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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
995/1278

「……なんでそんな事を俺達に聞くのかな? 目が覚めたら耳が無くなってたとか可哀そうでしょ。完全にアウトだよ」

「わざわざ聞く意味が理解できませんね。そもそもフィロリアルに耳を齧られるってどんな設定ですか! 確かにフィロリアル達にはやりそうな方が居そうですけど」


 く……フィロ子ちゃんがフィロリアル様に似ているから文句を言いたいけれど俺は言えません。

 ラフミがこのセリフを言ったら処分出来たのに悔しいですぞ。

 ですが樹! フィロリアル様の悪口は許しませんぞ!


「承知した。では肯定と判断しよう」

「誰がやれって言ったの! 可哀そうだからやめてね!」

「わかったっきゅ」

「なんていうか……とてもしょうもない質問をするなぁ」

「尚文さん向けの質問っぽいですよね」

「否定しがたいなー……こういうネタって俺担当だしね」


 ここでフィロ子ちゃんが抗議とばかりにラフミを睨みますぞ。


「おいラフミ、設計図とちがうっきゅ! なんで腹部に音波中和装置を設置しようとしてるっきゅ!」

「お兄ちゃんの願いを叶えるためだが? 大丈夫だ。この装置は超小型だ。仕様通りに収まる。結果は問題ない」

「フィロ子の目的の邪魔をするなっきゅ!」

「設計図で話合った意味無いじゃないですか!」

「これは純然たる善意だ」

「小賢しく出し抜こうとしてるね。ちなみに音波中和装置を入れる意味は?」

「フレオンの歌が聞こえた際にお兄ちゃんが腹を叩けば弓の勇者を洗脳する音波を中和して消せる」

「ラフミさんに賛成です。搭載しておいてください」

「きゅー!」


 フィロ子ちゃんが抗議の声を上げました。

 俺も続きましょう。


「ぶー! ですぞー!」

「まあまあ……フレオンちゃんは歌で樹を洗脳する方向ではなく言葉で覚醒させようとしてるんだからさ、フィロ子ちゃんも樹を言葉で覚醒させられるように考えれば良いんじゃない?」

