表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
971/1279

第三のメルフィロ


「え?」


 お姉さんが獣人化ですかな?


「ガエリオンの知るラフーはそんな事出来なかったなの。これも発見なの?」

「嫌な事実が判明しそうなんですけど……」

「試しにやってみるのはどうだ?」


 お義父さんが心なしかワクワクしている様に見えますぞ。

 俺の気のせいですかな?

 しかし、こんなお義父さんは珍しいですな。


「試したくないです」

「まあまあ、じゃあお姉さんがやり方を教えるからちょっと練習ねー」

「コウも変身出来るよーこうやるんだよーんーっぱって感じー」


 コウはフィロリアル姿と天使姿を交互にして見せますぞ。


「フィーロと同じく教えるのが下手だな、お前」


 なんて感じでパンダがキールに犬姿になる方法を教える様にお姉さんのお姉さんはお姉さんに獣人化の術を教えました。

 するとポンと音を立てて……お姉さんはラフ種によく似た獣人姿になりました。


「あら?」

「わー……」


 お姉さんのお姉さんとコウがそれぞれ一言つぶやきましたぞ。

 お義父さんはじーっとお姉さんを凝視しています。


「ラフー」


 周囲に沈黙が支配しました。

 クラスアップを施して貰い色々と雑談をしていたエクレアや老婆等もお姉さんへと視線が集中して行きましたな。


「ど、どうなっているんですか? と言うかこの手って……」


 無言でお義父さんは鏡の様に反射する盾でお姉さんを映しました。


「な、なんですかこれはぁああああああああ!?」


 お姉さんが叫びますぞ。


「これは驚きなの。ラフーにラフーの限界突破を混ぜるとラフーになるなの」

「ライバル、もっとわかりやすく説明すべきですぞ」


 確かに驚きですぞ。

 お姉さんがこんな姿になるループがあるのですな。

 いえ……俺がループを脱出する時のお姉さんがラフ種姿でしたからこれも可能性としてあると言う事なのでしょう。


「何を冷静に分析しているんですか! 元はと言えばあなた達がラフちゃんを作らねばこんな事にはならなかったんですからね! 前々から思っていましたが幾らループしていてナオフミ様の事を知っているからと言ってやって良い事の限度と言う物が――」


 お姉さんが俺とライバルに詰め寄っているとお義父さんがお姉さんの背後に回り込んで脇を掴んで持ち上げますぞ。


「ふむ……」

「な、ナオフミ様?」


 お義父さんはそのままお姉さんを持ち上げたまま歩き出しました。


「ナオフミ様? 私をどこに連れて行くんですか? ナオフミ様!? ナオフミさまぁああああ――――!?」


 そのままお義父さんは行ってしまいました。

 お姉さんが困惑していましたな。


「ラフー」


 いつの間にかお義父さんから降りていたラフ種がコウの頭の上に乗り、そんなお二人に手を振っておりますぞ。


「コウ知ってるよーイワタニがね、ラフーを撫でながらラフーがこんな風になったら良いなって言ってたのー」

「そ、そう言えば最初の世界のワイルドなおふみはラフー姿のラフーを撫でまわしたいって言ってたなの」

「言ってましたな」

「あらー……ナオフミちゃんったら可愛い所あるのねー」


 なるほど、あのお姿はお義父さんからするとお姉さんを可愛がれる理想の姿と言う事なのですな。


 それからしばらくして、お姉さんは満更でもない顔をしておりました。

 そして俺達には特に注意する事はありませんでした。

 きっと良い事があったのでしょう。

 複雑な顔はしておりましたが悪い顔はしておりませんでした。


 後、少ししてお姉さんが槌の七星武器に選ばれました。

 戦力強化されましたな。

 ただ、お姉さんが槌の七星武器を手にした時に『限界突破をする前に手に入れたかったとも思います』とつぶやいていたのが印象的でしたぞ。




 ある日、のどかな夕食時ですぞ。


「ガエリオン、そろそろあっちの世界を平和にしてくるなの」


 ライバルが楽しい村での団欒時にお義父さんに進言しました。

 お姉さんはお義父さんにとても優しい笑顔を向けて貰いながら世話をされていてまんざらでもなさそうな顔をして食事に意識を向けております。

 子供を愛でる親の様に見える光景ですぞ。


「あっちの世界?」

「ガエリオンの竜帝としての知識の元があった世界なの。グラスって扇の眷属器の所持者がいる世界と言えば分かるなの?」

「ああ……グラスか。どこかで再度戦うかと思った所だったが……そういえば波って世界融合現象だったんだったな」


 お義父さんには俺とライバル経由で波の戦いとはどういうものであるのかが説明していたのですぞ。


「アイツの世界を平和にねー……」

「本来は争う必要は無いなの」

「そういやお前等は一応ループしているんだったな」

「並行世界を移動していると言うのは間違いないなの」


 お義父さんは俺を見ますぞ。

 何やら同情している様に感じますな。


「ループがどうやったら終わるかの模索か?」

「それもあるけど、後味が悪いと思うからやっているだけなの」

「後味?」

「説明すると長いから掻い摘んだ方がワイルドなおふみは好むと思うから言うなの。ループが発生している世界範囲は、このなおふみの世界とあっちの世界……最初の世界で波で融合した世界みたいなの」


