蟲毒
盾……80%
その島とは七裂島ですな。
ライバルは島の各地に転生者共をバラバラに配置し、島の周囲に逃げられない結界を生成させてから意識を取り戻させました。
「う……うう……こ、ここはどこだ!? なんだこの首輪は!?」
と、転生者共は示し合わせたように意識を取り戻し、同様に目を覚ました転生者達と遭遇しましたな。
全員に首輪が付けられていますぞ。
一応外面の自己紹介を各々したみたいですな。
名前と各々冒険者と名乗りました。
どいつもこいつも冒険者を名乗る奴が多過ぎではないですかな?
他に無難な自己紹介は無いのですかな?
「お前が俺達をここに……じゃねえな。なんだあのフィロリアルマスクって連中はよ! お前等が命令したのか? ああ!?」
「誰だよそいつ! 俺は普通に冒険をしてたってのに闇聖勇者とか名乗る野郎共に襲われたんだよ!」
ちなみにコイツは普通に冒険という名の冒険者ギルド荒らしをしていたのが分かっております。
そのギルド支部の長を力で脅してギルドの支配を企んでいたらしいですな。
もう一人の方は孤児院か何かで洗脳教育をしていたとか何とかで罪状が山ほどあるそうですぞ。
案の定、豚は囲って、男は奴隷紋を刻まれるのでしたな。
「じゃあ一体何なんだってんだよ。俺達をこんな所に連れてきやがって……」
何食わぬ顔をした振りをしながら腹の探り合いをし始めました。
客観的にみるとバレバレな感じの嘘臭い演技をしてますぞ。
「そんでこの首輪はなんだよ! かてーな!」
「つーか俺のLvが1になってんぞ! ふざけるな! くっ……力が入らねえ」
連行した段階でLvリセットは施したらしいですな。
「で、ここは一体どこなんだよ……」
転生者が周囲を見渡しますぞ。
「森……と海岸か?」
なんてやり取りをしていると空にシルエットが浮かびますぞ。
転生者達は空を見上げましたな。
「あなた達……私が誰か分かりますよね? そうです。私です」
「あ、あなたは!」
シルエットで誰かまるでわかりませんぞ。
にも関わらず転生者達は誰かわかったかのような顔をしていますな。
「あなた達は勇者に敗れてしまいました。ですが安心して下さい。私の力で別の場所に移動させました」
「おお……」
みんな揃って安堵の表情を浮かべております。
完全に間抜け面ですなー。
「勇者達の力は強大です。打ち破るのは並大抵の事では不可能なのです……私も非常に心苦しいのですがこの中で――」
「あ、わかった! バトロワだな! 死ねぇええええええええええええ!」
話が終わるよりも前に近くに捨てられた錆びた凶器で一人の転生者が不意打ちで一人を殴りつけました。
あやつはいきなり何をしているのですかな?
「てめぇ! ガハ――!?」
いきなりの奇襲に対処は多少出来てはいたのでしょうが対応しきれずに攻撃を受けた奴の頭が砕かれて倒れ伏しました。
「はは! やりましたよ! コレで良いんですよね! 数を減らしてアイツらを倒せるチート能力を授けてくれるんでしょ!? ファーストキルだから凄い能力を授けてもらえるんですよね!」
と、血まみれの早とちり転生者が空に向かって高らかに言いました。
ファーストキルとは何ですかな?
最初に殺人を犯したら何故凄い能力がもらえると思ったのか、意味不明ですぞ。
本当に訳のわからない事ばかり言う連中ですな。
「話を聞かない者には罰を与えましょう」
「え!? ギャ――」
ピーピー! と、首輪が光って血まみれの早とちり転生者は爆散しました。
首輪に仕掛けられた爆発物が破裂したのですな。
ちなみにゼルトブルが開発した首輪だそうですぞ。
あんな物、何に使うのですかな?
強制的な命令をするなら奴隷紋で良いのではないですかな?