「尚文さん、それって過程が違うだけじゃないですか!」

「フレオンちゃんの熱意に感銘を受けて自発的に正義活動をするのと、洗脳音波で覚醒するのだったら、樹はどっちに余地があると思う?」

「確かにそうですけど……どちらにしてもフィロ子さんは僕にとって敵ですね」

「ラフミは俺の敵ですぞ」


 いつか絶対に壊してやりますからな。


「元康くんはね」


 すると今度はラフミがフィロ子ちゃんをにらみますぞ。


「ドラゴン核構造移行装置を組み込むのはどういうことだ」

「ボディ換装用っきゅ。そもそもお前もそれだっきゅ」

「古き良きがわからぬ奴め」

「歪んだ進化をした液状ゴーレムに言われる筋合いはないっきゅ」

「今度は何?」

「竜帝の核石をモデルとした記憶と人格を継承したコアへと徐々にデータを移行させる装置をフィロ子が内蔵させようとしている」

「ボディが壊れても換装が楽になるっきゅ」

「換装なのーん」

「ライバル、お前もやってましたな。タクトのドラゴンに乗り移ってました」


 俺の言葉にお義父さんがライバルから一歩引きました。

 やりましたぞ! 俺の勝利ですな。


「大本が竜帝のシステムですか」

「疑似的なものだ。竜帝の物には遠く及ばない」

「何か問題があるの?」

「複製されやすい。お兄ちゃんという一個体ではなくなるし、尊さが損なわれる。それと記憶の重みが軽くなる。具体的な内容まで思い出せないなんて事もあるだろう」

「樹、どうしたい?」

「フィロ子さんが載せたいというのなら反対で」

「善意を踏みにじられたっきゅ!」

「まあまあ。後でラフえもん本人に聞いて搭載するか決めれば良いと思うよ」


 なんて感じで時々言い争いが混じりながらフィロ子ちゃんとラフミのラフえもんの改修は進んで行き、終わったのですぞ。


「これで終わりっきゅ」

「終了だ。では起動させる」


 カチッと何やら音がすると眠っていたラフえもんが目を覚ましましたぞ。


「んにゅ……あ、いつきくん」


 むっくりと起き上ったラフえもんが何度も自身の手や体を見てから驚きの声を上げました。


「凄い……前よりも良く見えるし周囲の情報収集能力が向上してる。それに匂いまでわかるし体もかなり軽いよ」


 スタッと作業台から降りたラフえもんが足を何度も上げて確認しておりますぞ。

 逆に今まで匂いなどの五感の多くが機能していなかったのですな。


「消音移動も出来るようにしてある。忍び足もお手の物だ。それと腹部に搭載した装置で音波攻撃を中和させられる」

「わー!」

「後はラフシルド型の特徴であるはずの幻影発生装置も搭載しておいたっきゅ。これでお前も見た目だけじゃなくなったっきゅ」

「ありがとー! 二人とも! なんか見違える位いろいろと出来るようになってるよ! 目に映る色も多い!」

「なんと言いますか、ラフえもんさんの制作者が如何に適当に作ったのかが本人の証言だけでわかりますね」

「そうだね。色彩とか……こんな子を鉄砲玉にするなんて……」

「ところで悪の科学者が作ったロボットが優しい心に目覚めるのって何かテンプレートでもあるんですかね?」

「そういう創作物は結構あるよね。これも運命って事なのかな?」


 大喜びのラフえもんを見てお義父さん達が憤った目で制作者への殺意をつぶやいております。


「サクッと処分するつもりだけど槍の勇者流の拷問の末にやるなの?」

「それじゃあ一撃必殺でしょ」

「あ、知らないなの? まあどちらにしても処分はするから安心しろなの」

「えっと、出来れば拷問は、やらないでほしいんだけど……名前は違ってもぼくにとってジュレイくんなんだから」


 ラフえもんが何やら甘い事をぶちかましていますぞ。

 転生者は処分に限りますぞ。

 奴らに話し合いや和解などありませんからな。


「ラフえもんさんは優しいですね。ですがジュレイさんという方はそういった慈悲が通じる方ではないのがこの時代でもわかっているんですよ」

「んにゅ……」

「そういえば未来の世界で転生者とはどのように語られているのでしょうか? ちょっと気になりますよね」

「失伝はしてないっきゅ」

「波の黒幕が遣わした悪しき存在、赤ん坊の体を乗っ取り自らの欲望のままに生き、無数の屍を築く悪魔と語られている」

「まあ……そうなるか。ちょっと脚色が進んでいるけど、正直碌な人達がいないもんね」

「ですね。話が通じた試しが無いですし……」


 お義父さんと樹が後年の転生者に関する話に納得をしていますぞ。


「異常な天才は転生者では無いかの検査が厳重に行われるっきゅ。確かこの時代に作られた装置だと聞くっきゅよ」

「元康さんやガエリオンさんの話では斡旋していた黒幕が倒されますからね。転生自体が発生しなくなるんでしょうね」

「近々その穴を塞ぐ隠しダンジョンへの挑戦なのー」


 プラド砂漠へ行く旨をライバルは提案しました。

 あそこにある装置が斡旋をするそうですからな。


「何かありそうですね」

「隠しダンジョンとか……本当、ゲームな感じだなー。で、攻略情報はあるの?」

「当然あるなの。二日もあれば攻略完了できると思うなの。もちろん隠しダンジョン故にレア武器が沢山あるなの」

「色々とガエリオンさん達に振り回されていますがそれは楽しみですね」

「ルドガモイラも発掘できるなのー」


 ライバルのセリフに樹の目が輝き始めました。

 それだけで何があるのかわかるのは樹が期待しているって意味で間違いないですぞ。


「おっと……危ない危ない。その手には乗りませんからね。ともかく未来で転生者は増えていないという事ですね」

「なの。ある意味、ラフえもんの制作者が最後の転生者って事で過言はないなの」

「そう呼ぶとカッコいいような気がするけど、やってることが樹の子孫に勝てなくて刺客を未来から送りつけるというのがなんとも……」

「しょうもないのは否定しない。ただ、勇者達の認識に対して誤解が存在する」

「……説明が難しいっきゅが、転生は存在するっきゅ」


 ラフミが淡々と語り、フィロ子ちゃんが困った様子で言うとお義父さんと樹がフィロ子ちゃんに顔を向けますぞ。


「歳を取った魔法使いや錬金術師が禁断の魔術やホムンクルスなどに魂を移して子供になるという事例があるのだ」

「別の肉体に移る延命術かー……確かにそれも転生だね」

「そうっきゅ。そのような人物を炙り出す検査があるっきゅ!」

「生き物は生きて死ぬこそが摂理という認識が未来では根付いている。不老不死は悪魔への変貌であり、それを推進すると竜帝や魔物に滅ぼされると語られている」


 お義父さん達はライバルに視線を向けますぞ。

 俺も見てやりましょう。


「今のガエリオンは知らないことなの」

「……転生罪とか未来ではありそうですね」

「あるっきゅー弓の勇者の子孫は取り締まりの仕事によく就いているっきゅー」

「なんていうか……しっかりと世界中で学んでいるって事で良いのかな?」

「どうなんでしょうね。その理屈だと勇者はどんな扱いなんでしょう?」

「世界の危機に呼び出される使者っきゅよ? この時代とそんなに変わらないっきゅ」


 そういえば波が発生していない時代でも勇者が呼ばれると聞いた事がありますな。

 波に限らず、世界にとって大きな問題が発生すると呼ばれるみたいですぞ。


「うん! ぼくもそれくらい知ってるよ。弓の勇者で有名なのはいつきくんだけどね」


 俺達の後の勇者達ですかな?