 おや? そうなのでしたかな?

 俺としては扇豚の世界など正直どうでも良いですぞ。

 ですがライバルは……そう言えば最初の世界で扇豚の方の世界の竜帝の欠片を集めて、最初の世界のライバルと争っていたのでしたな。


「ふむ……じゃあ他の異世界にはお前等も行けないのか?」

「そうみたいなの。入ろうとしても誰でも弾かれるのはこれまでのループで試して分かった事なの」

「どうして元康がループしているかの謎がありそうだな」

「最初に槍の勇者がループしていたのとは異なり、しっかりと並行世界が存在しているのは間違いないなの。そう、ガエリオンを想ってくれたなおふみは確かに存在するなの」


 うぐ……ライバル、あのお義父さんを語るなですぞ!

 愚かな俺の罪ですぞ……ああ……何時か感謝を伝えられる時が来るのですかな……。


「で、なんでグラス側の世界に行こうという事になるんだ?」

「あっちの世界にも世界を滅茶苦茶にしようとしている転生者共が暴れているなの。放置しておくと荒らされ放題なの。例えループしているとしても後味が悪いのは分かるはずなの」


 俺としては割とどうでも良いですな。

 ですがー……確かシルトヴェルトに行った時のお義父さんもその辺りの話を聞いて調査していた覚えがありますぞ。


「まあ……世界融合現象って事はグラスって奴も好き好んで倒しに来た訳じゃないだろうしな」

「なの。ついでにグラスともある程度話を付けて争わない様に交渉しておくなの」

「そうか」


 お義父さんが助手に視線を向けますぞ。

 助手の方はお義父さん達の視線を受けて困ったように眉を寄せますぞ。


「ガエリオンの好きにさせれば良いんじゃない? 凄く強いんだし……」


 もはや諦めたとばかりに助手はライバルを見送る姿勢を見せておりますぞ。


「お姉ちゃんは村でしっかりとお勉強をすると良いなの。お父さんも望んでいるなの」

「はいはい」

「お姉ちゃん、良い子だったからお父さんに会わせてあげるなの。それでガエリオンの留守を過ごしてほしいなの」

「どうせ他の世界のなんでしょ」


 助手が苛立ったようにライバルに言いますぞ。


「ちがうなの。お姉ちゃんのお父さんなのー」


 ピッとライバルは竜帝の欠片を取り出し、助手に渡しますぞ。


「これはこの世界のなおふみが手にした竜帝の欠片で、お父さんが宿っているなの。竜帝は体さえあれば記憶と人格を継承出来るなの」


 ゴクリと助手は欠片を見て唾を飲み込みました。


「最初の世界でこっちの竜帝をしていた弟に宿らせるか考えたけど、面倒そうな人格になっていたから別々が良いと思うなの。卵は後で市場で購入して宿らせればお父さん復活なの」

「ラフ」


 お義父さんに引っ付いているラフ種がライバルの「なの」の発音と同じ声音で鳴いておりますぞ。

 真似っこですな。


「ちなみにお姉ちゃん、お父さんの方針はお姉ちゃんが世に出る事……復活してもとぼけようとするなの。有無を言わさずお父さんにここで立派になったと見せつけて逃がさない様にするなの」

「う、うん……」

「じゃないと槍の勇者が知る最初の世界で実は復活してるのがばれた時の様にお姉ちゃんから逃げて雲隠れするなの。まあ、アレは弟も原因なのー」


 体を変えれば良いのに性転換って変な奴なのーとライバルは最初の世界のライバルの事を呟いております。

 確かに奴はおかしな奴でしたな。

 頑なにキュアキュアしか鳴きませんでしたぞ。


「あ、ついでにそこそこ欠片を置いて行くからなおふみも安心して良いなの」

「大丈夫なのか?」

「人間嫌いだけど分別は出来るなの。自称最弱の竜帝だから弁えているって事なの」


 そんな訳で大層なネタバレをしてライバルは出かける事になったのですぞ。

 ライバルの指定した波での戦闘後、波の亀裂へとライバルは入って行きましたな。





 そうして村に帰った所で……助手がお義父さんの所にやってきました。


「ガエリオンが行く前に私に手渡していた核石を受け取って、こんなのくれたんだけど……」


 そこにはフィーロたんや婚約者に持たせているコンパクトがありました。

 何故助手まで持っているのですかな?

