまたこれで味があるな
「ジロジロ見るな、この変態!!」
「うげっ!?」
勢いよく俺にローキックをかましてきた憐香は黒いビキニだ。…妖艶な色気が憐香から感じ取れる。だがそれを悟られたら俺はまた蹴られる。間違いなく蹴られる。そして阿見津先輩は…あれ?
「…阿見津先輩?」
『…ぅ~…』
時雨先輩の影に隠れ、携帯の画面を見せてくる。挟まれた時雨先輩はため息をついている
「弓佳…諦めたらどうだ?どうせ海に向かったら見られるんだし…」
『でも…恥ずかしいし…』
阿見津先輩が時雨先輩に抵抗してる。時雨先輩も困り顔だ。だけど、この状況は長くは続かないんだよなぁ…
「ゆ~み~ちゃ~ん??」
桜先輩がスゴい顔で阿見津先輩を睨み付けていた。…なんか、目が怖い
「…ちょぁーーっ!!」
そしてスゴい速さで阿見津先輩の後ろに回り込むと、脇腹をくすぐりだした
「…っ!!?」
阿見津先輩はたまらず時雨先輩から離れてしまい、俺の前にたってしまう。阿見津先輩の水着は、青いスクール水着だ
「…」
「…」
どう反応しろと!?確かに変だけど、変だけどさ!?俺に何を求めるのさ!?
『早く海行く!!』
阿見津先輩が携帯に慌てて打ち込む。皆はそれを見て笑いながら海岸に出る
俺たちの眼前には青い海。天気も運よく晴れた。…合宿の滑り出しは悪くないな
「よ~しぃ、皆で記念写真だ~ぃ♪」
桜先輩は持ってきた三脚とカメラをセットし、皆をカメラの前に集める
「皆で好きなポーズで映るんだよぉ?写真に映るときも楽しくぅ♪」
桜先輩の注文は今回はさほど難しくなかった
「タイマーセットぉ♪…じゃあ皆でぇ、チーズぅ♪」
「「いぇーっ!!♪」」
桜先輩と風は顔の前で両手ピース、時雨先輩は握りこぶしを前に突きだし、阿見津先輩は何故か招き猫、憐香は腕を組みながらも口元はしっかり緩んでた、そして俺はガッツポーズ…これから始まる合宿が、楽しいものになりますように!!




