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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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優雅な暮らし

 お義父さん……貴方は必ず俺の為になる事をしてくださったのですぞ。

 最初から赤豚に騙されているとも注意して下さいましたし、ループした後でも俺を導いて下さいました。

 俺の為にライバルにその身を捧げたお義父さんのお陰で俺は最悪の時をどうにか回避出来ました。

 これは揺るぎようが無い事実であり、ライバルのお陰で回避出来たとも言える出来事なのですぞ……そう、それを忘れてはいけないのですな。


 ライバルにお願いをしてまでしたお義父さん。

 俺は……お義父さんには幸せになってほしいしさせたいのですぞ。

 その為に手段等選ばないと心に刻みましたからな。


「くうう……悔しいですわ。ユキも元康様にその様に言って貰いたいのですわ……」

「ユキちゃんにも色々と助けられておりますぞ。ですから気にしなくて良いのですぞ」


 何せフィロリアル様の卵を盾にされた際、ユキちゃんは俺を想って自ら罪を被ったのですからな。

 ですから俺はユキちゃんも大切に思っていますぞ。

 なので俺はユキちゃんの頬に手を添えて親愛の情をほっぺにしてあげますぞ。


「も、元康様……」

「良い子に皆を導いて欲しいのですぞ」

「わ、わかりましたわ!」

「何とまあ……色男ですのう」


 仙人が若干赤面しつつ仰っておりますぞ。

 俺はもう現をぬかしておりませんぞ。


「仙人、もちろん俺は仙人も大切なのですぞ。フレオンちゃんの事を教えて下さりありがとうございますぞー」

「わ、わ! 槍の勇者様! ワシは良いから! この子にしてほしいのですじゃ!」


 と、ユキちゃんにやったのと同じように仙人にもしようとしたら仙人が肩に乗って鳴いていたフィロリアル様の雛を差し出しましたぞ。

 しょうがないですな。フィロリアル様! 親愛の情ですぞー。


「ピィ!」

「はぁ……はぁ……愛の狩人と仰っていたが確かにその通りじゃ……恐ろしい方じゃが、フレオンがあそこまでのびのびと育つのに必要な事だったのじゃろう」


 息を整えた仙人が何やら頷いておりますぞ。


「では行ってきますぞ」

「いってらっしゃいですわ!」

「うむ……後の事はワシたちがどうにかするのじゃ。出来るだけ早く戻ってくるのじゃぞ」

「もちろんですぞ。お義父さん達の所で合流ですぞー!」


 と手を振って俺はユキちゃんに後を任せて海岸へ行き、ドライブモード水上仕様で海を突き進んでポータルが使用できる所まで移動したのですぞ。





 さて……とりあえず当初の予定通りに寄り道ですぞ。

 俺はポータルでゼルトブルに向かい、虎兄妹の確保のために魔物商の親戚の所に行きますぞ。

 常々思いますが魔物商はなんで奴隷まで取り扱っているのですかな?


「仰る奴隷なのですが……生憎と兄の方は現在、私共が斡旋した仕事をさせている最中でございます」


 ふむ……虎男の方は留守なのですかな?


「現在は病魔に侵された妹がここで横になっておりますが……」


 虎娘の方しか今は居ないのですかな?