ゼルトブルもよくわかりませんな。
「話を聞かなかった愚かな者を罰しました」
若干ため息が混じりましたな。
ちなみに爆発音は複数回ありましたな。
物わかりが良い振りをしている転生者ですぞ。
転生者達はゴクリと愚か者と被害を受けた転生者の亡骸を見て息をのんだ様ですぞ。
「話を続けましょう。これからあなた達には最後の一人になるまで争ってもらいます。ですが、まだ戦闘の許可をしていません。まずは1時間の間に島の中にある武器を集めるのです。それと島の外に出る事は不可能です」
なんて感じで転生者達は争う事になったのですぞ。
超適当ですな。
ですが転生者達はルールがわかったとばかりに睨み合いをしてから島中に散って行き、1時間後の開始の合図に合わせて殺し合いを始めました。
一見すると力を合わせて生き残ろうと協力をしたりなど、色々とドラマっぽいのがあるにはあるのですが、どいつもこいつも腹の探り合いをしていて、まともに連携など出来ずにいる様ですぞ。
最終的に要領の良い奴が数名残り、島内で数日間過ごした後に最後の一人にまで減ったのですぞ。
「はっは! やった! 俺が最強だ! やりました!」
「ええ、あなたが最後の一人ですね。魔物や獣にすら劣る、人間とはかけ離れた、汚らわしい戦い様でしたよ」
「は! 何言ってんだ! 俺の知略で生き残ったんだ! おら! さっさと俺にすげーチートを授けろよ!」
「では授けましょうか」
ピーピーと音が鳴り響き……。
「な!? おい! 一体どういうつもりだ! ふざけ――」
ボン! っと大きく音が鳴り響きましたな。
最後の転生者も無様にあの世行きですぞ。
ちなみにこの首輪にはライバルが仕込んだ魂さえも攻撃する爆弾が仕込まれているので死んだら魂も消滅ですぞ。
「本当……監修をさせられたけど反吐が出るなの」
「なんで俺達がこんな事に付き合わされているのですかな?」
「ゼルトブル主催の闇映画なの。転生者バトルだそうなの」
タクトを使った映画で一攫千金をしたライバルにゼルトブルの闇ギルドがオファーを出し、転生者の処分を任せようとして立ち上がった企画らしいですぞ。
七裂島を再利用したバトルロワイヤルだそうですな。
世界の暗部が楽しむ娯楽になるんだとかなんとか。
もしかしたら、ここに真のクズが判明しましたな。では爆破! HAHAHA! とか言っているかもしれませんな。
勇者が捕えた転生者はこうして数々と起こるゲームで消費されて行くそうですぞ。
「幾ら殺し合いをしなきゃいけないと定められても、もっと良心を持って抗って欲しいと思うなの」
憂鬱そうにライバルが言いますな。
「規模の違いこそあれど勇者達もやらされていた事なの……けど背負っているモノの重さが大事なの。コイツ等……なおふみはこんな運命でも抗う事を模索するなの。にも関わらず、進んで殺し合いをするのはタダの下衆なの」
「ああ、赤豚本体ですな。お義父さんが他にもいるみたいな話をしていましたな」
「どこでも似た様な汚れた思考に染まる奴がいるなの。嘆かわしい事なの」
ライバルのため息が無駄に大きいですぞ。
尊大な態度でお前も同類だと言いたいですな。
おや? 最初の世界の錬とフォーブレイへと向かった時の錬と樹がお前が言うな! と指差している様な気がしますが……気のせいでしょうな!
俺はお前等の尻拭いをライバルと共にしているだけなのですぞ。
「ともかく、転生者共の炙り出しもほとんど終わったし、これでこの世界は一応、平和になったなの」
ライバルがヤレヤレと言った様子で仕事が終わったかのように言いますぞ。
こうして転生者達の処理は着実に進んで行き、世界は平和へと近づいて行ったのでしたな。
ライバルの暗躍なども色々とありましたが、大体が問題なく進んで行っております。
四霊復活なども無いので後は波が終わるまでの辛抱ですぞ。
やがてお姉さんがエクレアやリースカと共に修業から帰って来ました。
あ、エクレアはかなり地味ですな。
そろそろお姉さん達も七星武器の所持者挑戦をすると良いのではないですかな?