 ライバル、何を企んでいるのですぞ。


「それってフィーロやメルティがもらった奴と同じだな……三人目のメルフィロはお前か。もう二期……いや、テコ入れか。追加戦士まで完備とはよくやる……というか自分の姉までネタに使うのな」

「いらないんだけど……」

「路線的にはふたりはメルフィロ☆ドラゴンハートって感じだろうか? 完全にパクリだな。となるとお前は……第三のメルフィロ・セントウィンディ! っとか名乗る感じか?」

「なんで? その名前はどこから来たの?」

「……お前の名前の一部の拝借だろ? ついでに正義っぽい感じでセントってつけた」

「ガエリオンがいたら確定しちゃう所じゃないの! 本気でやめてよ!」


 助手がお義父さんに抗議してますぞ。


「本人が居なくてよかったな。まあ性能自体は結構良いらしいぞ。本格的にラフタリアにも作ってもらうか?」

「私を巻き込むのをやめてください。そもそもナオフミ様、私をどうするつもりなんですか?」

「そりゃあ奴隷紋を使わずに任意のタイミングでラフタリアを――おっと、メタルなヒーローの、いずれ味方になる敵に操られたキャラっぽくなってしまうな」

「絶対に作らせませんからね! 作らせても破壊します! いえ、この槌に拒絶させてみせます!」


 お姉さんがお義父さんに対して抗議してますぞ。

 ですがお義父さんはワシャワシャとお姉さんを撫でていて聞いていない感じですな。

 ちなみにお姉さんは獣人の姿ですぞ。

 尚、既にお姉さんは七星武器に選ばれているので奴隷紋はありませんぞ。


「まあ、一応変身してみれば良いんじゃないか?」

「嫌よ。なんで私がフィーロちゃんやメルティさんみたいにならなきゃいけないの」

「そりゃあアイツなりに姉を心配したんじゃないか? ピンチになったら使える的な小物の手鏡として持っているだけでも良いだろうが」

「うーん……」


 助手がコンパクトを開けますぞ。

 すると……


『む……』


 なんか声が聞こえてきましたな。


『こ、ここは……!?』

「ん? なんだこのコンパクト、喋るのか? 本格的だな」

「ガエリオン……変なの仕込んでいるのね。私が捨てない様にかしら?」

『そ、そうだ。わ、我は変身コンパクトギャウ! 所有者ウィンディアよ。無意味な変身などせずとも我が見守ってるから安心しろギャウ!』

「変身コンパクトが変身しなくて良いとか言ってるぞ。斬新だな」


 しかし、ちょっと声が高めな印象ですが、この語尾……どことなく誰かを彷彿としますな。


「まあ、解読機が留守の間、約束通り立派にがんばれば親を蘇らせてくれるんだろ? やっていけば良いんじゃないか? ……ネタ枠として」

「心の底から嫌なんだけど……お父さんに会わせてくれるって言うならがんばるしかないのかしら……」

「まあ、アイツが帰ってきたら俺ががんばっていたとか口裏を合わせてやる。メルティやフィーロと話を合わせて活動して行けば良いだろう」

『人の世を学ぶ方が大事ギャウ! 戦いは勇者達に任せるギャウ!』


 喋るコンパクトが助手に注意してきますぞ。

 どうやらコヤツはライバルとは違う考えの様ですな。


「元からそのつもりなんだけど……一応私も少しは戦う術を身に付けようとしてるし……」

『ギャウ! 無駄な戦いは避けるギャウ!』

「解読機の創造物にしてはまともだな。で、コンパクト、お前の名前は?」

『……』


 途端にコンパクトは沈黙しました。


「まあコンパクトで良いか」


 お義父さんの前で名乗らないと言うのはこう言う事に成りますぞ。

 かく言う助手もライバルが紹介しなかった場合は谷子と呼んでおりましたからな。


『ジャ、ジャックと呼んで欲しいギャウ!』


盾……100% ラフ堕ち

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
攻略本や解読機など他人を道具のように呼ぶ尚文の言動が酷すぎる点だけがちょっとな一
[一言] ワイルド尚文EDおめでとうラフちゃん。
[良い点] (*'∇')/゜・:*【祝】*:・゜\('∇'*) ラ フ 堕 ち [一言] ギャウ!?なの
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