 まあ、やるべき事は先にやっておいた方が楽ですな。

 お義父さんは連れて来ておりませんし、パンダも居ませんぞ。

 なので俺が先に薬を飲ませましょう。


「では先に妹の方を貰いますぞ。兄妹揃ってこれで十分ですかな?」


 金袋を渡すと魔物商は揉み手をしますぞ。


「十分でございます。では兄の方は仕事が終わってからに致しましょう」


 と言う訳で俺は虎娘の下に向かい、イグドラシル薬剤を服用させました。

 もちろん虎娘は毎度同じく何やら怯えた様子を見せつつ諦めたように俺の薬を一気に飲みました。

 症状の改善はすぐに出てきますぞ。

 後は数日もあれば歩けるようになりますな。

 とにかく休める所に連れて行くのが大事ですな。


 そんな訳で虎男が帰って来るのを待たずに虎娘を背負って俺はメルロマルクの女王管理の治療院に虎娘を預けました。




 少し経ってゼルトブルの魔物商の所に行くと……魔物商とその配下の男達が何やら疲れ切った様子で迎えてくれましたな。


「何かあったのですかな?」

「これはこれは槍の勇者様……いやぁ、誠に申し訳ありません。かのハクコ種の戦闘奴隷なのですが、留守中に妹を槍の勇者様に引き渡した事を説明した直後に激昂し話を聞かずに暴れ回った挙句、購入者が槍の勇者様だと聞いて飛び出して行ってしまいまして……」


 おや?

 虎男が暴れて出て行ってしまったのですかな?


「何分既に買い手が付いた商品です故、奴隷紋を用いた拘束指示をしていたのですが、使い物にならない程に掛けるわけにはいかず……取り逃してしまいました」


 虎男が飛び出して行方知れずと……いえ、奴隷紋が残っているなら追跡は出来るはずですな。


「現在追跡中ですので今しばらくのお時間を頂いてよろしいでしょうか?」

「良いですぞ」


 虎男も使い方によっては優秀ですからな。お義父さんと寝るくらいにはきっとお義父さんに懐くのですぞ。

 パンダの部下として地味なポジションになっていたりしますが、きっと今回はそこそこ役に立つでしょう。




 ……後日ですぞ。

 俺は治療した虎娘を連れて塔で幽閉されているクズの下へと連れて行きました。

 まだ虎男は捕まえられて居ないのですぞ。


「……なんだ。キタムラ殿か……」


 おや? クズが俺の事をまだ名字呼びですぞ。

 ふむ……考えてみればこの周回ではまだクズは俺を敵と認識していないのですな。

 赤豚毒殺をしたのが俺であるのは気付かれていないと言う事ですぞ。


 そんな事はともかく……このクズはなんですかな?

 今までで見た事が無い程、老けた覇気の無い顔をしておりますぞ。

 警護の兵士曰く、日がな一日、幽閉された塔の窓から城下町や街をぼんやりと見続けているだけで日に日に老いている様に見えるとか何とかですな。


「ワシに何の用じゃ? もうワシは隠居した身……素直にここで罪を償っておれば良いのじゃ……」


 赤豚が真の黒幕だと知って絶望しているのですな!

 そうは問屋が卸さないですぞ!

 俺はお前にトドメの一撃を与えに来ましたぞ!

 残酷な現実の前に絶望するが良いですぞ! フィロリアル様達の無念をここで受けるが良いですぞ。


「今日はお前に手土産を持ってきてやりました。これですべてを察するのですな!」


 俺は虎娘の背中を押してクズにマジマジと見せつけてやりますぞ。

 クズは覇気のない表情で面倒そうに俺が連れてきた虎娘を見つめました。

 すると見る見るとクズの表情に感情が宿って行き、ガタっと椅子から立ち上がってこっちにおぼつかない足取りで近寄ってきましたぞ。

 もっと萎むかと思いましたが思いのほか元気ですぞ。


「……お兄様? いえ、お兄様じゃないですわね。ですけど……よく似た方ですわ」


 虎娘は近寄るクズの頬に手を添えて優しく撫でますぞ。


「お……おおおお……おおおおおおおうおおおお……」


 クズは撫でた虎娘を抱きしめるように縋りつき、嗚咽を漏らし始めましたぞ!

 やりましたな! 俺の勝利ですぞ!

 これでクズに悲しい現実を突きつけてやりました!

 お前の妹はハクコの男と駆け落ちをした事実ですぞ!

 これでクズはハートブレイクですぞ! もっと苦しめなのですぞー!