リースカも才能を発揮して現在ではフレオンちゃんと樹の頼れる相棒になっているそうですな。
ともかく修業をしっかり終えたのでお姉さん達が限界突破のクラスアップを行う事になりました。
変幻無双流の老婆も一緒に限界突破を施しましたな。
そこに俺とお義父さんが立ち会っておりますぞ。
ああ、フィーロたんや婚約者は既に行ったのでしたな。
「ラフー」
「よし、今度はラフタリアの番だな」
「は、はい……そうなのですが、ナオフミ様? いい加減ラフちゃんを撫で続けるのはやめて欲しいのですが……」
お義父さんは心底ラフ種を気に入ってくれている様ですな。
「気にするな」
「はぁ……」
「あらー」
お姉さんのお姉さんもお姉さんの限界突破のクラスアップの場に同伴していますな。
注意するお姉さんを微笑ましいとばかりにお姉さんのお姉さんは見ております。
「限界突破のクラスアップにはフィトリアから貰ったアホ毛で行うクラスアップみたいなのはないのか?」
「少なくともガエリオンと槍の勇者の知識範囲には無いなの」
絶対に無いとは言い切れませんからな。
「そうか。まあラフタリアの選択だしな。ラフタリア、しっかりと自分の可能性を決めるんだぞ」
「ラフー」
お義父さんがラフ種を撫でながら言いました。
若干残念そうですぞ。
しかし、今までのループでのお義父さんとはちょっと声のテンポが異なりましたな。
何か期待している様に見えますが、ハッキリとは言わない所がお義父さんなりの優しさなのでしょう。
「ラフーがんばってー! コウ応援してるー!」
コウはお姉さんにエールを送りますぞ。ちなみにコウはラフ種とも当然ながら仲良くしておりますな!
「わ、わかりました……」
「お姉さんのお勧めはお掃除能力とかかしら? ラフタリアちゃん、綺麗好きよねー」
「ラフタリアが望むならそれでもいいとは思うが……」
「きれーきれー! ラフーがお掃除がもっと上手になるの? じゃあコウの毛並み整えてくれるのも早くなる?」
「なんでそうなるんですか……」
お姉さんがため息をしながらお姉さんのお姉さんとお義父さん、コウの意見を呆れた口調で返しますぞ。
「とりあえず確認しますね」
「じゃあ儀式の始まりなの!」
そんな訳でライバルが限界突破のクラスアップの儀式を始めますぞ。
当然の事ながら四聖武器や七星武器が儀式を行うのに必須ですぞ。
ライバルは魔法を唱え始めましたな。
そうして龍刻の砂時計で儀式を行い、お姉さんに光が集まって行きましたぞ。
「ラフー!」
「あ!」
ここでラフ種がピョーン! っとお義父さんの手から離れてお姉さんの方へと飛び出して行ってしまいました。
ボーンと煙が巻き起こり、光が散って行きましたな。
「ケホケホ! な、何が……」
「ラッフー」
煙が晴れるとお姉さんが咳こんで居て、ラフ種が誇らしげに俺達の方に胸を張って立っておりました。
「あらま……なの」
思わぬ事故にライバルが驚きの声を上げておりますぞ。
「ラフー大丈夫?」
コウがお姉さんとラフ種の両方を見て言いましたぞ。
「ふむ……クラスアップは完了しているみたいだな。ラフタリア、何を選んだんだ?」
「いえ、選ぼうとしたらラフちゃんが飛びこんできてフィーロのクラスアップと同じく勝手に何かを選ばれました」
「ラフちゃん、勝手にそんな事をしたらダメじゃないか」
さすがのお義父さんもラフ種に注意をしながら持ち上げますぞ。
「ラーフ?」
ダメだった?
とばかりにラフ種は小首を傾げながらお義父さんとお姉さんを交互に見ております。
「勝手に選ぶのはな……リセットするか?」
「Lv上げはお姉さんに任せなさーい! ナオフミちゃんとお姉さんが居れば直ぐに後れを取り戻せるわよ!」
「ああ、海底の魔物はカルミラ島並みに経験値が良いんだったな……それも手だな」
お姉さんのお姉さんが得意とするLv上げですな。
俺もサブマリンモードで出来るようになりました。
ただフィロリアル様を連れて潜るのはちょっと難しいので研究が必要ですな。
錬や婚約者の様に水の魔法が使えればフィロリアル様達を安全にLv上げが出来るのですがな。
さすがに海面を槍で常時割り続けて海底での狩りをするのは手間ですからなー……プロミネンスで海を燃やして蒸発させるのも手ですな。
後日やろうとしたらお義父さんに『オープニングで海を燃やした勇者はいるが本当に燃やすな!』と怒られてしまいました。
「うーん……かと言ってコレがしたいと言うのがあった訳ではないので、ちょっと確認をしてからでしょうか……」
そう言いながらお姉さんは自身のステータスを確認している様でしたぞ。
「全体的に向上していますね。どちらかと言えば魔力が上がっていますけど……」
「あら? ラフタリアちゃん」
お姉さんがマジマジとお姉さんを見つめながら軽く触診するように確認しましたぞ。
「気のせいかしら? たぶん獣人化出来るようになってるわよ?」
盾……90% ↑↑