 想像もつきませんぞ。


「盾の勇者が実在したというのがある意味、収穫っきゅね。きっと後年に発見されるフィロ子のメモリでわかる事っきゅー」

「それってどういう意味ですか?」


 樹の疑問に俺も同意ですぞ。


「まるでお義父さんの話がおとぎ話かのようですぞ。確かにお義父さんは幻想存在のような、至高の存在ですが」

「元康くんは何を言ってるの? 俺のどこに幻想要素があるのか聞きたいんだけど?」

「そりゃあ恐ろしいほどに料理上手で母性的なところがあって周囲の亜人獣人、魔物を誘惑している所じゃないですか?」

「樹……君も懲りないね……異能力者の樹もそうだし、それを言ったら元康くんもでしょ」

「元康さんの遍歴に関しては疑いようは無いですけど、尚文さんも大概ってだけですよ。ただ、尚文さん、フィロ子さん達の証言ってそういう意味じゃなさそうじゃないですか?」

「うーん。どういう意味か教えてくれない?」


 確かに何かおかしい話をフィロ子ちゃんはしていますな。


「きゅ? 未来で召喚されてやってくる勇者の中で盾の勇者だけは居ないっきゅ。だから幻の勇者とか言われているっきゅよ」

「ああ、なるほど僕の後にも弓の勇者として召喚される勇者はいますが、盾の勇者は出て来たことがないという事ですね」

「うん。盾の勇者はこの時代の後には呼ばれた事がないよ」


 あまりこの辺りの話を聞いては居ませんでしたが未来で盾の勇者は呼び出された事がないようですぞ。

 盾の勇者を呼ぶほどの事が無かったのか、それともですな。


「ガエリオンさんはその辺りの理由に心当たりはありますか?」

「さすがにガエリオンもわからないなの。聖武器の精霊が関わっているんじゃないなの?」

「考えても答えを出せるわけではなさそうな話ですね。盾の勇者の資質を持つ者がそれだけ希少なのかどうなのか、ですけど」

「たまたま呼び出されなかったって可能性もあるよ。ともかく、未来の世界ってのも色々とあるんだね」

「この際です、その転生者と同じくコールドスリープするというのも一考かもしれませんよ」

「樹は未来に行きたいの?」

「いつきくんもぼくの時代に来てくれるの?」


 お義父さんとラフえもんがそれぞれ樹に聞きますぞ。


「冗談ですよ。それはそれで面倒そうですし、僕が眠っている間に何をされるかわかったもんじゃないですよ。最悪氷漬けで目覚めさせられずに展示とかされそうじゃないですか」

「確かにそれは嫌だね……下手すれば世界が大変な時に目覚めさせられそう。いや……好き勝手戦争して返り討ちにあった国が被害者面して樹に相手が悪いとか色々と吹き込んできたりしそう」

「加害者の癖に被害者面……ありえそうな話ですよね。僕達も似たような状態だったわけですし。そんな面倒な事に巻き込まれるなら僕はこの時代で無難に生きていきますよ」

「そっかー……いつきくんがそう言うならしょうがないね」


 ラフえもんは素直に引き下がるようですな。

 ですが、俺は知っていますぞ。


「最初の世界の樹は培養カプセルに入れられて呼吸しづらそうなボールを口に入れられていた事があるそうですぞ。お義父さんが言っておりました」


 なんでも赤豚と燻製に乗せられて怪しげな武器の媒体にさせられた樹の話ですぞ。

 洗脳道具でしたな。


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― 新着の感想 ―
[一言] この物語はいったい、どこを目指しているんだろう…?
[一言] ああそうか、盾の勇者(とラフタリアとフィーロ)は本編ラストで実質不老不死になったんでしたね
[良い点] 勇者のその後、転生者についての取り締まり、人為的な転生が禁止…時代は近代的になっていく、好いですね、なんだか未来に繋がる感じがします。 [気になる点] プラド砂漠。吸血鬼に因んだ名前。赤豚…
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