「あの……悲しんでいらっしゃるのですわね。その悲しみを私で癒せるのでしたら、どうか泣きたいだけ泣いて下さい……お兄様によく似た方……」


 虎娘がクズの頭を撫でまわしているのですぞ。


「では、後は任せましたぞ。この城で優雅な暮らしをしているのが役目ですからな。兄もいずれ来ますぞ」

「は、はい……槍の勇者様」


 虎娘は相変わらず俺に怯え気味ですぞ。

 最初の世界の虎娘は随分と活発でしたなー。

 まあ、優しいお義父さん曰く無理に戦わせる必要は無いのですぞ。

 元気な虎娘も懐かしくは思いますが、これが望んだ事でしょう。

 そんな訳で兵士に大事に扱うように言付けをして俺はその場を後にしました。




 さて……俺は当初の予定通りの場所に移動するのDEATH ZO。

 その場所とはどこであるかと言うと……。


「さーみんなー! これからしばらく、俺達だけでの楽しいパーティーを始めようぜー!」


 タクトが個人で買い取った島、セブン島で豚共を連れたパーティーを開催している会場ですぞ。

 ライバルにその身を捧げてしまったお義父さんと上陸した島ですな。

 苦い思い出ですぞ。

 この島の間取りは既に記憶しております。

 どこに隠し通路があるのかも把握済みですぞ。


「ブブヒー!」

「ブヒー!」

「ブッブー!」


 豚共は各々祝杯をあげながらドンチャン騒ぎのパーティーを行っております。

 ライバル曰くタクトはこの時期、計画していた豚共との長期休暇パーティーをしているとの話なのですぞ。

 波が襲来しているのに呑気なものですぞ!


 関係各所の者達が余計な仕事を持ってこない様に社会とは隔絶した場所での催しをしていたらしいですな。

 パーティー会場の垂れ幕には投擲具の七星武器入手記念! とか主治医を追放しタクトの技術が認められた記念の様な祝いの文字が無数に書かれているんだとか。

 反吐が出る祝いの名目ですぞ。


 こんな事をしていた所為で霊亀騒動の時にタクトは現れなかったのですぞ。


「ブー! ブヒブヒ!」

「そうそう! あのラトティルの顔と言ったら無かったわよねー! アシェル大っきらいだった! ざまあみろって感じ!」

「ブヒーブヒー!」

「まったく、タクトの研究と張り合うとは愚かにも程があるのじゃ。相応の報いを受けたのじゃ」

「あとーナナの奴、風邪だっけ? だらしないわよねー」

「それは言わない事じゃ。風邪を引いた事でこの宴に参加出来ないのじゃからな。哀れじゃ」

「心にも思って無い癖に」

「ふふ……」


 何やら豚共に混じってグリフィンや狐が主治医の悪口を言ってますぞ。

 ついでにタクトの妹豚の悪口も混じっておりますな。

 奴は風邪でダウンらしいですぞ。残念ですな。


 狐は俺の隠蔽状態に気付きかねないので森の方で俺は聞き耳を立てていますぞ。

 くすくすと不快な笑みを豚共はしております。

 主治医の為にここでブリューナクを一薙ぎしてやりたい衝動に駆られますが我慢ですぞ。

 フィロリアル様への診療はとても真剣である主治医を悪く言う事は許し難いですぞ。


 ちなみに主治医がフォーブレイを追われたのは戦車や戦闘機を推すタクトと意見の対立があり、同時にタクト派閥に入った白衣豚との確執があるのでしたな。

 ついでにタクトが主治医をナンパしに行って微塵も興味を見せなかったのが理由だとか。

 主治医は自らの都合の良い男しか見ない豚とは違うのですぞ?


 ともかく、奴らはブヒブヒと主治医の悪口を白衣豚と一緒にぶっ放し続けております。

 聞くに堪えない状況ですぞ。


「みんなー! 今日はよく来てくれた!」


 タクトがここでステージに立って自己主張を始めますぞ。


「キャー! タクトー!」

「ブヒー!」

「ブブヒー!」

「みんなの努力により、陰湿にも武器を隠して持っていたクズを仕留め、俺は新しい七星武器を手にする事ができた! 礼を言うぜ! 今回は俺の為に頑張ってくれたみんなへ俺からの感謝の催しを開いたから楽しもうぜ!」


 タクトが投擲具の七星武器を出して的当てをして見せますぞ。

 見た感じ……的は誰かを模した人物の様ですな。

 眉間に刺さりましたぞ。チカッと光って大当たりエフェクトが発生している様ですな。


「どうだ! 新しい武器でも俺は使いこなせるぜ!」

「ブブー!」

「さすがタクトなのじゃー!」

「素敵ー! もっとやってー!」


 豚はともかく狐とグリフィンも絶賛しておりますな。


「タクトー! 的を一刀両断して綺麗な断面図を見せてほしーい」


 ライバルが乗り移ったドラゴンがタクトを称賛しリクエストしてますぞ。


「おうよ! ハァ!」


 タクトは的に近づいて投擲具を短剣に変えて的を切り裂きましたぞ。


「キャー!」

「ブヒー!」

「ブブー!」

「さすがー! これでどんな敵が来ても怖くないわー!」


 ちなみに俺は隠蔽スキルと魔法を重ね掛けして森の方から様子を確認しておりますぞ。


「どんなもんだー! さて……じゃあ、次の催しなんだが」


 タクトはそう言いながら徐に運び込まれた木箱から小さな箱を取り出して豚共を並ばせますぞ。

 それから順番とばかりに小さな箱を一つ開けて豚の指に指輪をはめましたな。

 鼻輪ではないのですな。


「最高級の宝石を散りばめた指輪さ。受け取ってくれるよな? 最高の思い出にしようぜ!」

「ブヒィイイイイ! ブヒトー! ンッパ!」


 豚が震えながら指輪を着けた手を広げてから感激の抱擁と……うえ、キスをしていますぞ。

 その豚が離れると並んでいた豚に同じように指輪を贈って抱擁とキスをして行きますぞ。

 豚王の交尾撮影をした事がありますがやっている事の違いが今一つ俺には理解できませんな。

 とにかく、長蛇の列が形成されておりますぞ。


 おや? ライバルが憑依したタクトのドラゴンも混じっておりますぞ。

 フフフ……ライバル、お前はお義父さんの童貞を狙っているのにタクトともやるのですかな?

 これはお義父さんにチクッてやらねばいけませんな。


 おや? 脳内お義父さんが何か言ってますぞ?

 ライバルの意識は一歩下がっていて、タクトのドラゴンは乗っ取られているのを知らずに行動しているからノーカウント?

 違いますぞ。ライバルは二心があるからこんな事が出来るのですぞ!

 などと思っているとそれとなくライバルは輪から離れました。


 チィ!

 疑われない様に並んだ振りをしていただけだったのですな!

 おのれライバル! 俺が現場を押さえようとしていたのを読みとったのですぞ。

 いつか証拠を掴んでやりますからな!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 槍の思考が特殊だとはいえ、ループ事に忠誠度が高まっていくのすげーな尚文 [気になる点] クズの真なる攻略法が確立されてしまったwww [一言] 霊亀にタクトいたら詰んでたと思うよ
[良い点] 槍がなんだかんだで善行積んでる! 優雅だ…。 最初の世界のアトラさんがそっちじゃないです違いますと分け身コメントしそうですな。 [一言] 更新ありがとうございます!
[一言] 親愛の情かあ…毎回仙人さま達との様子はほっこりしますなw しかし改めてループ先の尚文も(特にライバルにその身を捧げたwシルトお義父さん)もはや「元の尚文と同じ尚文だから」という以上の特別な…
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